モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集II ミステリ編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102028056

作品紹介・あらすじ

史上初の推理小説「モルグ街の殺人」。パリで起きた残虐な母娘殺人事件を、人並みはずれた分析力で見事に解決したオーギュスト・デュパン。彼こそが後の数々の"名探偵"たちの祖である。他に、初の暗号解読小説「黄金虫」、人混みを求めて彷徨う老人を描いたアンチ・ミステリ「群衆の人」を新訳で収録。後世に多大な影響を与えた天才作家によるミステリの原点、全6編。

感想・レビュー・書評

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  • 以前読んだゴシック編でポーの闇に飲み込まれそうになったため、手に取るのを躊躇していたが、ミステリ編だから大丈夫だろう、と読んでみたら、やはり闇は深かった。

    本書は「モルグ街の殺人」「盗まれた手紙」「群衆の人」「おまえが犯人だ」「ホップフロッグ」「黄金虫」の6編を収める。

    「モルグ街の殺人」は史上初の推理小説。パリで起きた残虐な母娘殺人事件をオーギュスト・デュパンが解決する。この話は以前に少年向けの本で読んだことがあり、安心して読んでいたのだが、母娘の殺され方が残虐過ぎて(少年向けの本では省略されていた)読後のダメージが大きかった。

    「盗まれた手紙」は、「モルグ街の殺人」と同じくデュパンが活躍する話。多くの推理小説を読んできた現代人の私たちからするとよくあるトリックに思えるが、これが初めて披露された時を考えると、当時の衝撃はすごかっただろうな、と思う。

    「群衆の人」は、私が一番好きな短編。喫茶店の窓から群衆を観察していた主人公が、とある老人に惹きつけられ、彼を一昼夜尾行する話。ただこれだけの話なのに、先に何が起こるのだろうか、という期待といいようもない不安で一気に読んでしまった。

    「おまえが犯人だ」は、裕福な老人が殺された事件の謎を解く。人間の裏の顔の恐ろしさと、ゴシックに通ずる種明かしの方法の不気味さが忘れられない。

    「ホップフロッグ」は、冗談の好きな国王と彼に復讐する道化師の話。これはミステリ編ではなくゴシック編に入れてほしかった、と思うほど恐ろしく、闇が深かった。

    「黄金虫」は、奇妙な黄金虫の模様を解読し宝探しを行う男の話。史上初の暗号解読小説ということだが、髪を振り乱して宝を探す男の狂気の方が印象に強く、先への不安でこぶしを握り締めながら読んだ。

    何度も繰り返すようだが、ポーの作品は闇が深い。ポー自身の精神状態が反映されているようで、読んでいると自分まで病んでいきそうになる。しかし、単なる精神を病んだ者の頭の中を描いただけではなく、先へと読み進めずにはいられない物語性と描写力を持っているところがポーの小説のすごいところである。
    危険だとわかっていても読んでしまう、中毒性のある作家である。

    • たなか・まさん
      よく考えたら読んだことないから読んでみようかな。闇に耐えられないかな。
      よく考えたら読んだことないから読んでみようかな。闇に耐えられないかな。
      2023/01/14
  •  ポーの作品は、言わずと知れた推理小説の嚆矢。アッシャー家の崩壊や黒猫など恐怖小説の著作でも有名だが、本短編集は推理小説6作から成る。
     「モルグ街の殺人」は史上初の推理小説だとされているが、本文中に“わたしがひとつの超自然現象について詳述しているだとか、伝奇小説を執筆しているのだとか思ってもらっては困る(p18)”と断ってあるのが、当時はミステリーがどういうものか分からず誤解する人も恐らくいたのだろうなと想像すると面白い。真犯人は今や有名になってしまっているけれど、意外な謎解きで、いま読んでも十分楽しめる。
     「群衆の人」は不条理な雰囲気の作品で、今回が初読。解説に曰く「アンチミステリ」だそうだが、結局どういう意味かよく分からず。言葉から推すに、いかにも怪しそうに見える人であっても、現実にはその行動に特に理由は無い、ということなのかな。大都市で、道ゆく人が互いのことを知らず、たとえ気になっても立ち入った事情を聞くことは憚られるという距離感や匿名性が、ミステリーが生まれた原点だろうかというのは、僕の妄想だが。

  • 今までに読んだミステリー小説の中でも、圧倒的に奇怪な作品でした。
    読み終わったあとは、余韻と共に背筋がゾクッとします。

  • ポーのミステリ傑作が詰まった1冊。オススメは、やはりモルグ街の殺人と黄金虫だが、他の3編も面白い!

  • うーん、やっぱり読みにくいなぁ。
    「モルグ街の殺人」は史上初の推理小説ということもあり、驚きの犯人は知っていたけど、名探偵オーギュスト・デュパンにはちょっとテンションあがる。
    「盗まれた手紙」も、今でこそ使い古された単純で平凡なトリックだけど、デュパンの嫌味な会話がけっこうおもしろかった。

    こちらも初の暗号解読小説である「黄金虫」は文句なしにおもしろい話だと思う。
    だけどね、ほんと読みにくいんだよね…
    個人的にはゴシック編のほうが好きかな

  • The Murders in the Rue Morgue(1841年、米)、
    The Gold-Bug(1843年、米)。
    ミステリの開祖エドガー・アラン・ポーの短編集。

    ポーといえば『黒猫』『アッシャー家の崩壊』などの不条理で不気味な怪奇小説も有名だが、『モルグ街の殺人』『黄金虫』などの推理小説では、別人のようにロジカルで理知的な側面をみせてくれる。なかでも『モルグ街の殺人』は史上初の推理小説として有名である。あまりに頭が良すぎて変人の域に達している名探偵、語り手となる探偵の友人、ペダンティックな世界観など、ミステリのお約束である「型」の殆どが、この時点で既に完成しているのが興味深い。

    これらの作品の発表から約半世紀後、コナン・ドイルによる「シャーロック・ホームズ」シリーズがブレイクし、推理小説というジャンルが確立される。しかし、ホームズシリーズの第1作『緋色の研究』と比較しても、『モルグ街の殺人』の構成力や切れ味の良さは際立って高い。また、『黄金虫』に出てくる暗号解読法は、ドイルの『踊る人形』などに継承されて有名になり、いまやミステリの世界では初歩的な手法となっている。ひとつひとつは小品ながら、後世への影響力が大きい作品群であり、ミステリマニアを自認する人には必読の古典といえる。

  • 硝子の塔の殺人を読み終わった時に、元々ホームズやポアロといった古典海外ミステリ好きを自負しているが、最古のミステリは読んでいないことに気づき本作を読み始めた。
    ネタバレはミステリにおいて禁忌であるので、最古といえどそこは守らせていただく。
    短編集なので、一つ一つはすぐに読めてしまう。
    この本の顔である、モルグ街の殺人について触れるとすると、残虐な殺人の犯人が余りに意外過ぎて「嘘やろ??」と声が出てしまった。
    また、黄金虫についてはホームズシリーズの踊る人形を先に読んでいたので、黄金虫が起源になっていたのか!と驚かされた。
    今日に至るまで、後世に多大な影響を与え、推理小説を確立したポーに最大の敬意を込めて当評価をつけさせて頂きたい。

  • 世界初の探偵小説は楽しかった。江戸川乱歩ばかりでポーの存在すら知らなかった私だが、真犯人の以外さが何年たってもなお新鮮で胸が踊ったのは作者のチカラそのもので驚嘆。色せずびっくり。黄金虫も暗号ということでかなり頭を使ったが良い作品でした

  • 「盗まれた手紙」はラカンをやるのにあらすじを知ってしまっていたが、それでも面白く読めた。
    「モルグ街の殺人」もいろんな前知識があるとさすがに犯人がわかってしまうが、それでも死体がなかなか陰惨な状況であるのに驚いたり、これが探偵小説のはじまりかぁという感慨があったりで、たのしめた。

  • この書におさめられている、「モルグ街の殺人」は
    私が小1の時にクラスの学級文庫(おそらく先生の私物)で最初に読んだ本。私のミステリ好きの原点かもしれない。
    だから犯人はオランウータンって子供心に衝撃だったし、たぶん子供向きの本だったからマイルドだろうけどなかなかの惨劇。

    改めて読んでみたけどデュパンの論理的思考は古臭くないし、新鮮だった。

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