夜の樹 (新潮文庫)

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制作 : Truman Capote  川本 三郎 
  • 新潮社 (1994年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095058

夜の樹 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • これは春頃に読んだよしもとばななさんの「アムリタ」に出てくる小説で(と言っても会話にちらっと出てくるだけなんだけど)そのときに気になって購入したまま積ん読になっていたのだけど、冬の夜に読むのがとてもよく似合うような小説群だったので、結果的に今になって正解。
    短編集なのだけど、カポーティといえば「ティファニーで朝食を」しかわからないという拙い知識のなかで読んで、内容の暗さにけっこうびっくりした。
    でもずっしり重いわけでもなく、読後はさらっと流せるような、不思議な読後感。
    カポーティの短編って、“シュールレアリスムの言語化”みたいな感じで言われてるらしく、それを知ったらものすごく納得。
    私はよく奇妙な夢を見たときに「ダリの絵みたいな夢」と表現するんだけど、それに近い読後感だと思う。
    ストーリーがはっきりある短編もあるけれど、奇妙な夢に包まれてるみたいな短編もいくつかあった。
    不思議な世界に浸りたい人にはおすすめです。

  • 短編集。初っ端からオー・ヘンリー賞受賞作である「ミリアム」の世界観にどっぷりはまるはまる。一人静かに暮らしている妙齢の女性が出会った自分と同じ名前の美しい少女。果たして彼女は何者なのか?「誕生日の子供たち」も捨てがたい。古き良きアメリカの田舎町にやってきた風変わりな少女。知らず知らずのうちに彼女に影響されて行く住民たち。ラストが秀逸。

  •  トルーマン・カポーティ著。孤独な都会の未亡人の元に現れる少女「ミリアム」、汽車で同席になった怪しげな男女に迫られる「夜の樹」、見た夢を男に売ることになる「夢を売る女」、都会からホテルへと流れ着き精神が閉じ籠っていく「最後の扉を閉めて」、首のない鷹の絵から湧き出す幻想と狂気「無頭の鷹」、町に来た変わった少女が轢かれて死ぬまで「誕生日の子どもたち」、無謀な賭け事に挑む少年「銀の壜」、二人のおばさんに追い詰められ立て籠る「ぼくにだって言いぶんがある」、感謝祭の客として家に来たいじめっ子の起こす事件「感謝祭のお客」の9篇の短編が収録。
     とにかくまず文章が綺麗だ。特に色や光やガラスの描写では、右に出る者がいないほどの鋭い感性を発揮している。それはともすれば不必要にきらびやかという印象を与えるが、そこに孤独感・空虚感がまぶされると嫌みが消えてちょうどいい塩梅になる。ここまでは9篇全てに当てはまるだろう。
     更にそこに主要なキャラクターとして「子供」が追加されるとより美しい文章を純粋に受け止めることができるようになる。それは第一に子供の純粋さ(感受性の高さ・精神の脆さ)にカポーティのキラキラした感性が合致していること、第二にカポーティの作品に頻繁に現れる奔放な少女のわざとらしい言動が子供においてのみリアリティーを帯びてくるからだろう(だから私には「ティファニーで朝食を」のホリーが安っぽく映ってしまうのだ)。そういう意味で「誕生日の子どもたち」と「感謝祭のお客」が最も素晴らしいと感じる。
     ただ、それらとは別に「無頭の鷹」は文句なしに好きだ。終盤、部屋で蝶が舞うシーンの幻想性は尋常ではなく、「遠い声遠い部屋」を彷彿とさせる。そしてラストの暗喩的な雨の描写が強いインパクトを残す。

  • カポーティはいわば、アバラマとニューヨークというふたつの世界に引き裂かれている。
    ー 訳者解説にある通り、カポーティの二面性がひどく浮き彫りになった短編集。
    新潮文庫的にひとつ前の草の竪琴なんかはこのふたつもうまく混ざっていた気がするけれど、、、

    私はアバラマ時代のカポーティが好きだ。
    なので「誕生日のこどもたち」「感謝祭のお客」はドツボ。
    感謝祭にいたっては電車で読んで思わず泣きそうになってしまった。
    でもそれらはニューヨークで培われたような異端であり絶対の孤独であったりするうちなる闇を内包してこそ、楽しく悲しく響いてくるあたたかさだ。
    この二面性こそがカポーティの魅力なのだろうなと思う。
    まっすぐにズレた人間を描かせたらこの人に並ぶ人はなかなかいない。
    この魅力に取り付かれたら、この作家の作品が少ないことが悲しい。
    そして、本書に顕著だったが、翻訳に恵まれていない気がするのだ。。。
    草の竪琴は読み易かった。これは翻訳が良かったのだろうと思う。
    好みの問題もおおいにあるのだろうけど。
    確認すると新潮文庫で読めるカポーティ作品はすべて訳者が違う。ほほ〜

  • カポーティの作品は孤独や闇、閉鎖的な何かが物語の影に潜めている。
    心の繊細な部分ばかりでなく、それを前にして時には愕然とし、揺さぶられ、揺れ動く登場人物たちの描写は、自分がこれまでに模索や葛藤を重ねて生きてきて、漠然としてはいるが感じたことに通じるところがある。

    ″しかし、いまこの雪の降りしきる町の部屋のなかには彼女の孤独を示す証拠がいくつもあった。彼女はその証拠をもはや無視出来なかったし、驚くほどはっきりとわかったことだが、それに抵抗も出来なかった。(「ミリアム」より)″


    身体の力が抜けて立っていられないくらい、私のなかにあるさみしさの所以が、すっかり見通され、えぐり取られたような気持ちになり震えた。

  • 「誕生日の子どもたち」



    「ミリアム」も暗い雰囲気がいいかんじですき。

  • 「ティファニーで朝食を」が有名な、カポーティの短編集。映画版はとにかく、ヘップバーンの演じるホリーの、強さとその奥のどこか儚い壊れそうな美しさが素晴らしいのですが、ホリーのキャラ設定やストーリーは原作からかなり変更されています。私は原作の方が好きなのですが、映画と比べて言いようがないくらい、切ない物語になっています。それはまた別途。

    さて、本題。この短編集はまさに、カポーティ独特の美しさを感じることのできる作品が収められていると思います。シュールで、白昼夢をみているようで、暗く沈んだ色調の閉ざされた部屋の中にいるような不気味な感覚。でも不思議と嫌悪感はなくて、読後に変な気持ち悪さが残るものではないのが、なかなか他では味わえない感覚です。この本に収められた作品、特に前半5編では、登場人物には何らかの問題が(心や身体に)あって、それがゆっくりと読み手に晒されていくところがあり、ある種のホラーとも言えるかもしれません。私的には映画監督のデビッド・リンチの撮る画に近いイメージがありますが、目に見える映像とはまた異なるようにも思い、小説という表現方法の奥深さを感じます。特に「ミリアム」の静かに寄り添う狂気、「夜の樹」の闇に引き込まれていくような感覚、「無頭の鷹」の幻想的な光景の描写など、いずれもが恐ろしくも美しく、素晴らしい。大好きな本です。

  • 翻訳されてる小説というのは、訳し方が合うかどうかっていうのが、面白いかどうかに影響するのだろうか。よくわかりませんが。
    短編集で、それぞれのお話が少し不気味だったり、不思議だったり、切なかったりしてて、どのお話も好き。読み返したくなったときには、通勤のときや喫茶店やカフェでお茶してるときに読もうかなあと思った。

  • 解説にもあるように前半と後半とで雰囲気が違います。どちらもストーリーに結末を求めてしまうとすっきりしないのは同じでしょうけど、前半は人物を覆う闇のようなものが感じられます。でも不快なものではなかったです。ミリアムなんて嫌な奴ですけど、不思議と読後感は悪くない。
    自分は前半の方が印象に残りましたね。不思議な不気味さが。物語としては「銀の壜」がよかった。どこか含みを持たせた終わり方がいいですね。安易に完結させるのは似合わないかもしれません。

  • なかなか最近、ぐっと 鷲掴みにされる小説に出逢えてなかったんだけど、これは魅かれた。文体も表現も内容も。

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夜の樹 (新潮文庫)の作品紹介

ニューヨークのマンションで、ありふれた毎日を送る未亡人は、静かに雪の降りしきる夜、と名乗る美しい少女と出会った…。ふとしたことから全てを失ってゆく都市生活者の孤独を捉えた「ミリアム」。旅行中に奇妙な夫婦と知り合った女子大生の不安を描く「夜の樹」。夢と現実のあわいに漂いながら、心の核を鮮かに抉り出す、お洒落で哀しいショート・ストーリー9編。

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