緋文字 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102040010

感想・レビュー・書評

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  • 私が高校生の時に出会い 衝撃を受けた作品
    ずっと心に残り 大学の卒業論文の研究作品に選んだ

    ホーソンは非常に難しい理解をするのに骨折れる作家だ
    その背景には アメリカンピューリタニズムの過渡期がある
    彼の内面にも その不安定さが色濃く反映されているのだ

    へスターを始め 登場人物1人1人の心の葛藤と 
    情景の描写に何気なく込められた 深い暗示
    それを理解するには ただ1度だけの読みでは到底無理であろう
    根気よく 一つ一つの文脈を理解したうえで この作品の素晴らしさに出会えるのだ

  • 3.48/424
    『胸に緋文字の烙印をつけ私生児を抱いた女の毅然とした姿――十七世紀のボストンの町に、信仰と個人の自由を追究した心理小説の名作。』(「新潮社」サイトより▽)
    https://www.shinchosha.co.jp/book/204001/

    冒頭
    『ひげ面の男の群が、どれもくすんだ色の服を着て灰色のとがった高帽子をかぶり、それにずきんをかぶった女も無帽の女もまじり、木造の大きな建物の前に集まっていた。建物の扉は樫材のどっしりした造りで、鉄の尖った大釘が一面に打ちつけてあった。』


    原書名:『The Scarlet Letter』
    著者:ナサニエル・ホーソーン ( Nathaniel Hawthorne)
    訳者:鈴木 重吉
    出版社 ‏: ‎新潮社
    文庫 ‏: ‎284ページ


    メモ:
    ・松岡正剛の千夜千冊 1474 夜
    ・英語で書かれた小説ベスト100(The Guardian)「the 100 best novels written in english」
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 現代のオースターから手を広げて、と言うかアメリカ文学の金字塔ってどんな?という好奇心で読んでみた。
    ナサニエル・ホーソーンの緋文字。ホーソンだと思っていたのでホーソーンとなると、-の分だけキー打ちが 増える。ホーソンの緋文字(ひもじ)このほうが題名の読みは、緋文字(ひもんじ)より言いやすい。
    言語に詳しくは無いけれど直訳かなと思えたり、訳したのが1957年。窓掛けはカーテンだろう、姦通小説とはいまでは不倫とか浮気とか、でも常に世間を騒がすくらいの数はいつも話題になっている。昔ならこの話のように、罪の重さで天国の門はくぐれない人も多いことになる。
    姦通といえば江戸時代は不義密通で、市中引き回しの上獄門打ち首、とか重罪だ、近松さんは心中を求めて走った。芸能記者だ、昨今は受け止め方も軽い。朝のニュースの時間に別枠の「エンタメ」あたりで興味津々で放送する。

    やはり名作の薫り高い、全て言い尽くす濃密さ、植民地時代のアメリカの様子も、新教徒が住み始め、新しい文化や政治が整い始めたたころの勢いが書きこまれている。母国イギリスの古い伝統をよりい良い物にしようとした、戒律のより厳しいところ、階級で言うなら最高位に当たる地位の教会の牧師。

    そんな背景の中で、姦通の罪で獄舎から出てきたへスター・プリン。裁判の結果3時間の見せしめで処刑台の下に立つことになった。本来なら死刑に当たる罪だが、徳が高く、皆に尊敬を一身に集めている若い牧師ディムスデイルが熱く擁護したのだ。
    彼女は胸に罪のしるしの赤い文字を刺繍した服を着て証拠の子供を抱いていた。
    彼女は周囲の蔑視の中でも縫い物の腕を生かして生きていく、その姿勢に人々はいつか彼女の罪を忘れていく。
    子供はパールといった。妖精のように可愛く自由に育っていった。
    七年後、かって母国イギリスで、行方が知れなくなっていた夫が、面変わりした姿で医者になって現れる。彼は若い牧師が健康に優れないところに取り入り、彼の病気は身体からでなく心の深いところに原因があると言う。
    そして、ついにこの牧師こそパールの父であり、へスタの姦通の相手だったことが明かされる。
    牧師の過酷な修業を自分に強いていた。
    優れた学問でえた知識や慈しみ溢れる説教は教会員を虜にしていたが、彼はそういった評判に対して、自尊心と、罪に伴う深い悔恨、常に離れない、人を欺いているという意識に蝕まれていった。
    医師は遠巻きに牧師を追い詰めていく。牧師はその高潔な人柄で疑うことなく医師を信頼し、一時は同じ部屋に住み、広い家があるとそこを借りて両翼に住んで常に行き来してきた。

    牧師の破戒の罪という意識を、ホーソンは様々な面から書いていく、歴史や人間関係や、教義や本質的な人の心のゆれについて、これが文学性が高いということかと思う。
    またそれぞれの心理描写にも打たれる。
    ストーリーとしては、この牧師の苦悶が悲惨だが、平然と潔く赤い文字を晒して生きていくへスターの姿は牧師に比べて罪を意識しないでいられるのは子供という救いと、罪のしるしを緋文字にして常に胸につけ見せてしまっていることが心の軽さにつながっている。

    牧師が集まった教会員の前で、死に際に罪を認め、へスターに看取られて息耐えるのは終盤で、話はあっさりと幕を閉じる。
    その後のパールとヘスターの生き方に触れ、医師の残酷な目的のために地獄の門に向かうところで終わる。

    ホーソンの宗教観は当時にあわせてあるにしても厳しい、牧師の苦しみは姦通を超えたところにある。
    連綿とした彼の悩みの根源が、厳しい生き方を選ぶとすればそうだろうかとおもう。
    宗教特に厳しいピューリタニズムは物語の中で、心理的には理解できなくて歴史的な事柄として読んだ。

    現代文に親しんでくれば、やはり読みにくい所も多かった。

  • 『最後に、侘しい荒涼とした小道を力なく青ざめて惨めに辿るこの哀れな巡礼にとって、自分が今罪の償いをしている辛い宿命に代わって人間的な愛情と同情が、真実の新生活がちらついて見えたことなどがそれだ。

    それから厳しく悲しい真理を言っておくなら、罪のために一度人間の魂の中についた裂け目は人間である限りは決して元通りにはならないのだ。』

    167年前の不倫小説。
    姦通罪で衣類に「A」の文字を一生縫い付けて生活するように命じられた女性とその罪の子の貧しい生活。相手である高名な牧師の罪の意識。身分を隠し復讐し続けることを誓った旦那の嫌がらせ。と、なかなかのどきどきするシチュエーションで、かなりの名作。

    『奪い愛、冬』、『あなたのことはそれほど』にも通じる猟奇的な側面があって面白い。167年前の作品なのに色褪せないもんだな。

    もちろん『緋文字』の文学的価値とゲスドラマを比べることなんて出来ないのはいわずもがなだけど。
    でも、『奪い愛』も『それほど』もドラマの中では秀逸なのもいわずもがなかな。

  • 「ガウンの胸には上等の赤い布に、金糸で手のこんだ刺繍と風変りな飾りをまわりにつけ、その上にAの文字が現れていた。とても芸術的にできたおり、又豊かな目のさめるように華麗な幻想にあふれていたので、身につけている衣服に一番よく似合う装飾品として全く効果的だった。」(p.15)

    獄舎から登場するへスターの緋文字が、あまりにそれだけきらびやかに描写されるので、許されない罪というものが、群衆たちからその人だけに、色と物語を与えるかけがえのない何か、(この言い方はやらしいけど)真珠みたいなもので、
    僕にとってはその矛盾性みたいなものが、冒頭いきなりだけど、この小説と距離を置かせた。
    牧師の罪との対比とか、悪魔みたいな医者とか、キャラクター設定に無駄がなかったのもすごいなと思ったけど、訳のせいか、テーマにしてはどことなく喜劇をみてるようなかんじがした。これはわざとなんだろうか。僕が日本人だからかな。罪をかかえて生きるひとびととか、悲劇以外のなんでもないはずなのに。でもそれが逆によかった。逆に。
    「暗い色の紋地に、赤い文字A」みたいに、この小説のミソは逆説だな、個人的には。

    ミストレス・ヒビンズが良い味出してる。個人的には。

  • 「芸は身を助く」身をもって示すへスター。

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