カルメン (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102043011

感想・レビュー・書評

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  • おおメリメ、私はあなたと相容れない!
    短編を読むたびに、内心そう叫ばずにはいられなかった。
    最初の衝撃は、テオ・ファルコネにて。
    冒頭に張られた伏線に嫌な予感はしていたけれど、もしかしてもしかするかもしれない、との祈りを無情に裏切られた。
    次の衝撃は、オーバン神父にて。
    軽い羞恥心(彼女の思い込みは、概ねの人が、一度はする類の勘違いではないでしょうか?)とともに、神父を詰らずにはいられなかった。
    最後の衝撃は、アルセーヌ・ギヨにて。
    いっそ会わせぬままでいて欲しかったのに、何という要らぬ押し付け、正義感、信仰か!この地獄に比べればそりゃあその先は天の国だろうて…!

    伝聞らしい、ということを鑑みれば、そりゃそうか、としか言えないのだけれど、現実は小説より奇なりを小説で示されたような、妙な「裏切られた感じ」に頭を抱えるしかなかった。
    「有名なカルメンの原作らしいし、教養に一読しておこう」などという軽い気持ちで手に取ってはいけなかった。
    海外小説の古い翻訳にしては、堀口大學の名訳のおかげでとても読みやすかったのだけれど、飲み込みやすかっただけに、余計にこっぴどく振られたような心地がする。
    現実は残酷だ…

    とはいえ、表題の「カルメン」は名作だったし、ずっと謎だったカルメンの魅力と死の理由が腑に落ちたので、やはり読んでよかった…読んでよかったんだよ…
    記憶にあるオペラの劇的で情熱的な印象に比べると、原作は幾分派手さに欠けるストーリー構成だったような気はするが、そこは音楽劇としての脚本の常だとして。
    カルメンは、決してただの気まぐれな、愛に生きる女ということではなく。
    ロマとしての誇り高さこそが、彼女の魅力であり、死の原因であると知ることができたのは、得難い収穫だった。
    やはり、原作こそが「カルメン」だった。

  • オペラとして有名なカルメンは、どんな内容かと気になって読了。何となく派手な恋愛模様が繰り広げられるようなイメージしか無かったが、思いの外泥沼だったので驚いた。一人の女性の為にここまで身を落とす事が出来るのには衝撃的。ある意味命をかけて愛したのだと思うと、こういうのを情熱的な恋と言うのかな、と納得出来るような気もする。
    他の短編はどれも読後感が悪いものばかりで、読んでいて気持ちの良いものでは無かった。カルメンはそこそこ面白かっただけに、少しがっかり。

  • オペラのカルメンはよく知っているが原典にも当たってみようと思って読了した次第。
    原作カルメンはかなりの無法者だ。窃盗、詐欺、殺人教唆、れっきとした犯罪者である。度々男性にちょっかいを出すが、なんと実はちゃんと夫がいる。性格はかなり野生的で粗野だ。強烈の極みである。
    これに比べたらオペラのカルメンなんてまだまだかわいいものである。よくこの原作から程よくマイルドなオペラのカルメンを作り出すことができ、またハバネラやセギディーリャのような名アリアを生み出すことができたものだと感心してしまう。自由奔放の象徴のように言われるこれらのアリアですら、原作のカルメンにはお上品すぎるように思えてしまう。ドン=ホセの堕ちていきっぷりも罪状の長さもオペラの比ではない。
    どのオペラも大体そうなのだが、文学より舞台の方が華やかに仕立てられており、文学の方が舞台より細密である。その細密さの分だけしょっぱくて遣る瀬無いのである。
    ここまで書いて、ふとカルメンとドン=ホセの最初の出会いの場面を思い出した。カルメンは軽口を叩いてアカシアの花をホセの眉間めがけて投げつける。アカシアの花。萎れても尚香りを残した花。一度嗅いだらいつまでも鼻腔に残るほど鮮烈に香り立つ花。そう、カルメン自身こそがそのようなものであり、この作品全体の鮮烈な印象なのであった。

    追記
    他の作品も全て読んだ。
    なんと表現すればいいのだろう、シニカル?ニヒリズム?アイロニー?
    こんなのばっかり書くメリメってなんて人だったんだろう。役人(だっけ?)、そうか、確かにそんな感じだ。
    でも、アルセーヌ=ギヨーのラストで「私、愛しましたわ」と、きたのには参ってしまった。愛、愛した、か。そこの瞬間にあったのは皮肉でも冷笑でもない何か本質的なものじゃないかしら。
    メリメはその一文に何を思っただろうか。

  •  いずれもやりきれれない結末を迎える話ばかり。読後の悪いものが一つあったが、あとは面白かった。

  • ドン・ホセという軍人がカルメンという故郷を持たないジプシーを愛してしまった結果、人生を転落していく物語である。これまで名前だけは知っていても読んだことがなかったが、そんなに長い物語でないことに驚いた。カルメンは教養のない、粗雑な女だが、怪しくも美しい容姿を利用して多くの男達を手玉にとってゆく。決して上品な話ではない。カルメンがどんな女なのか、想像することしか出来ないが、彼女の捉え方によってオペラや劇での演技も変わってくるのだろう。これを読んでカルメンの劇を見てみたくなった。

  • バレエを見るにあたり、短編集のうち表題作「カルメン」のみ読了。
    オペラ以上に救いようがない……。

  • これはいい

  • 「カルメン」は意外と短い話でした。恋愛がテーマの話が多くてびっくりした。

  • 悪党が多すぎて心が荒む

  • 短編集。

    6つ収録されている中でも自分は表題作でなく「アルセーヌ=ギヨ」が最も印象に残った。
    近所で身投げを試みたギヨと、彼女を更生させてまともな人生を歩ませようとする有閑貴婦人ド・ピエンヌ。さらにギヨの堕落の原因となったド・ピエンヌの幼馴染で道楽者のマックスがその中に加わることによって綺麗な三つ巴の構成となる。

    実はこの話の構成そのものがメリメの実体験だったり。

    離れることで真実の愛が生まれるのはアンドレ=ジッドの「狭き門」にも共通か。

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