- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102095089
感想・レビュー・書評
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表題作を含む4つの短編集。このうち『ティファニーで朝食を』『花盛りの家』は、天真爛漫でまっすぐ恋する女性の姿をブレることなく最後まで描ききっている。人を盲目的にさせる恋愛の要素も作用しているだろうが何より、彼女たちが本来持っている無垢で直情的な部分が滲み出ており、自分にはないその人物像に羨望や憧れのようなものを感じた。作品全体には牧歌的な雰囲気があり、陽だまりにいるような心地にさせてくれる。訳は村上春樹ということもあって非常に読みやすく、また彼の特徴的なレトリックも堪能できて、二度美味しかった。
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黒いドレスに、肘まである黒い手袋を身につけ、それとは対称的な、光輝くティアラとネックレスを身につけた少女が、一方の手で肘をつき、もう一方の手ではキセルを持ち、こっちをじっと見つめている。
映画は観たことがないのですが、オードリー・ヘップバーンの『ティファニーで朝食を』の写真は、鮮烈に印象に残っています。女性を「妖精みたいに可憐で可愛い」と思ったのは、今のところあの写真を見た瞬間だけじゃないかなあ。
そんな映画の原作を含む中・短編を、四編収録したのがこの作品集。表題作目当てで読み始めたのですが、思っていた以上に他に収録されていた短編も、味わい深い短編ばかりでした。これはうれしい誤算!
まずは表題作の『ティファニーで朝食を』
あとがきでこの本を訳した村上春樹さんも触れていますが、ヒロインのホリーの描写は、オードリー・ヘップバーンのイメージとは少し違うかもしれません。自分の場合はとにかく可愛く、魅力的な少女というイメージが植え付けられていたのですが、原作のホリーは自由気ままで、男性関係にも積極的。可愛らしく健気な妖精というよりかは、悪戯をしてクスクス笑うタイプの妖精といったイメージでしょうか。
でも、この悪戯好きの妖精のイメージも好きだなあ。個人的にホリーの魅力は彼女のおしゃべりにある気がします。自分が話し下手なせいもあるかもしれませんが、流れに棹さすかのように、次々と縦横無尽に話を展開していく女性はスゴいなあ、と圧倒されることが多々あります。油断すると置いて行かれるような話の展開は、自分は聞いていて好きなのですが、ホリーのおしゃべりにもそれに似たようなものを感じます。だから、彼女がただしゃべっているだけでも、ずっと読めるような気がするくらい好きなのです。
この人物造形をやってのけたカポーティと、そのおしゃべりの訳を見事にやってのけた村上春樹さんはとんでもないなあ、と思います。そして話が進んでいくごとに、ホリーの隠された半生が明らかになり、そこから導き出された彼女なりの哲学というものが、感じられるようになるのです。そこでまたホリーの魅力が増すわけですね。
悪戯好きの妖精と書いたけど、まだヘップバーンのイメージに引っ張られてるかなあ。陳腐な表現ですが、嵐のような人が一番正しいのかも。でも、その嵐って実際に来てる瞬間は迷惑ですが、さしたる被害もなく通り過ぎてくれれば、強風や強い雨という非日常。そして学校が休校になる、というワクワク感だけが、後に残ったりもします。ホリーの存在もはた迷惑なところはあるけど、でも一方で思い出さずにはいられない。できるならまた会ってみたい、そんなふうに思えます。
そのほかに収録されている短編は3編あるのですが、それらとこの表題作の共通点は、自由への希求と過去への郷愁のような気がします。
「花盛りの家」のヒロインのオティリーも、個人的にはホリーに負けない魅力的なヒロイン! 不幸な生い立ちながらも、ひょんなことから娼館で一番の人気者となり、その後恋に落ち、小さな集落のある村に嫁ぐことになるオティーリー。しかしそこで待っていたのは、今までと全く違う生活と新しい嫁を良く思わない姑で……
オティーリーの前向きさというか、物事の捉え方や対処の仕方が面白かったし、夢か現実か分からない不思議な展開から、ちょっとお茶目でキュートな結末まで、様々な魅力のある作品だったと思います。でも一方で、これは世の男性に対する警告だよなあ、と思わなくもなかったり(笑)
「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」は何かを企む楽しさやワクワク感を見事に表現する一方で、寂しさやもの悲しさも印象的な作品。いずれも短い短編なのですが、この短さで楽しさやワクワク感と、もの悲しさを両立させるのがスゴいと感じます。そして何よりラストの切り取り方と、そこから抱かせる読後感はもはや名人芸!
いずれの作品も回想形式であったり、あるいは過去の思い出というものが話に関わってきます。その回想や思い出というものは、いずれも状況は違えど、楽しさやキラキラ感がどこかにあったように感じます。おそらくそれは、登場人物たちの自由への思い、自由だった時代への思い、というものがあるのではないでしょうか。
有名すぎて、なかなか読んでこなかった作品ですが、やっぱり名作といわれるゆえんのある作品なんだなあ、と感じました。いずれは映画版『ディファニーで朝食を』も観たいなあ。-
地球っこさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
好きな女性のタイプ分かりますか?(笑)
先ほど地球っこさんのレビューを...地球っこさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
好きな女性のタイプ分かりますか?(笑)
先ほど地球っこさんのレビューを読ませていただきましたが、最後の関西弁の語りかけが、まさに読後のホリーに対する感情を言い表していますね。たぶん自分も、セリフにすると、これに近い言葉になると思います。
ホリーのような、おとなしいタイプの男性を振り回す女の子って、一昔前のアニメやマンガ、ラノベにはたくさんいたように思います。
ホリーのことをいい感じに思ったのは、子ども時代や思春期に触れた、そうした諸々の作品の影響や、自由と冒険を味あわせてくれたキャラクターたちを、ホリーを重ね合わせているのかもしれないなあ、と地球っこさんのコメントを拝読して思いました。
遅くなりましたが、こちらこそ本年もよろしくお願いいたします。2020/01/14 -
とし長さん、おはようございます。
昨日は騒々しくコメントしてしまい失礼しました。
一晩寝たら落ち着きました 笑
私も中高生時代に大...とし長さん、おはようございます。
昨日は騒々しくコメントしてしまい失礼しました。
一晩寝たら落ち着きました 笑
私も中高生時代に大好きだったマンガやコバルト文庫(今でいうラノベかな)のキャラクターの好きなタイプには、どこか共通点がありました(*^-^*)
今だにそういうタイプのキャラクターに思わず出会うとどきどきします。
だからこれからも読書はやめられないなぁ……たぶん♪
2020/01/15 -
地球っこさん、落ち着かれましたか? 良かったです(笑)
騒々しいとはつゆほども思いませんでしたが、こうやってコメントいただくのもある意味、...地球っこさん、落ち着かれましたか? 良かったです(笑)
騒々しいとはつゆほども思いませんでしたが、こうやってコメントいただくのもある意味、地球っこさんがホリーよろしく部屋の窓をこんこんと叩いてくれたようで、とても楽しいですよ。
地球っこさんの仰るとおり、好きなキャラクターのタイプってありますね。自分も最初に出てきた登場人物が好きなタイプのキャラだと、あっという間に物語に引き込まれます。こうした出会いも読書の醍醐味でしょうね。2020/01/15
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オードリー・ヘップバーンがホリー役を演じる映画の方は観たことがなかったが、確かに彼女は小説版のホリーのような汚さやふしだらさ、危うさが感じられる人ではない。もしも映画をリメイクする際はホリー役をマーゴット・ロビーに演じて欲しいと思うのは私だけだろうか。(マーゴット・ロビー好きの一意見)
この話は映画版『ティファニーで朝食を』でイメージされるような綺麗なストーリーではない。が、確かに名作であったと思う。イギリス文学とはなんとなく異なり、主人公やホリー、ジョー・ベルなど、様々な登場人物のその時々の“感情”が読み取りやすいものだったように感じる。
ホリー・ゴライトリー。こんなにも危うく愛らしい女性が身の回りにいたとしたら、誰しも叶わぬ恋をしてしまうだろう。女の私でさえレズに目覚めてしまいそうなので。 -
「フルーツケーキの季節がきたよ! 」
ストーブを初めてつける日は、クリスマスの準備を始める日。
与える喜びを知る彼らは、お金がなくても世界一 豊かで幸せ。
「ティファニー」はまた今度。
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ちょっと前に読んで、ブッククラブの7番目の男に献上してからしばらく経って再読の1冊。
表題作しか読んでなくて、あとに続く短編がこんなにすごいなんて聞いてない。
ティファニーはもうオードリーヘップバーンの映画のイメージが先行しちゃってるけど、主人公のホリー・ゴライトリーはもっとめちゃくちゃな女で自由奔放であけすけで揺るぎない行動規範を持ってるキャラクター。ニューヨーク、ライ麦畑でとご近所の舞台(マディソンアベニューとかレキシントンあたり)の社交界のなんやかやを売れない作家が描写してる構成がとにかくおしゃれ。初めて主人公の作品が掲載されたお祝いに飲むマンハッタン私も飲んでみたい。
最後麻薬仲介に関与してた罪で連行されるホリーが「猫に餌をあげてね!」って叫んだシーンが大好き。
でももうとにかくとてつもなく良かったのはホリーの兄フレッドが戦死したニュースを聞いて、ホリーが伏せった時の医者と主人公の会話。↓
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「彼女の病気はただの悲しみなのですか?」
「悲しみがただの病なのですか?」
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続く短編集は作家が変わったんじゃないかってくらい作風もシーンのトーンも違ってトルーマン天才やん...ってなった。
ティファニーみたいなニューヨークの話を描いたと思ったら黒人コミュニティが舞台になった話も描けちゃう。『花盛りの家』は恋の盲目性を描いてるって読みはまだ浅い気がする。
最高だった一文↓
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恋をしたときってどんな気持ちになるわけ?と彼女は尋ねた。ああ、それはね、とロシータは目をうっとりさせて言った。まるで心臓に胡椒をふりかけられたような気持ちになるんだよ。
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心臓に胡椒をふりかけられたようなって比喩がすごすぎて一回ページ閉じた。天才。
トニ・モリスンの「青い目が欲しい」を連想するような決して裕福とは世界から見た心情表現と日常描写がたまらんかった。
最後に収録されてた『クリスマスの思い出』は何で初読の時読まなかったんだろうって後悔するくらいの最高の短編。何度も読み返したくなるって言うよりは、読み終えると結構しんどいから次の日休みじゃないと仕事できなくなりそうなタイプの話。
61歳のおばあさん(年寄り老けてる感じがするのでおばあさん)と7歳の子供(少年というには幼すぎる感じはする)の2人の親友が毎年お金を貯めて11月末にフルーツケーキを作る。仲良い人に配るんじゃなくて「ルーズベルト大統領はクリスマスに私たちのケーキをテーブルに並べてくれるかしら」って思いながら作るのが、純粋混じり気ないピュアさでやられる。でも子供は成長するし、おばあさんは老いておく。お願いだからずっと2人が毎年11月末にフルーツケーキを作り続けられる世界があることを心底願っちゃう。
いい読書した〜! -
中三春、読了。
ホリー・ゴライトニーの、自由気ままな生き方がとても好きでした。続けて2周読みました -
ティファニーで朝食を。自分の中では「名前は知っているけど読んだことは無い本ランキング」ナンバーワン!w
「人生を狂わす名著50」で紹介されていたので、良い機会だと思って手にとって見た。
いやー、良かったね。映画版でオードリー・ヘップバーンが演じたホリー・ゴライトリーはとっても魅力的。元祖・ニューヨークの女!って感じ?その言動、振る舞い、暮らし方はとにかく都会的。
ホリーに入れ込んだある男性は、彼女を以下のように表す。
「今のあの子はあんたにはどんな人間に見えるかね?睡眠薬をひと瓶空けて人生を閉じ、あんたはそれを新聞記事で知ることになる――まさにそういうタイプの娘なんだ」
(続きは書評ブログでどうぞ)
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E5%85%83%E7%A5%96%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AE%E5%A5%B3_%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%81%A7%E6%9C%9D%E9%A3%9F%E3%82%92_%E3%83%88%E3%83%AB -
1940年代ニューヨークを舞台に港区女子の半生を描いた本。
社交場という名のクラブ、ホームパーティーという名の宅飲み、現在の港区に置き換えると非常に分かりやすいです。
初めて読んだ10代の頃には気付けなかったホーリーゴライトリーの魅力を発見できたので是非今一度読み返してほしい一冊です。
美しく自由奔放だが依存体質のある女性、きゅんです!