夜の樹 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095058

感想・レビュー・書評

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  • 「無頭の鷲」が良い。

  • 孤独な老女の不確かな感じ。雪のイメージとともに『ミリアム』が素晴らしい。連れ去られて消えてしまいそうな女の子『夜の樹』女の子が主人公の話が多いところがいい。

  • 短編集。 収録作品は、ミリアム/夜の樹/夢を売る女/最後の扉を閉めて/無頭の鷹/誕生日の子どもたち/銀の壜/ぼくにだって言いぶんがある/感謝祭のお客。

    カポーティを読むのは初めてだった。 この本に収められている作品の半分以上は、暗く深刻な印象を受けるもの。 人生にふとしたことで訪れる孤独や不安、それが平穏な日常を壊して行く過程。 生きてゆくのはただそれだけで切ない作業である。 一方で、「銀の壜」や「感謝祭のお客」といった、心の暖まる作品も入っている。

  • 静かな恐怖。
    すぐ側にあって姿を現さない恐怖。

  • ほんの一滴の奇妙さが混じる日常。

    誰でもこういった経験をしているはず。

    ただそれを自分のところに留めず、どこかに置いてきてしまっただけ。
    そして、ただそれを巧みに言語化し、綴ることが出来ないだけ。

    昔の思い出をゆっくりと読者の手元に返してくれる短編集。

  • 以下引用。

     冬だった。暖かさなどもうとうになくなった裸電球の列が、小さな田舎の駅の、寒々とした吹きっさらしのプラットホームを照らし出していた。夕暮れどきに雨が降った。そのために出来た氷柱が、水晶の怪物のおそろしい歯のように、駅舎の軒からぶらさがっていた。プラットホームには女の子がひとりいるだけだった。(「夜の樹」冒頭部、p.32)

     ケイはあくびをして、額を窓ガラスにつけた。指で、弾く気もなくギターを軽く弾いた。弦は、うつろな、眠気をさそうような音をたてた。――窓の外を過ぎていく、暗闇のなかに沈んだ南部の風景と同じように単調で、静かな音だった。氷のような冬の月が、白く薄い車輪のように夜空を横切って汽車の上をころがっていく。(「冬の樹」p.38)

     そのとき電話が鳴って、会話がとぎれた。彼女は黙って彼を見た。「驚いたわ」彼女はそういって、受話器を手をおさえた。「長距離よ! ロニーがどうかしたんだわ! きっと病気になったのよ……もしもし――えっ? ラニー? 違います。番号が違っているわ……」
    「待った」ウォルターが受話器を取りながらいった。「ぼくだ、ウォルターだ」
    「やあ、ウォルター」
     あのけだるい、男とも女ともいえない、遠い声が、まっすぐに彼の胃の底にまで届いた。部屋がシーソーのように揺れ、歪んでいるように見える。汗が口ひげのように上唇のところに吹き出た。「誰だ?」と彼はいった。ゆっくりといったので、言葉がつながっていないようだった。
    「知ってるくせに、ウォルター。長い付き合いじゃないか」そして沈黙。誰からかわからない電話はすでに切れていた。(「最後の扉を閉めて」p.114~115)

  •  カポーティといえば、オードリーヘプバーン主演の、「ティファニーで朝食を」、で有名な作家です。そうした都会的な雰囲気からすると、この短篇集はちょっと毛色が違います。
     この「夜の樹」の各短編の主人公のほとんどは、他人に理解されず孤独に過ごし、そのスタイル自体が正しいことを疑いません。そんな彼らの生活は、偶然の出会いから、歯車が来るっていきます。そして、途中から彼らは、その狂った歯車を望んでいるようにもみえます・・・。
     カポーティは、子供の頃両親の愛情に恵まれず、母方の実家であるアラバマに預けられて育ったとのことです。、その 時代のエピソードが収められているのが、「誕生日の子供たち」、「僕にだっても言いぶんがある」、「感謝祭のお客」あたりのようです。「ミリアム」や「最後の扉を閉めて」の雰囲気からすると、ある意味対極にあるのかもしれません。
     「感謝祭のお客」の主人公の心情『この小屋の床で、冷たく動かなった
    わたしが発見されたら、Bおじさんはどんなに嘆き悲しむか。(中略)ただこの考えにはひとつ欠点がある。わたし自身、彼らのそうした姿を見ることも聞くこともできないのだ。」というのは、誰しもこの時期思い至る特有のものでしょうか。

  • とても好き。子供の頃の怖かったもの、夜の怖さやその色を思い出した。個人的には無頭の鷹が好きです。

  • ティファニーで朝食をのイメージとだいぶ違う短編集。
    都会的な作品もいくつかあるけど、アメリカ南部をイメージさせる、古くてどこか物哀しい作品が多い。
    読んだ後、ちょっとした孤独感を伴うのが特徴。
    因みにいちばん気に入ったのは、ドッペルゲンガー的な「ミリアム」という話。

  • 「最後のを扉を閉めて」のp103であまりの本音発言にショック…こんな事言われたら数日は立ち直れないだろう。

    「誕生日の子供達」のラストでは何とも言えない虚無感が襲う。

    「感謝祭のお客様」のミス・クックは外の世界に出る事のない、世の中を知らない中年の女。しかし大事なことは知っている。自分は世の中を知る事で、成長しようとしてきた。でも、大事な事は、外の世界を知ることで得ることはできないのかもしれない。大事なことは心が知っている。

    全体的には子供の人物描写が上手い。また、自然の比喩を使った描写もうまくて俺の好みの作家。

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