ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (660ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102085028

感想・レビュー・書評

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  • 最初は冗長に感じたが、読み進むうちに繊細な情景描写や感情表現にぐいぐいと引き込まれた。文学史上に残る傑作だと思う。翻訳も丁寧で読みやすい。

  • でたらめな父親と、気位の高い母親にふりまわされて
    シャルル・ボヴァリー氏は自分では何もできない男だった
    親の言うまま勉強して医者になり
    親の言うまま資産ある中年女を嫁にとった
    しかし患者の家で出会った若い娘と恋におち
    初めて自らの意思を持ったシャルルは
    熱愛のさなか妻が急死する幸運?にも恵まれ、これを成就させるのだった
    この第2の妻が、物語の中心人物エンマ・ボヴァリー夫人である

    シャルルは自分の意思を達成したことに満足していたが
    エンマはすぐに幻滅を味わった
    彼女をおそう退屈は、ただの退屈ではない
    娘だった時分、小説を読み過ぎた彼女にとってそれは
    自尊心を貶め、つまらない女であることを強要する暴力の日常であり
    そして彼女はその凡庸さに仕える自分を被害者と信じていた
    自分ではなにも決められないという部分で
    実はエンマもシャルルも似たものどうしだったが
    ただ曲がりなりにも巡ってきたチャンスを掴み
    自己実現を果たしたシャルルの余裕に対し
    エンマはわけもわからず焦れていた
    美しさは人並み以上だったので、不倫の相手に恵まれるが
    相手との温度差にも気づかず、真剣にのめり込んでいく始末
    悲しい人だった
    夫の凡庸さを軽蔑することで自意識を保ち
    また自分を高めようとショッピングにのめり込み、散財を重ねれば
    あとは破滅への道をまっしぐらに突き進むのみであった

    エンマのそういう有様は
    ひょっとするとあり得たかもしれない若き日のシャルルの
    人生の可能性でもあった
    その運命を分けたのは神のみわざか作者の意図か

    少なくとも語り手は、観察者の立場を逸脱しないよう配慮している

  • 『ボヴァリー夫人』

    「そろそろやばいかな」とかこの若妻は思いません。
    元祖ゴーイングマイウェイな”ボヴァリー夫人”。

    若い時の夢見がちな空想って、
    いつしか現実と向き合う時間が増えるにつれ
    にこやかに送り出せるものだと思うのですが、
    (と言うかサヨナラせざるを得ない…?)

    この妻、諦めない。
    夢想で無双。

    ナボコフは『ナボコフの文学講』の中で、
    「俗物の中の俗物」みたいな勢いで彼女を評していましたが、今で言うと

    スイーツ大好きインスタ映え命の韓流ドラマ大ファン女子って感じでしょうか。
    (悪気はないです。例えね例え。)

    もうね、ここまで貫かれると賞賛しちゃう。
    あっぱれだよあっぱれ。
    最後のほうなんてむしろちゃんとやりきってくれよって若干思ってた。

    1857年の作品が、2023年に新訳で読めてるってもうやべーことだと思うのですが、
    何でそこまで語り継がれているかって言うと、
    当時のフランス文学をガッツリ変える革命を起こしているからなんですねぇ。

    起こっている事を何もかも知っている俯瞰の第三者に語らせるという物語進行をせず(神の視点の排除)、
    話者がかわるがわる交代することにより
    それぞれの主観を際立たせ、感情移入を容易にしている。

    つまり話者が、
    誰かがこちらへ向かっているけどそれが誰かは分からないという状況なら、
    我々読者も誰が来るのかわからない。

    こういったミステリアスな仕掛けが、個々の文章や小説全体から受ける印象を形作っており、
    まさにハラハラドキドキソワソワの追体験を読者に提供してくれています。

    そして当然ストーリーとしても面白い。
    これは当時のフランスで意欲作というか、
    最早喧嘩腰作ですね。やるやんフロベール。

    うまいなこの料理ってなって、
    複雑な調理法や意外な材料を考えながら食べることもできるし、
    「とりあえずうまい」とそのものの全体の味を楽しむこともできちゃう、と盛り沢山でありました。

  • 冷静で緻密な描写に終始圧巻される。
    ストーリー自体は現代ではありふれた転落劇だが、これでもかと積み重ねられた情景描写が雄弁で士気迫ってくるものがある。
    農業共進会でのロドルフとの逢引シーンが素晴らしい。
    役者あとがきまでボリューム満点で満足度が高かった。
    シャルルは何も悪いことはしていないし一貫してかわいそうではあるけど、エンマの嫌悪する気持ちもわかってしまう。

  • どうしようもない女性の話。真っ当で愛情深い夫を退屈で凡庸だと軽蔑。夫は安定した稼ぎがあるのに、この人でなければ自分はもっと裕福な暮らしができたはず、と自惚れ。そんな女性の話でも一応の格調を保っている。文章の美しさもさることながら、女性の一途さ故に。ただ物語のような恋愛をひたすら求める様は、哀れだけども純粋である。
    高評価にしたのは、主に話の筋から。予想はできながらも終結はやはり圧巻である。それと上記にみるような、低俗さと高貴さの絶妙なバランスから。
    しかし、男性には不評かもしれないと思う。この女性は完全に恋愛脳で、メンヘラだからだ。

  • 様々な技巧の詰まった教科書のような作品。
    ストーリーも思いのほか楽しめた。

著者プロフィール

1821年生まれ。19世紀フランスを代表する小説家。主な作品に、本書のほか『ボヴァリー夫人』『聖アントワーヌの誘惑』『サラムボー』『三つの物語』『紋切型辞典』『ブヴァールとペキュシェ』など。

「2010年 『ボヴァリー夫人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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