肉体の悪魔 (新潮文庫)

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著者 : ラディゲ
制作 : 新庄 嘉章 
  • 新潮社 (1954年12月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102094020

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肉体の悪魔 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 某作家さんがオススメしていたので、ずっと気にはなっていたけれど、内容もラディゲという作家も知らず、今の今まで。もっと早くに読みたかった!という思いと、今でないと理解できなかったところが多数あるのではという思いが混在しています。
    恋愛心理をここまで冷静に書けること自体が、異様というか偉業というか。恋愛に陥っている人間の心理を描写すること自体はどこまで珍しくもないと思いますが、全編を通して感じる、どこか冷めた視線がおそろしい。
    好きだとか愛しているだとか、好きだから触れたいだとか愛しているから守りたいだとか、そういう単純な仕組みになっていない人間の心の構造をよくぞここまでという風に説明されて、正直ぞっとしました。
    不道徳だとか、そういう次元では最早ない。
    他人の不幸が蜜の味だとか、そんなシンプルなことでもない。
    意地悪だとか崇高だとか、肉欲的だとか清廉だとか、そんな言葉では到底表せない、心の移り変わりをものすごく良く捕らえています。
    久々にがつんと脳天をやってくれる本に出会えて、空恐ろしいやら幸せやら。

  • あとがき(訳者)新庄嘉章さん曰く『年上の女性との恋愛,その場合の男性のエゴイズム,そのエゴイズムの犠牲となる女性の死』のお話で『少年から青年になろうとする最も動揺定めない過渡期の魂を,冷徹な目で凝視して』るのがすんごいとのことですが,そう表現されているほどありきたりな感じではありません。
    私はこれは優等生のお話として読んだので,俗っぽい設定ではあるけどリアリティがあったしすごく共感して面白かったです。主人公とマルトが共鳴したのはお互い優等生だからだと思うんです。それは戦時中だからだとか,子どもだから女だからという押さえつけではなくて,気質としてのいい子ちゃんがお互いを引き合わせたのではないでしょうか。そんでそういう2人は当然嘘つきなわけで(優等生はえてして嘘つきだと心得る!)だから疑心暗鬼にもなるけど,自分をだますのも得意なのであっさり幸福感得られたりしてね。どのみち地に足がついてないことに幸せを感じられるのは,優等生を育んだ土壌であるおうちってやつがどーんと後ろにあるからだよね。と改めて思いました。
    マルトが自殺するのは小説っぽくて,ちょっと盛り上げすぎな感じもするけど,男寡になったジャックを観察する主人公の様子に少年ならではの傲慢さがあって好きです。
    いかんせん,17歳でこれを書いたということには驚かずにはいられませんでした。愛とはなんぞやという問いの終着点にきらきらしたものを期待してる感には青さを感じるけど,それがかわいくもあったり。ほんと,他者との違和に支えられてる自分を俯瞰してるあたりに好感がもてる小説でした。

  • 友人に熱烈に薦められて読んだ一冊

    ロマンチシズムに溺れずして利己主義に溺れる。

    16歳にしてこの倒錯した価値観が凄い、そりゃあ夭折もするわな。

    原文の華麗な文体で読める人はきっと幸せだろう。

  • 自分の心理を(発見を?)何の常識にも定説にも預けずに描写しきってるの。作品の評価に年齢は関係ないけどやはり天才とは早熟の人をしていうのだと思うよ。ラスト数行でゴゴゴと音がしそうな程強くどうしようもなく流れる時流と諦念みたいなものに巻き込まれるのを感じた。いや「諦念」じゃないか…?うむ。 「自らを責める者の誠実さしか信じないというのは、あまりにも人間的な欠点である。」ドニーズもめちゃくちゃ面白かった。

  • 少年と年上の既婚者・マルトとの不倫劇。一人称で語られる主人公の心理や恋愛論に、16〜18歳でこの小説を書いた神童・ラディゲの主義主張が色濃く反映されているように思う。「幸福というものは、だいたいの利己的なものなのだ」「愛情というものは、二人の利己主義…」など、恋愛のエゴイズムを格言めいた表現により、物語を綴っていく。偏屈な青年像に、戦争の影まで感じさせ、10代が書いた作品として本当に恐ろしいまでのレベルだと感じた。

  • 登場人物を全員張り倒してやりたい・・・この話をここまで高潔な文章で静謐に綴った著者が本当にすごい。
    しかも、内容がすべて主人公の少年の回想と独白というスタイルなので「相手が本当はどう思ってたのか」とか「本当のところはどうだったのか」とかが曖昧で何度も読んで色々考えるのも面白い。本当に主人公との子どもだったのか?それとも夫?彼女は最後に読んだのは主人公の名前?それとも子供の名前?
    それにしても、妊娠後期の女性を極寒の雨の中歩き回らせる主人公を本当に張り倒したい。それ以降彼女は体調を崩し、産後の肥立ちも悪くそのすぐ後に亡くなるので主人公のせいで彼女は亡くなっているのでは。だけどそれを、彼女は望んでたのかもしれない。

  • 読みやすい小説だった。内容は特にないというか、今だと「それが?」という感じになる内容なのだが、フランスの金髪美少年の話だと思うと楽しく読める。あと著者の名前がラディゲで、ラスボスぽくてカッコ良い。

  • 35年前の夏、この本を読んだのだった。

  • 友人に勧められて読んだ本。
    恋愛の心理描写のある本を読みたくて。
    全体の8割が内観的な文章なのに、
    しつこさを感じさせないラディケの文才に驚く。
    だらだらとなりがちな物語を、若くして書いたとは信じられない、人生を達観したラディケの一文が引き締める。そういう箇所が随所にあって、いちいち唸ってしまった。
    恋愛の感情の波をよく表現していると感心しつつも、あんなに情熱的になれるなんてタフだなと若干の尊敬がわく。まあ主人公にとっては、本当の初恋なので、その情熱に納得しつつ。
    後半は、この先どうなるのかとハラハラしつつ読み進めた。
    ラストが切なくて複雑な余韻を残す。
    フランス映画的な「人生なんてそんなもの」な終わり方だった。ビターだわ。

  •  著者が16~18歳の頃に書いた小説だと聞いたけど、とてもそうとは思えないほどに冷静な筆致だと感じた。10代は恋に恋する傾向の強い年頃だと思うけど、そうして恋に溺れたり愛情ゆえにエゴイスティックな気持ちが生まれたりすることまでをもとても冷静に観察し、克明に描いているところが印象的で面白かった。そして残酷で皮肉がきいていて驚きのラストが良くも悪くも魅力的で鳥肌がたって好き。

  • 再読。大人になりきってない、エゴイズムの少年の恋愛は痛々しいものがある。
    あんな気持ち忘れてしまったけど、小心者の感情は自分にもあるな、って共感。

  • 人間の行動の裏にある心理を恥ずかしいほど詳細に描ききっ主人公とヒロイン下っっっ衆ぅ!!!!!!

  • 落ちてはならない恋に落ちてしまったことへの主人公の後悔がひしひしと伝わってくる。と同時に彼に嫌悪感を抱いてしまうのは、きっと作者の描写が優れているから。僕がこんな恋に落ちてしまったのは戦時中の不気味な雰囲気が影響しているのだ、と冒頭であるけれども、確かに作品全体に明るい雰囲気は漂っていない。薄暗い。
    いつの時代も人は背徳的な恋物語を読みたがるのでしょうか。

  • 翻訳のせいなのか、言葉がぎこちなくてイライラした。
    少年から青年になりかけている男が人妻と不倫する話。
    恋愛中の支離滅裂な心理をよく描けているが、それ以上の感想は特になし。
    今一つピンとこない本だった。

  • 切ない幕切れに思わず声が漏れた。自分勝手に暴走する主人公は若さゆえって感じなのかもしれないけど、結局は人妻に遊ばれちゃったんじゃないかとも思ってしまう。夫は全てをわかってて妻を許し受け入れていたのかなーとも思ったり。しかし、この処女作を弱冠16歳で書き上げ病で20歳という若さで夭折したという事実に驚愕。2012/176

  • 良かった。
    表現が凄く好きだった。あとがきを見ると筆者は必ずしもそこに重きを置いていないようだが、やはり十代の若さでこういう文章や話を作るというのは素晴らしいと思う。
    写真とは違うが、古い版の新潮文庫の表紙は超おしゃれだった。

  • 恋愛。青年と人妻の悲劇。(まぁ大抵は悲劇になりますよね…´д` ;)

    ラディゲは『肉体の悪魔』から、戦争が原因の"放縦と無為"によって一人の青年をある型に入れ、一人の女性を殺しているのが見てとれるだろうと語っている。戦争の影など微塵も感じさせない本だが、改めて考えると、戦争のためにジャックはマルトから離れないといけなかったのだから戦争の鋭い影が主人公とマルトを殺したんですね。

    これは恋愛悲劇です。
    恋愛した心情が驚くほど分かりやすく描かれている。なるほど、面白いッ‼コロコロ様変わりする気持ち、不安がってたのに次には喜んでる!なんて忙しいんだ。「少しは休め」、といいたくなる…けど違うんだろうなぁ。
    主人公がピュアです。←私はそう感じました。
    他に収録されてる『ドニーズ』のオチは笑えますよ(笑)

  •  面白かった。
     心の動きや振る舞いが自分勝手すぎるんだけど、その根源にある保身や怯えがつかみやすくて、あーわかるわかるこうなっちゃう、って共感しながら読めた。
     心理描写がとても細かいところまで鋭く行き渡っていて、その精密さが心地いい。

  • ぐいぐい引き込まれていき、あっという間に読み終わった。

  • ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。 (14歳の世渡り術)に出てきたのでチェック。


    肉体の?
    うーん。ちょっとイメージ違い。

    フランス文学の恋愛モノ。

  • テキサス州オースティン市のブッククロッサーに送っていただきました。

    表題作以外に「ペリカン家の人々」と「ドニーズ」を収録。「ペリカン家の人々」まで読んだところで「ドニーズ」を読むのは止めました。

    まず邦訳文が古いので、文章がスムーズでなく、わかりにくい部分が多々あった。何度か読み返して、”これはフランス語の邦訳だから、スムーズな文、あるいはこの文の芯の意味はこういう事かな”と考えなければならない事も少なくなかった。それでも読みなれてくるとなんとか読めてくるし、何よりも鋭い少年と女性の心理描写が素晴らしいので、固苦しい和訳でさえオリジナルの魅力を隠す事はできなかった様子。


    《ここから先はネタばれです!!》


    女性が19歳、主人公の少年が16歳。今の時代からすると両者とも年若いといえるけれど、少年は学校に行くはずの年で、一方の女性は結婚したばかりで、軍人である夫は戦争にでている。とすると、社会的立場が多いに違うのは明らか。短絡に考えると、年上の女性が少年を誘惑したんだろうと想像するかもしれないけれど、実際はそうでもない。そうでもないばかりでなく、この少年のなんと自分勝手で残酷なこと。そして、これが20歳未満の少年によって書かれたと知ると、もっと驚く。ここまで自分の性(少年)を自己防衛的な省略もなく、観察・理解・描写できることができるとは!

  • この少年、えらく捻くれてるなぁ・・・と感じる一方、誰しもこういう部分をどこかに持っている気もします。これが長く読まれ続けている理由でしょうか?

  • 読んだのだが、ほとんど覚えていない 禁断の愛のお話だったような気がする

  • 表題からは、もっとおどろおどろしい内容を想像していましたが、意外とあっさりとした平均的な心理小説。愛に対する節度は、中河与一の『天の夕顔』を思わせます。ただ、『肉体の悪魔』が16歳から18歳の間に書かれた作品であることは依然として驚異。ラディゲは神童扱いされることを嫌っていたようだけど。

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