海からの贈物 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (131ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102046012

感想・レビュー・書評

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  • 海辺で過ごした短い滞在のあいだに、著者がじっくりと紡ぎ出した「生活」についての考えを綴った1冊。
    年を経る中で波にもまれるようにゆるやかに変化する人間の生き方を、貝の姿に託して伝えてくれます。

    シンプルに生きること。
    自分と向き合う時間を大切にすること。
    結局人間はそれぞれが孤独なものであり、人との関係とは、孤独と孤独が寄り添うことなのだ…と考えると、ふぅっと風が吹きこむように、すっきりとしました。
    意識していなかったけれど、SNSでつながる時代に疲れていたのかも…とも気付かされました。

    やや難しく感じるところもありますが、昭和42年刊行の本書の内容が瑞々しいことに驚かされます。
    本書を読むことは自分と向かい合うこととイコールだと感じました。
    人生の折々に手に取って、本書とともに自分の生き方をかえりみたいと思います。

  • 日野原重明 著『生きることの質 』(岩波現代文庫)のなかで紹介されていた。

    不必要なものを捨て、簡易な生活を選び、それに満足している様子は『方丈記』に似ている。ただ、さすがに鴨長明ほど極端な隔離生活はあまりに非現実的。アン・リンドバーグは「私にとっての解決は、この世を捨てることにも、完全に受入れることにもなくて、その中間のどこかで釣り合いを取り、或いは、この両極端の間を往復する一つの律動を見付け」、「孤独と接触、退避と復帰の間に吊るされた振子になる」のだと語る。彼女の休暇の過ごし方は、文明社会で家族と家をもち、職業をもつ現代生活に即している。極端でなく、かといって中途半端でもなく、うまくバランスをとっている感じが伝わってくる。

    一人の時間をもつことで、枯れた精神の泉に水を漲らせる…
    定期的な孤独、内省のススメ。

  • 昭和42年に発行された書籍が、今もなお色褪せることなく現代に通ずる問題点を指摘してくれている。
    どの時代においても、女性が抱える悩みやその解決の手がかりになる思考は変わらないのかもしれない、と思った。

    そして、どんな立場に在る女性でも、他者との繋がりから一度離れ、自分ひとりで考える時間を持つ大切さを教えてくれた。

    翻訳本であること、古い書籍であることから、少し表現が難解ではある。

  • 現代女性の必読書という触れ込みだが、男性が読んでも、意識が高いパートナーとどう過ごすべきかのヒント満載。貝殻のメタファーも素晴らしい。

  • 飛行士として世界的に有名なチャールズ・リンドバーグ氏の妻で、自身も女性飛行士として活躍した女性が、女性の幸せについて考え、綴ったエッセイ。
    この本が書かれたのはもう50年以上も前だが、どんどん進む世の中の機械化や、女性の社会進出の波のなかで、一介の主婦でもある彼女が悩み、もがいていたことが伝わってくる。
    時代はちがっても共有できる部分がたくさんあり、結局のところいつの時代も、増えすぎた選択肢は人を惑わせ、悩ませるのだなと思った。

    表紙のデザインも夏らしくて美しく、読んでいると自分も、浜辺の家にエスケープしたような気分になれる本だった。

  • 死ぬ前にもう一度読みたい本。
    1人の時間の大切さ。今慌ただしく、スケジュール帳が真っ黒になることに満足している自分に、本当の人生の充実は?と問いたくなる本。

    大西洋単独横断飛行のリンドバーグの妻、アン•モロ•リンドバーグの本。
    リンドバーグ夫人と訳されるところにも男性優位の社会を感じる。
    自らも飛行機を操り、あの時代に、家庭、育児、仕事と忙しく過ごす女性の言葉は今も響く。
    海からの贈物、貝殻に人生を重ねていく、文章が美しい。

    昔の女性は今よりも1人でいられる時間が多く、自分の糧になる創造的な仕事をもっていたというのが意外。

    自分の内部に注意を向ける時間、ゆっくりものを考える時間、世界の遠心的な力に抵抗するものを求める、大切。自分にとっては読書の時間が本当に大切。

    私たちの任務、男も女も関係なく、まずは家庭を大切にし、今という時間を大切にする、全てはここからだ。

  • 優しくて穏やかな海のような一冊。
    一つ一つの貝殻をモチーフに、人生における大切なことを教えてくれる。それがスーッと心に入ってくる。

    読んだ後、自分とたくさん語り合いたくなった。孤独と友達になりたい。

    夫婦や友達関係で悩んでる人にも
    救いになる言葉がたくさんあった。

  • 偉大な夫に寄り添った女史のエッセイ
    聡明で凛とした佇まいが文体から溢れてくる
    貝殻を模した人生訓が、私たちの疲れた生活を包み込んでくれるよう…

    限定的な思考も多いが、性別を問わず許容すべき時代になり、得るものも多いと思う

  • タイトルから想像する内容とはだいぶ異なる。
    古典的な女性の生き方を世間や周囲から求められる中で、内的な創造力をいかに確保して、率直に飾らないでまっすぐ生きるか、というメッセージを、とてもストレートに書き下ろしたエッセイです。
    舞台はアメリカで、個人の考えをまとめただけのものですが、今中年以降の日本の女性にオススメです。表現がストレートなだけに、深くうなづいてしまう。

  • 内容は他の皆さんが書いていらっしゃるので割愛。

    私にとっては、穏やかな波の砂浜で長回しして撮っている映画のように情景が浮かびます。爽やかな海風、潮の香り、海鳥の鳴き声…そんな風景の中でとつとつと語られる人生の様々なシーン。

    20代の頃から、何度読んでも毎回受ける新しい感動・驚き・気づき。これこそ『愛読書』と呼ぶべきものでしょう。
    薄いので旅先への鞄にいつも忍ばせ、何度無くしてもまた手に入れたくなる。いつもそんな風にお付き合いしている本です。

  • 詩集のような本。人間の内的・精神的なことについて言及している。
    最初は文体になれなくて戸惑っていたが、読み進めていくにつれて世界観にハマってしまった。
    浜辺に落ちている中から拾ったいくつかの種類の貝がらに、人生の流れをなぞらえている。波音あるいは潮騒が聞こえてきそう。
    人間同士が繋がっていること、それを断つこと、現代社会のわずらわしさと見つめ合い方を再考する。
    「砂の上に仰向けに寝そべって空を見上げ、空の広さに私たちも拡がって行くような感じになった。星は私たちの中に流れ込んできて、私たちは星で一杯になった。」こんな体験をしたい。

  • 何度でも読み返したい本。

    本当は自分たちは満ち足りることができるのに、周りに反応して生きている。もっと自分の心や体に反応しないといけないのに。社会がそうだから仕方ないかもだけど。

    自分と向き合えてこそ、人と向き合える。自分と向き合うためには少しでも自分の時間を作り、自分の内側にある創造を大切にする。

    自然は人が忘れているいろんなことを教えてくれると思った。

  • 求めるものは静寂と平和、自由
    そうはいかなくてもわずかでも自分の暮らしにあればそれでよし

  • これはいわゆる“バイブル”ではないだろうか。
    今の世の中、今を生きる女性たちにも通ずる内容が、もう半世紀も前に書かれたものだということには非常に驚いた。

  • 晴れている日にふと思い出して読みたくなる本。
    生きていくにしたがって、要らないものを取り込み身につけてしまっているかもしれない。一つずつ外してピュアな自分でいたい。

  • 非常に優れた当事者研究の書物といったところか。過去や未来を出きるだけ排し、「いま、ここ」に集中している点が特に素晴らしい。
    「気が散る」というワードに始まり、貝を見つめ続けることで「現在」のあり方を丁寧に探っていく思考の流れは、美しい螺旋階段を見ているかのよう。
    中年以後をいかに生きるかの手引きにもなりそうだ。久々に良い本。

  • 人間関係、特に夫婦関係について考えさせてくれる本。
    当時のアメリカの女性は、私が今感じている社会とはまた違った社会を生きていたと思うけれど、女はいろんな方面の顔を持って複雑に生きているから、一人になって内面を見つめる時間を持つことや、一人の孤独な一つの世界を持って依存ではなく他者と触れ合って生きていくことが説かれている。読めば読むほど味が出る文章。

  • 1955年に書かれたものだそうだけれど、非常な慧眼。一対一の関係性における自らの在り方についての考察にとどまらず、現代社会に生きる我々の状況を喝破し、自己と世界の関係性において「今、ここ、個人」を蔑ろにしてはならないとする。これだけの広がりをもった彼女の思索自体が、まさに彼女自身の感覚や体験や生活から出発していることがよく分かる。こちらも、読みながら自分へ曇りなき眼差しを向けることになり、幾度もハッとさせられる。

  • だいぶ前の本ということもあり、昔はそんな感じだったのかな、ということしか感じなかった。現代においても女性が読むと別の感想を持つのかも。

  • 何を隠そう、大好きな小説シリーズの「フラッタ・リンツ・ライフ」の引用文だったので手にした本だ。
    読み始めるとどんどん作者の鋭い観察眼とまさに今流行りの「断捨離」のような考え方に惹き付けられていく。今から100年以上前に生まれたのに、彼女の考え方や生き方は、今でも通用するのではないかと思えたし、見習いたいとも思った。
    海辺での短い滞在で感じたことを書き記したエッセイというべきか。特に結婚後の女性の生き方やひとりの時間の勧めなどをメインに書かれている印象だった。ハッとさせられる言葉も多く、心が荒ぶる時に読みたい本だ。もし、将来、結婚できたり子供ができたりすることが億が一あったら、ぜひとも読み返してみたい。

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