変身 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102071014

感想・レビュー・書評

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  • 「本を守ろうとする猫の話」を読んで、よし海外文学も読んでみようと思った矢先、本棚にいたのがこの本。

    グレーゴルが変身した大きな幼虫は一体何を表しているんだろう。
    最初、幼虫はグレーゴルとして扱われていた気がする。それ故に、父と母はその姿に向き合えなかったし、グレーテは部屋の掃除をしていたのかもしれない。
    グレーゴルの人間としての意識が徐々に失われていくのに比例するように、家族もだんだんグレーゴルではなくただのケダモノとして扱う決意を固めていったように感じられた。
    そして3人は、グレーゴル抜きで生きていく基盤を固めていくことになる。

    人間の対応力と適応力の物語、と考えてしまったら、あまりにグレーゴルに対して不憫だが、私は今その解釈が1番しっくりきている。

  • 実世界でも人生が急転する事ってよくある。
    血を分け合った家族が、毒虫の様な存在となったら、どの様に思うのか、家族視点で読み進めた。
    切ないけど、綺麗事だけでは済まない現実がある、、

  • 昭和53年9月30日 四十七刷 再読 140円!

    ある朝、目覚めると巨大な毒虫に変身していた青年グレゴール。驚きながらも、家族は、グレゴールと認めて、食事を与えて世話をする。
    家族は、年老いた両親と妹。彼らは、これまではグレゴールに依存して生活していた。しかし、彼が毒虫となってしまってから、部屋に閉じ込め、それぞれ自立を試み始める。そして、家族の精神の限界が近づく。
    遂に、グレゴールを失うことで、家族は希望を見出していく。

    カフカ=不条理としか思っていなかったが、不条理なのは、前触れも無く理由もなく毒虫に変身してしまった事のみで、ストーリーは条理というか必然的に思います。
    もちろん、毒虫は毒虫にあらず、家族問題は普遍的に続いています。淡々とした文章は闇深さを感じさせますね。

  • 変身した虫は何を象徴しているんだろう。正解はなく色々なものが当てはまるなと思う。
    中々奇妙だが興味深いと感じた。突然虫に変身する小説を書こうと思うのがなんだか面白いと思った。
    ある時に家族の誰かが病気などで動けなくなって意思疎通もできなくなった時に、本人も伝えられないし他の人も腫れ物扱いするようになってしまって、家族の一員として接そうとすればするほど苦しくなってしまったり、逃げ出したくなったりしてしまう感情が表れているように感じた。

  •  
     虫に変身する″怖い″話(ホラー)、という先入観で避けていた作品。
    しかし先日たまたま見たある番組で、″怖い″話とは違うことを知り手に取った。
     解説でも触れている通り、さまざまな解釈ができ、何度か読み返すと、心にじわじわと染み込む、人間の″怖さ″を味わえる。
     私は今回、突然障害を持ってしまった人物が遭遇する差別を感じたが、日を改めて読めばまた違った角度で読むだろう。

  • 虫に変身した主人公のグレーゴルに、会社を無期限に休職し始めた頃の私が重なってみえました。

    虫として移動がしやすい様に、部屋の家具を取り払おうと妹の提案があがる際や、妹のヴァイオリンの音色に気づく際、人であった頃の感情が記憶として残っていて考え方が蘇る瞬間が、少し切なかった。

    願ってもいない物体に変身してしまい、今まで懸命に協力しあって生きてきた家族に見捨てられる。
    なんて儚い物語…。

    人間存在の不条理を訴えるカフカは、
    同じ血を流す者同士であっても、自分にとって不利益になる存在に変わってしまったら、ただの獣物に過ぎなくて、関係を閉ざしてしまうということを表現したかったのかな。

    家族という言葉でまとめる人と人、そこに愛があると口では言うが中身のない言葉になる。人間不信のような、人の裏を考えて勘繰ってしまうな。
    面白いけど、ここを考えすぎると鬱々になるので気が明るい頃に読むのが望ましい◎

  • グレーゴルは家族思いの働き者でした。
    ある朝起きてみると、自分が昆虫になっていることに気付きます。
    家族は稼ぎ頭であった彼を保護しますが、役立たずで不気味な虫に対して嫌悪を抱いていきます。
    最愛の妹グレーテも自身の仕事が忙しくなるにつれ、兄への態度が変化していきます。
    引きこもりの昆虫になってしまったことで壊れてしまうほど、家族の絆は脆いものなのでしょうか。
    不思議で苦しみ溢れる一冊。

  • 自分自身の想像力が試される1冊。

    まずなぜグレーゴルは虫になったのか。グレーゴルの働いて得た稼ぎで、家族は生活していた。感謝の気持ちはあるがそれを表には表さないようになっていた。
    私は、グレーゴルの存在の重要さを改めて感じてもらうための変身だったのではないかと思った。
    もしかしたらまたいつか読み返したときには、感じ方が変わるのかもしれない。

    時間が経つにつれて、グレーゴルの周りを取り巻くひとの表し方が変わって家族から他人へ移り変わっていくのが見えた。グレーゴル自身が人間から虫に変わっていっていることを表現しているのかもしれないとも思った。

    またいろんな本を読んでからこれも読み返してみたいと思う。

  • 【きっかけ】
    古本屋で見つけ、タイトルは知っていたのと、綺麗な状態だったので手に取った一冊。

    【感じたこと】
    まずは、著者は「虫になったことでもあるのか?」というレベルの数々の表現に驚いた。
    本編については、家族を支えていたはずの主人公だが、「変身」によってすべてが変わってしまうことに、確かに虚しさは感じた。だが、彼にとっても家族にとっても、最後のそれぞれの進み方(去り方)は悪くはなかったのではないかとも思う。
    自己犠牲を払って必死に誰かのために生きてきたが、誰の心にも自分は残らないというのは現実にはあって欲しくないことである(あるとするならば、やはり自分は大事にすべき…)。

  • 主人公が虫になって慌てふためくでもなく、落ち着いた状態で、理性的に話が進んでいくのが不気味で仕方なかった。
    家族の側からしてみたら、毒虫がグレーゴルと分かっていなかったらすぐに駆除するなりしていたはずだからこそ、変身する前の記憶と親しみに基づく愛情が薄れてしまったときの虚しさが大きく感じられた。
    今まで普通に接していた人の性質が後天的に変わることで、それ以前に受けた恩や愛情が一瞬ではないにしろ次第に消えていき忘れ去られてしまうことは、環境が変わることで以前の関係を断ち切ってしまいがちな自分に関係の無い話ではないと感じた。

著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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