変身 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102071014

感想・レビュー・書評

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  • うん! なんかむず痒い!
    この小説を一発で読んで、自分の言葉で理解している人達はすごい!僕には出来ない。

    置いてけぼり。何もかも置いてけぼり。ひとつの家族という形が「変身」を通して変化していく様が、本当にじっくり書かれていた。事実のように、淡々と書く筆致は、僕の思考をどっちかというと止めた。むしろ感情的に、このあまりにもリアルな不条理を肌で感じ、なんとも言えない気持ちになったし、こういう家族って、凄く今にも存在している気がするなってぼんやり思うくらい!
    他は、置いてけぼりだからよく分かんない!が今の感情。 でも、不条理とかってこういうものな気がする。

    そう思わせるそのリアリティが凄い。けどここから僕は一体どう受け取ろう。何を繋げて行こう。よく分からない重たい不条理を、混乱している頭を、日々の生活で少しづつ整理して行くしかない……か。

    別に小説って、何かを学ぶものでは無いけども、この軽く書かれた重たい小説からは何かを学びたいなと思っている自分がいます。ああ、混乱。


    追記、なんでこの小説をカフカは書いたんだろう。
    そう思った時、カフカはずっと自分の中の家での立ち位置について考えたのかなって思った。
    ずっと働いて、家にお金を入れて、そうやって家族に尽くしてきた自分が、急に変わり果てて、全く働くことも出来ない、扱いに困るものになってしまった時、どうなるのだろうか。そんなことを考えて、考えてこういった小説を書いたのかなって思った。

    正しいかは分からないけど、カフカの考える家族の形、残酷さ、移りみ、そういったものが、描かれていたのかもしれない。

  • 状況が急変すること。
    周りの対応が変わること。
    その中で自分の感覚も変わっていくこと。

    これって自分なのか?と思うこと。

    突然に降りかかる、だんだん歪む、じわじわと進む、その様子がリアルだと思った。

    古典と呼ばれる本を読むと、人間という生き物がいかに変わらずに人生を繰り返しているのかがよくわかる。少しでも先人の思想を知恵を願いを知りたいから、読むのだ。

  • 独特な話だ。

  • 10年ぶりに再読。
    この小説の感想は、グレーゴル・ザムザが変身したのはほんとうには何だったと思うか?に尽きるのだろうね。醜いムカデのような姿は、何のメタファーであるのか。
    そして、グレーゴルが変身の直前までみていた"なにか気がかりな夢"の詳細ついても私は想像してみたい。

    父親がグレーゴルに林檎を投げつける(あくまでもやんわりと)シーンがとても印象に残る。グレーゴルは結局、めり込んだままの林檎が致命傷となって死んでしまった。

  • 主人公グレーゴルはある日目が覚めたら、一匹の巨大な毒虫になっていた!(◎_◎;)
    甲虫のような固い背中に、すじに分かれ盛り上がったお腹…おまけに無数にうごめく足まで…
    今まで家族の為に一生懸命働いて来たのだが、だんだん家族から疎ましがられ、しまいには部屋に閉じ込められて死んでしまう
    現代社会にも確かに存在するような誰の力も及ばぬ事象を、カフカは毒虫に『変身』するという表現に置き換えたのだと思う
    厄介者になると排除しようとする身勝手な人間の一面を描いた作品なのかなと自分なりに解釈した

  • カフカの『変身』は高校の頃から知っていたが、今の今まで全く作品に触れずにいた。不条理をテーマにしたカミュと対比されることがあるが、確かに『変身』の雰囲気はカミュに近いところがある。(日本語で読んでいるので、訳者の訳し加減によるのかもしれないが)主人公のグレーゴルが変身した虫の描写はやけにリアルで正直気持ち悪いのだが、同居家族は彼を疎みつつも、追い出すことまでしないところが妙なところである。そういえばカミュの『異邦人』も『ペスト』も異常な出来事が起こっている割に、周囲の人間は割と普通に生活していたような...

    印象深かったのはグレーゴルが亡くなる場面だった。彼は生前「グレーゴル」と呼ばれていたが、亡くなった瞬間「死体」と呼ばれるようになり、彼の父も、グレーゴルが死んだとたん「父」から、「ザムザ氏」に呼び方が変わっている。ここで視点の転換があったことは明らかであるが、グレーゴルの「変身」によって注目されていたザムザ家が、彼の死によって普通の生活に戻っていく印象を受けた。(昨今のメディアや流行に似たようなものを感じた)

  • 両親と妹を支える青年が朝目覚めると虫に変身し、家族に疎まれ負担となる話。

    作者の意図は分からないが、現代の社会問題である、過労によるメンタル不調や社会に馴染めず働けなくなった人とそれを支える家族の暗喩ではないかと感じた。

  • 一番しんどいのは主人公自身なのに、周りは全く本人の心配をせず、それどころか自分の将来を嘆くだけで、やるせなさを覚えた。
    家族があまりに身勝手で、主人公が可哀想。
    主人公に意思と良心が残っているのが余計辛かった。
    いっそのこと心も虫になっていれば、少しは報われたのかもしれない。

  • 普段は外交販売員の仕事をしている男グレーゴル・ザムザは、ある朝、自分が巨大な虫に変わってしまっているのに気がつく。

    初めは、寝起き後の錯覚や職業病の様なものだと疑わなかったが、いつの間にか自分の体が虫になったことを認めるようになる。

    グレーゴルは、怠け者の父親と優しい母親、それに仲の良い妹のグレーテと共に暮らしていたため、部屋に篭るグレーゴルを心配した家族や、職場から来た支配人が何度も呼びかけた。そこでグレーゴルは未だ馴染まない虫の体を使い、自力で自室の鍵を開け、皆がその変わり果てた姿に驚愕する。

    何故虫になったのかは分からぬまま、家族に恐れられながらザムザ家の日々は過ぎてゆく。妹がグレーゴルの部屋の掃除をしたり、食事を運ぶ以外は人との関わりはほとんど無く、その声も獣のような音しか出せなくなってしまっているため、まるで虫籠で飼育されているような生活を送る。

    そんなある日、優しいが気の弱い母親が息子に会いたいと言い出す。父親は反対したが、その父親が不在の時に、母親は妹のグレーテと二人でグレーゴルの部屋の片付けをすることに。

    最初は驚かせないように隠れていたグレーゴルだったが、壁に掛かった絵を片付けさせまいと出てきてしまい、その姿を目にした母親は倒れてしまう。
    帰宅した父親は、グレーゴルに林檎を投げつけて重傷を負わせる。

    家庭は悲しみに包まれ、グレーゴルは弱々しく埃まみれの部屋で生きていたが、家族はザムザ家の一部屋を三人の下宿人に貸してしまったため、その三人の紳士から隠れるようにしてひっそりと暮らすことになる。

    ある日、妹のグレーテが紳士たちにヴァイオリンを披露するが、その音に惹かれるようにしてグレーゴルは姿を現してしまい、紳士たちはその虫の存在に怒り借りていた部屋を出ると言い出し、更には損害賠償の要求を仄めかす。
    益々立場が悪くなったグレーゴルは、衰弱した体で何とか自室に戻り、そこで息絶える。

    翌日、家族はグレーゴルの死を確認した後、三人はそれぞれの勤め先に欠勤届を書き、電車に乗って郊外に出た。そこでの会話で、しだいに生きいきとして行く娘の様子を見たザムザ夫妻は、彼らの明るい未来を予感した。





    有名な海外文学小説であるこの作品は、購入前は何となくとっつきにくいかと思っていたが、本編は108ページしかないため、気軽に読み始めることが出来た。

    そして読んでみると、ある日突然虫の姿になってしまった男という、異質だが何だか興味をそそられる内容で、自分だったらと状況を打開する方法を考えたり、虫の身体だと他にも弊害があるのでは?と想像を膨らませたりして、意外とこの物語に引き込まれていた。

    結局グレーゴルは人間に戻れずに衰弱死するが、それによりようやく肩の荷が下りた家族は、未来への希望を感じるという、グレーゴルにとっては悲しい結末。不謹慎にも感じるが、現実では障害者や高齢者を支える家族も似たような境遇なのではないかということに思い当たり、何とも言えない気持ちになった。

    しかし、物語自体は何が伝えたいのか分からず、フランツ・カフカ自身が失敗作だと言っている様に、最高傑作とは言えないのではないかと思った。また、翻訳も分かりにくいところがあり、もっと分かりやすく修正した方がいいと思った。

    解説を読むと、この「変身」という作品は様々な事を象徴しているようで、それによって多様な解釈ができる。答えを出さずに読者に委ねるのは、村上春樹作品でも感じたため、フランツ・カフカの影響を受けているのかも知れないと感じた。

  • なぜグレーゴルは虫になってしまったのか。なぜグレーゴルは自分が虫になったことを冷静に分析できていたのか。なぜ妹はある時からグレーコルを「虫」として扱うようになったのか。なぜグレーゴルは自分のことゴミのように扱う家族に対して最期まで期待を抱けたのか。なぜ家政婦の女だけはグレーゴルの虫の姿を気持ち悪いと思わなかったのか。
    虫になることは何を象徴しているのかー。

    読み終わり、いろんな謎が頭に浮かんだ。ふとした時にその意味を考えてしまうだろう

著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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