城 (新潮文庫)

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制作 : Franz Kafka  前田 敬作 
  • 新潮社 (1971年5月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (630ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102071021

城 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパのどこかの国。
    雪深い村にある城に測量士"K"が呼ばれる。
    村に着いたが泊まる場所がない。城から行先の連絡もない。しょうがないので酒場に泊めてもらう。突然、執事の息子に起こされ、ここにいる理由を詰め寄られる。城に確認すると、どうやら測量士が呼ばれたことは確かなことのようだ。しかし酒場では厄介者。おまけに翌朝から正体不明のふたりの男が城から派遣され助手としてつくことに。
    とにかく城に行くため村人たちから情報を聞き出し、城の役人のみが泊まる宿屋・縉紳館まで押しかける。でも誰にも会えない。しかし、なぜか宿の酒場で働く娘・フリーダと同棲することに。この娘は城の役人、労働長官クラムの愛人だったという噂。

    村長を訪ねる。測量士がよばれた経緯の不明確さと役所の書類の行き違いにより村と城との意思疎通がうまくいかず、測量士の立場はあやふやで曖昧なものであることが告げられる。村長はいう。行き場所がないなら学校の小使として雇おう。なぜかKとフリーダと助手達は小学校に住み込むことになる。Kの苦難は続く。助手はフリーダを誘惑しているように思えるし、城に行くためのコネと見込んだ使者・バルナバスは力がないことがわかる。その後も村八分にされたバルナバス家族の身の上話を聞いたり、なぜか縉紳館に呼ばれたり、と堂々巡りは続き、600ページを超える物語は終わる。


    この小説は一体なんだろう?わからないことが多過ぎる。かといってつまらないわけではない。
    そもそもKは仕事があるのか。何のために城に呼ばれたのか。そこに辿り着くために何をすればいいのか。状況を打開するためにどうすればいいのか。全てが謎で分からない。だからKは城と役人に交渉しようと悪戦苦闘する。その過程と回り道が延々と描かれる。それに村人からK含め恐ろしくみな饒舌。

    村人はそれぞれ異なる城の仕組みと村の掟を説明する。それは目に見えぬ慣習があり、明示されない細かな法と過去から積み重ねてきた規律がある。よそ者には不可解にしか映らない規則があり、この規則体系は絶対の服従を要求する。城の掟の体系といってもいい。Kはこの体系を理解しようと試みる。城と交渉し、そのため窓口を探し、手続きを踏み、力がありそうな人を説得し、測量士として召しかかえてもらうために。その過程はまるで仕事そのものがKの存在を村内で保障するだけでなく、彼自身のアイデンティティーであるかのようだ。

    Kが合理的に行動すればするほど、不合理な慣習と掟で動く城から遠ざかる。排除されるといってもいい。いくら努力しても辿り着けない。合理ゆえに排除される。カフカの文学が「不条理」といわれる所以はここにあるだろう。
    仕事という機能から排除された人間は、何を拠り所に生きていけばいいのか。筋道を立てた考えと行動が、自己の存在を脅かすのなら、あとは何を為せばいいのか。
    不条理と実存のカフカ文学は今後も読まれ続けることは間違いない。

  • 仕事を依頼されて来たはずなのに、そのために頼んでもいない助手まで付けられたのに、全然始めさせてもらえない測量士Kの物語。「変身」のザムザのように弱々しい真面目な人が苦しむ話かと思っていたら、Kはとんでもなく自信家で自分ばっかりの人で、あまり同情する気になれない。それに状況のままならなさをカフカが相当おもしろおかしく書いているので(ときどきコントみたいになる)、前半は笑いながら読んだ。

    ところが後半、村八分になった一家の話あたりからカフカ節全開で、生きるのがつくづく嫌になってくる。人間は自分だけがかわいくて自分が見たいものしか見なくて、ときにはでっち上げの愛情まで持ち出して他人をコントロールしようとする。本書は職業しか存在理由がない現代人の疎外がテーマだといわれているけれど、私生活でだって人はその機能で測られる。人にまるごと必要とされたり求められたりすることなんて本当はないんだろうな、とか、じゃあ特にやりたいことがなかったら生きてても疲れるだけだな、とか、ろくなことが思いつかない。落ち込んだ。

  • カフカ未完の長編

    ある城に測量士としてやってきたKに、その仕事は用意されておらず
    確かめようと城に問い合わせようとするも
    職業のないKを城の使者や村の人々はよそ者として扱う
    どんな行動を起こしても何も分からないし、城に近寄ることもできない

    読んでいても何も分からず、Kの行動だけがむなしく繰り返されていく
    Kの行動もいつしか目的が失われているように思えてくる
    その姿は自分の存在を失った完全な“異邦人”

    城や村の人々は何かしら職業を持っていて、
    楽しくもないが与えられた仕事をやって暮らしている
    Kは“測量士さん”と呼ばれながらも、その仕事はない

    自分の全く知らないシステムの中で、訳も分からず、ただそこに置かれている状態の人間
    カフカ作品特有の世界観
    カフカも彼の置かれた社会の中で、このような感覚を味わっていたのかなと思った。

  • カフカの悪い夢のような、迷路のような物語。

  • カフカと云えば「変身」より「城」。不気味で無慈悲な「城」は、人間の理性のことだ(と思う)。

    そういえば、トーマス・マンが序文を依頼されて「城」を読んだと自身の日記に書いている。そこから、カフカの文学が世界ではじまるのだ。これはいいエピソード。

  • 官僚機構に対する批判を主題にしているように見えますが、解説などを読むと、「人間」と「社会」の有り様や関係性を描いた作品なのだそうです。この辺りを前提としないと、登場人物たちの言動の不自然さ不合理さにいちいち気を取られることになります。つまり、純粋な物語だと考えて読み進めていると、主人公をはじめとしたキャラクターたちが、特別な脈絡もなく奇言奇行を重ねるので、それに戸惑ってしまうのです。

    『城』は、「社会」やそれを規定する「法」の在り方を表現した作品で、主人公Kは異邦人としてそれらから隔絶あるいは拒絶された人間の代表であって、本作は人間の存在・所属に関する物語なのです。

    初見でこれがすんなりと腑に落ちるかというと、私にとっては否でした。それは、私の境遇に因るのかも知れませんし、私の浅はかさに因るのかも知れません。あるいは、カフカを悩ませた個人と社会の関係性は、この現代において問題の中心を移動させてしまったからなのかも知れません。

    私には、単純なストーリーの追跡がやっとでした。だから、勝手にベラベラと何十分もしゃべり倒すこととか、どうして大人であるはずの人物が、突然に子どもか動物のような行動をとるのか? とか、話の流れが本当に急に変わったりすることとか、論理的な議論がなされているように見えるのに、その理屈を追いかけることは全然できなかったりとか、とにかく頭が「?」でいっぱいになってしまいました。

    未完であるということですから、もしかしたらまだ推敲の余地はあったのかもしれません。また新たな方向に発展しそうなところで終わってしまうところは、非常に残念です。

    もしも私が小学校か中学校で、これで読書感想文を書けと言われたら、困り果てただろうけれど、どこかに小中学生の書いた感想文があれば、ぜひ読んでみたいと思います。もしかしたら、「子ども」と「大人のつくった社会とそのルール」という関係性において、主人公Kと彼らには共鳴する部分がなくはないのかも知れません。

  • 所在が無いという事、先行きが見えないと言う事の魅力と薄汚さ。女が非常に良く喋り、良く流され、良く企み、魅力的に思えた。ギャルゲーに出来そうだなと思った。

  • 永遠にクリアできないRPGのような小説だと思う。城にはたどり着けない、たどり着けないことでさらに意識する、堂々巡り。生きづらさを感じているときに読むと、疲れてしまう。
    ナンセンスな会話、疎外感、拒絶、実態不明、アイデンテティの喪失、他者を拒む強固な仲間意識、見えないけれど突破できない壁、そんな言葉ばかり浮かんでくる。この小説は、現実社会の縮図と言ってもいいだろう。

  • 読めましたね。予想以上に。苦手意識のある小説、しかも“ド文学”感のあるこの手の本にあえて手を伸ばしてみたのですが、これは読めちゃいましたね。

    ビジネス書、新書は足し算。小説は掛け算(割り算もあるかも???)という気がする。ってそこまで小説を多読していないけれども。

    所属したり、隷属したり、存在したり、しながら私たちは生きていきますけど、そういうことにまつわる、いかんともしがたい機微のような、ムードのようなそういうものを感じ取ったりしました。

    (あと、小説の読後感をここに書く際には、あとがきを読まないことにします。引きづられてしまう。書いてから、読んでみよう。)

  • 壮大な物語というより、極上コントの連発という意味での大傑作。笑いという意味では、小説以外を含めても、これ以上のレベルには未だ誰も到達していないと言い切れる。

    物語の筋など「城に辿りつきたいがいっこうに辿りつけない」という程度でしかなく、ただひたすらに城近辺を彷徨うのみ。場面の転換も不自然な箇所が多く目につくため、小説にスムーズさや完成度を求める向きにはお勧めしない。

    だが一つ一つの場面の滑稽さは奇跡的で、特に凄いのが屁理屈会話の応酬。全員が全員、子供のような愚にもつかぬ自分勝手な理屈を押しつけあう姿に、この世に立派な大人など、実は一人もいないのだと叫びたくなる。

    例えば『ガキの使い』の笑い飯や板尾絡みの企画、さまぁ~ずのコント、伊集院光のラジオのコーナー等を好む人ならば、ここにあるより深い笑いにさらなる衝撃を受けることができるはず。純文学だからといって、構える必要はまったくない。ただ純粋に楽しんだもん勝ちなのだ。

    「泣き」以外にも感動はあり、「泣く」以外にも小説の楽しみ方はたくさんあるということを、改めて思い知らせてくれる名作。というか、昔はそれが当たり前だったわけで、最近の号泣至上主義がむしろ異常だと思ったほうがいい。

    もしこれ読んで泣ける人がいたら、嘘泣き名人として冠婚葬祭での活躍が約束されるはず。つまり泣ける作品ではないが、笑いの向こうに圧倒的絶望と、ある種の感動は存在する。

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城 (新潮文庫)の作品紹介

測量師のKは深い雪の中に横たわる村に到着するが、仕事を依頼された城の伯爵家からは何の連絡もない。村での生活が始まると、村長に翻弄されたり、正体不明の助手をつけられたり、はては宿屋の酒場で働く女性と同棲する羽目に陥る。しかし、神秘的な"城"は外来者Kに対して永遠にその門を開こうとしない…。職業が人間の唯一の存在形式となった現代人の疎外された姿を抉り出す。

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