精神分析入門(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (547ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102038055

感想・レビュー・書評

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  • 表面には出てこない「本当の欲求」を知る方法。
    精神分析学の創始者フロイトが第一次世界大戦中に
    ウィーン大学で行った講義内容をまとめたもの。

    フロイトの精神分析論には、次の3つの基本的な要素がある。
    1.人間の心には、無意識的な心の働きがある。
    2.抵抗と抑圧が大きな影響を及ぼす。
    3.性とエディプスコンプレックスが重要である。

    人間の心理は、表面にあらわれたことだけでは判断できない。
    その奥に潜む願望や欲求を探り出したとき、初めてその人の本当の姿が見えてくる。

  • 最後にリビドー登場。
    夢の解釈について表も裏とも解釈できるのであれば、解釈者の主観によっちゃうんじゃないかと思いつつ、曖昧な人間の夢の解釈だからそれも致し方なしなのかな。
    解釈者はあくまで補助者としてしか役割しか与えられないどいうことかな。

  • 錯誤行為、夢判断、神経症総論の前半を収録した上巻であるのが本書。それにしたって、分析によって突き止められるのは大体において性にまつわることだっていうのが、本当かなという思いとそうだそうだという頷きが半々に生じるようなことでした。100年前のものだけれど、性に対して現代的に取り組んでいて、いまもなお古びていないです。それはわいせつ性だとかタブー視とか、現在にもそのまま残っているものだし、そんななかでこれ以上進展しないところ近くまで研究した、フロイトの先鋭性があるからだと思いました。性は、生殖の妨げにならないようなバランスのとれたところでは、その分析は完成しているのかもしれないです、そう思いました。

  • 『聴講者のみなさん、私は、あなた方一人ひとりが精神分析について書物を読んだり人づてに聞いたりなさって、どれほどのことをすでに知っておられるか、それは存じません。しかし「精神分析入門」という講義題目を掲げたのですから、あなた方を、精神分析についてはなんの知識ももたず、第一歩からの手引を必要とする方々とみなすことにします』

    このような書き出しで始まる『精神分析入門 上 下』は、『精神分析入門』と『精神分析入門(続)』の2つから成ります。

    『精神分析入門』は、フロイトがウィーン大学医学部精神科の講堂で全学部からの雑多な聴講者を前にして行なった講義の講義録です。
    この講義は、1915-1916年の冬学期と1916-1917年の冬学期に行なわれました。
    当時のフロイトの年齢は60歳前後です。
    時代は第一次世界大戦の真っ最中です。

    『精神分析入門(続)』は、それから15年後の1932年に、その講義の体裁を踏襲した形で書かれたもので、実際の講義録ではありません。
    1932年は、ドイツでヒトラーが首相に就任する前年です。

    『精神分析入門』は、3つの部分から成ります。

    1つめは、「錯誤行為」です。

    言い間違い、記憶違い、書き間違い、物忘れ、思い違いなどの、日常生活で発生する些細な間違い行為を分析します。ここでは、無意識、精神力動論、意識と無意識の干渉、自由連想法、エディプスコンプレクス、去勢コンプレクス、幼児性欲など、精神分析の基礎概念を導入します。

    2つめは、「夢」です。

    顕在夢、夢の潜在思想、夢の作業、夢の検閲、夢の解釈、圧縮、移動、夢の太古的性格、退行、願望充足、象徴表現など、夢の分析を論じながら、精神分析概念のさらなる展開と詳細な説明が続きます。

    3つめは、「神経症総論」です。

    ここは精神分析理論の本丸です。

    固着、退行、症状の意味、治療の公式、抵抗、抑圧、前意識、サディズム、マゾヒズム、性的倒錯、幼児の多形倒錯、幼児の性探求、リビドー、性的発展段階論、口唇期、肛門期、男根期、性器期、去勢不安、ペニス羨望、昇華、神経症病因論、症状形成のメカニズム、快感原則、現実原則、疾病利得、不安、自体愛、ナルシズム、感情転移・・・
    などなど、精神分析の重要概念が、次々と出てきます。


    『精神分析入門(続)』は、大きく分けて2つの部分に分かれます。

    1つめは、「自我心理学」についてです。

    『精神分析入門』では、深層心理学としての精神分析に力点が置かれていましたが、続編の方では、自我心理学としての精神分析に力点が置かれます。

    自我、超自我、エス、意識、前意識、無意識などの、心の構造論。
    生の欲動、死の欲動、反復強迫、サディズムとマゾヒズムなどの、心の欲動論。
    不安、恐怖症、躁鬱病、妄想などの、自我心理学的観点からの分析。

    2つめは、他の分野との関係や世界観についてです。

    テレパシー、女性論、教育、科学、宗教など、周辺領域と精神分析との関係を論じます。


    『精神分析入門 上 下』は、フロイト自身による精神分析理論の概説であり、入門と銘打っているものの、決して易しい本ではありません。神経症論などは、相当に難しいです。しかしそれでも、精神分析に多少なりとも本気で関心のある人にとっては、読んで損のない本だと思います。

    なによりもフロイト自身による、雑多な現象からの概念の切り出し、各概念の関連付けの仕方、その概念の操作、論理の組み立て方をトレースして、天才の思考過程を直接学ぶことができます。

    また、自己保存本能と種族保存本能の関係、個体発生と系統発生の関係など、精神分析の根底に横たわっている生物進化論的発想を、直接知ることができます。

  • なんとなく難しいイメージがあったのだけれど、
    タイトルに「入門」と書いてある通り、
    大学での講義をもとにしてあるのでわりかし読みやすい。

    「錯誤行為」
    まず気付くことは、
    フロイトは非常に科学的な人間であるということ。

    反証例をことあるごとに提示し、
    それをひとつひとつ検証していくのは、
    ある側面においてはくどくもあるのだけれど、
    科学者としては正しい姿勢なのだろうと思う。

    有名な「無意識」「欲動」というワードは、
    本書の冒頭ですでに登場している。

    精神分析には一般解はない、
    ということを肝に命じておかなければなぁ。


    「夢」
    夢は眠りを妨げる、
    潜在思想(無意識)の活動を和らげている、
    という解釈は新鮮。

    人生の1/4~1/3を占める、
    眠っている時間について熟考することは、
    目覚めている時には決して顕在化しない、
    無意識を探るうえでの大きなヒントになるのだろう。

    わたしが何の気なしに夢の日記を綴るのも、
    こういう直感によるところが大きいのかもわからない。

    フロイトの論理的な推理は、
    プラトンの描くソクラテスを彷彿とさせる。

    対話的な語り口も似ている。
    とても面白い推理小説を読んでいるようでもある。


    「神経症総論」
    夢の分析は神経症の分析にまで広げられる。

    「外傷(トラウマ)」「抑圧」「抵抗」といった、
    概念の説明はこの部分になる。

    幼児期の記憶がほとんどないのは、
    こういった無意識的な操作が行われているから、
    というのはとても面白い指摘。

    ほとんどの原因が
    「リビドー(性の欲動)」に帰せられるのは、
    少々納得しがたいところではあるけれど。

  • フロイトは日本語で読むな、という精神分析の先生の言い分が最もだと思った本。訳が悪いのか、すごく退屈に思えてしまう。心理学を少し勉強した今なら、少しは違う風に読めるのかな・・・?

  • ほーんと思うとこもあったが、なんか、適当なこと言ってないか?みたいな気分になる

  • 言い間違いとは如何なる場合においてもその人の無意識の本心を表しているという事らしいが、本の中で示されている例がたまたま何れもそのような事例であると言うだけのような気もする、反例の検証がどの程度されているのか不明。それに、本心と言うのがどのような条件下で成り立つものなのかも具体的に検証してあげないと間違えた人達が可哀想。
    フロイトも触れているように、抽象化すれば、どのような言葉であっても本心という定義に該当し得るのではないか。例えば、馬車でどこかへ向かう女性にドイツ語でお供しますと言うはずのところを卑猥な言い間違いをしてしまった事例について、その個別の女性に対して卑猥な気持ちを抱いていた訳でなくても、たまたま前日の夜にそのような仲間内での恋愛話の中で聞き齧った卑猥な話題が印象に残って居ただけでも該当し得るのでは、等。

    なお、フロイトの分析はあくまで感情なり夢を見る本人の無意識がどのように影響するかという話で、外部要因については想定しておらず、一切分析していない模様。

    とは言え、精神分析の重要古典であることは間違いないので、ちゃんと記憶に留めておきたい。

  • 夢判断とかぶる部分が多く、やや飽きた

  • 自我とは自分の意識のことであり、意識は理性でコントールできる。自分の行動は自分の意識で理性的に決めている。デカルト

    意識された部分(理性や合理性など)は表層的なものに過ぎない。自我の意識の活動にのぼらず、自覚されていない心の奥底がある。無意識。潜在意識。無意識の内容は夢などに現れ、起きているときは意識の底に沈んでいる。▼幼い子供にあるのは本能的な欲動だけ。成長するにつれ本能的な欲動を抑える道徳・社会規範を身に着ける。「自分」という意識(自我)が生まれ、本能的な欲動と道徳・社会規範とのバランスを取れるようになる。本能的な欲動が充たされないとき、人は社会的価値の高い欲求に置き換えて昇華させる(芸術など)。▼男性が母を愛の対象とし、父親を殺そうとする願望(エディプス)。女性が父を愛の対象とし、母親を殺そうとする願望(エレクトラ)。兄弟間の敵対感情(カイン)。人を救済することで自分の存在意義を得ようとしたり、相手よりも優位に立とうとする(メサイヤ)。ジークムント・フロイトFreud『精神分析入門』1916

    西欧の錬金術の図は曼荼羅に似ている。各国に似たような模様がある。各国の神話も共通点が多い。人間ひとりひとりの無意識のさらに奥底に全人類に共通した集合的な無意識があるのかもしれない。ユング『自我と無意識』1934

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著者プロフィール

Sigmund Freud 一八五六―一九三九年。オーストリアの精神科医、精神分析の創始者。モラビア地方の小都市フライベルク(現・チェコのプシーボル)にユダヤ商人の長男として生まれる。幼いときにウィーンに移住、一八七四年ウィーン大学に入り、八一年医学の学位をとる。開業医としてヒステリー患者の治療を模索するなかで、従来の催眠術と決別する精神分析療法を確立。二十世紀思想に決定的ともいえる影響を与えた。

「2019年 『精神分析学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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