ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.74
  • (169)
  • (182)
  • (287)
  • (24)
  • (2)
本棚登録 : 2284
感想 : 180
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102081013

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大変面白かったです。確かに唯美主義的な物語でもありましたが、別の側面から見ると、「人生の目的は自己を伸すことにある」という思想の下、悪徳の限りを尽くして徹底的に自己の快楽のみを追い求め続けるという破滅的な「自己」を背負った主人公がどのように生きていくのかを追った物語でもありました。
    その結果がいわゆる一般的な生き方をしていれば普通にはありえないような恐ろしい死であったとしても、各人が持つ交換不能の「自己」を存分に伸ばす生き方には、確かな魅力があります。しかし、それによって開示される「自己」が周囲の人々をことごとく不幸に巻き込むようなものであったとしたら? かなり面白いテーマだと思います。
    「日常茶飯の世界では、悪人が罰せられることも、善人が酬いられることもない。成功は強者に与えられ、失敗は弱者に押しつけられる」、本当にそのとおり。きっとドリアンが日常茶飯の世界の住人であったならば、自らの良心にナイフを突き立てて死んでしまうことなどなく、周囲の弱者たちに不幸を振り撒きながら生き続けたことでしょう。しかし、言うまでもなくこのドリアンは空想の世界の住人、つまり小説の登場人物です。『ウィリアム・ウィルソン』よりもさらに手厳しく、良心と共に絶命してしまうという終幕は、この悪夢のように薄気味悪く美しい物語にいかにも相応しいと思います。

  • 前半、グレイの肖像画に変化が見られるようになるまでがとにかく面白くてスルスル滑るように読んだ。その後も物語の展開するテンポが良くて失速感なく楽しめた。ヘンリー卿が喋ればいちいち興味惹かれた。逆説的ではありながらすべてが明示されるスタイルが性に合ったんだと思う。

  • 面白かったー!イギリス世紀末よいです。「一見、純粋な審美派の説の中に、意外に根深く倫理性、宗教性が喰い込んでいる場合が多いのだ。」

  • 外面に囚われ、内面を腐らせた男の物語

  • 美少年だけど名前がドリアンでドンマイだ。いつまでも若く生きられるほど贅沢なことはない。

  • "誠実に生きろ"という教訓でありながら、
    "退廃する美しさ"を破棄しないところが
    作家オスカー・ワイルドの凄いところ。

    本音と建て前は別!ってことなのかな。

  • ストーリー的には怪奇ホラーとかいう分類にでも入れるべきなのかもしれない。超自然的要素がある。耽美主義の作品とはいえ、現象自体は写実的でなかろうが根底の思想は写実主義、自然主義へと通じているものだろうなと。まあ、主人公は耽美主義者なんですけどね。そしてこの耽美主義の撒き散らす毒と行きつく地獄が描かれる。美への執着への批判か警告か。それとも美への執着に感じる作者の内省的な罪の意識が筆に乗り移ったのか。

  • 再読。デカダン文学の筆頭に挙げられる本書だけど、さほど耽美な描写はない。むしろヘンリー卿の人生哲学の蘊蓄に占められている。ドリアンはヘンリー卿に翻弄され、自我の肖像に苛まれ廃頽していく。ヘンリー卿の理想の芸術哲学の実験台か、ドリアンの壮絶な最後でさえ薄っぺらかった。彼の苦悩に実在はない、哀れなほどに。本書には逆説的なアレゴリーがふんだんにしこまれている。しかしワイルドの格調高く美しい文体は、現実的な社会性など覆い隠すほど高貴な芸術に昇華している。

  • 2014.01.06

  • 読みづれー。
    正統派文学つーか、古き時代の難解な言い回しつーか、
    哲学書かよってーくらい読みづらい。
    文体を理解しようとして、話の全体がよくわかんない状態になってもーた。

全180件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1854年アイルランド・ダブリンに生まれる。19世記末の耽美主義文学の代表的存在。詩人・小説家・劇作家として多彩な文筆活動で名声を得る。講演の名手としても知られ、社交界の花形であった。小説に『ドリアン=グレーの肖像』戯曲に『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』回想記に『獄中記』などがある。1900年没。

「2022年 『オスカー・ワイルド ショートセレクション 幸せな王子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

オスカー・ワイルドの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×