ティファニーで朝食を (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102095089

作品紹介・あらすじ

第二次大戦下のニューヨークで、居並びセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他ならぬホリーだった…。表題作ほか、端正な文体と魅力あふれる人物造形で著者の名声を不動のものにした作品集を、清新な新訳でおくる。

感想・レビュー・書評

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  • 映画版は途中で投げ出した。
    高校生の頃、自由奔放で殿方を弄ぶヒロインに嫌気がさし"Moon River"を聴かぬまま電源を切ってしまったのだ。銀幕のHolly Golightlyとはそれっきり。とっくに大人になってても良い頃合いなのに、あの頃の気持ちを中途半端に残したまま鑑賞できないと、未だにツッパっている。でもあの時もったいないことをしたとさすがに自覚はしているから今回(一方的な)和解をしようと、思い切って原作から乗り込んだ。

    この奔放さは「しなやかさ」か。(便利な言葉…) 18歳とは思えないくらいしなやかに世の中を、殿方が見上げる垣根の上を悠々と渡り歩き、時たま寂しがり屋にもなる猫ちゃん。映画と違う箇所は恐らくストーリーの一部と時代設定、彼女の見た目年齢かと思われる。彼女が愛してやまないティファニーも読者の記憶にはそこまで残らず、恐らく原作だけじゃここまで話題に上がらなかったんじゃないかな…
    それでいて村上春樹氏によるほぼ現代的な翻訳が、映画で刷り込まれたクラシカルでハイセンスな印象を多少だが取り払ってくれている。(あとがきは今まで読んできた中で一番主観的&赤裸々な書き様だった笑)

    「君くらい枠に収まらない人には会ったことがない」
    「それが私なの」

    「読み進めるうちあるある」と言うべきか、当初は気に入らなかったヒロインの、出自やそこから生まれ出た信念を知るにつれ、少しずつだが情が湧いてきた笑 特にあの電報を受け取って以降は逞しさにも磨きがかかった気がする。
    自分なんかが気にかけようが毛嫌いしようが、地表でも地底でも何食わぬ顔で生存してみせることだろう。そこが彼女にとっての「ティファニー」であればなお良しってとこか。

    言い忘れていたが、本書はカポーティの短編集で『ティファニー』の他にも3編収録されている。都会的な『ティファニー』とは真逆の風合いとも言える『クリスマスの思い出』が特に惹かれたかな。飾り気のない文体はカポーティじゃなくて『ティファニー』の主人公(作家)が筆をとっているのでは?と謎の妄想も膨らませていた。締めくくりもまた『ティファニー』とは真逆だが、その分あの心象風景がそのまま心に沁み入ったのである。

    村上氏の仰る通り、銀幕のHolly Golightlyとは全くの別人だった。しかし姿形が変わっても芯までは手を付けられていないと今なら信じていられるから、近いうちに会いに行ってみる!

  • ネタバレで隠したのではなくて、ギブアップで隠してます。

    第二次世界大戦下のニューヨーク。新人女優ホリーは、社交界でセレブや軍人らをその魅力で惑わし、生活の糧とし、自由気まま、よく言えば天真爛漫。

    彼女が語る、過去から未来。現実味がない、掴みどころがない。その浮遊感が彼女の魅力なのだろうと思うけれど。
    皆さんのレビューや、村上春樹さんの後書を読んで、なるほどって、そう読むのか。
    ギブアップ。文章を楽しめませんでした。読んでて、何について書いているのかわからなくなってしまって。翻訳は、柔らかい言葉を使って、新潮文庫曰く、清新な新訳。訳に酔ってしまったかも。

    オードリーは思い浮かばないかな。
    「痴人の愛」のナオミは思い浮かぶ。
    ナオミは帰ってきたけど、ホリーは、浮遊を続けてる。
    再読する元気がでないのです。

    • 淳水堂さん
      おびのりさん
      こんにちは。

      映画は見たことありますが、原作は未読です。

      >訳に酔ってしまったかも。
      >再読する元気がでないの...
      おびのりさん
      こんにちは。

      映画は見たことありますが、原作は未読です。

      >訳に酔ってしまったかも。
      >再読する元気がでないのです。

      なんというか、読んだ時の雰囲気がとても伝わってきました。
      おつかれさまです(^▽^;)
      2022/09/10
    • おびのりさん
      清水堂さん、コメントありがとうございます。

      清水堂さんの 翻訳物のレビューいつも感心してます。私は、ちょと苦手なのを頑張って読む感じです。...
      清水堂さん、コメントありがとうございます。

      清水堂さんの 翻訳物のレビューいつも感心してます。私は、ちょと苦手なのを頑張って読む感じです。
      ユリシーズの読破の時も感激してたんです。
      その頃読んでいた小説の作中に、ユリシーズ出てきていたので、私もいつかは読もうと思っていたのですが、先になりそうです。
      今回、苦手なのを再確認。

      又、本棚おじゃまします。^_^
      2022/09/10
  • 夜更けに僕の部屋の窓をこんこんと叩く音。酒癖の悪い男からこっそりと逃げてきたと、非常階段から部屋に足を踏み入れたホリー。部屋にいちゃもんをつける彼女に、僕は「何でも慣れちゃうものだから」と答える。(でも僕はこの部屋をそれなりに誇りに思っていたから、心中穏やかではない)そんな僕に彼女は言い放つ。
    「私は違うな。何でも慣れたりはしない。そんなのって、死んだも同然じゃない」
    最初に出会ったこの言葉によって、わたしのなかでホリーという女性像が形作られました。
    ホリーは天真爛漫でコケティッシュで、誰もが彼女に振り回されて、誰もが彼女に振り回されたくなる……男性にとっては魅力溢れる女性。でも彼女の魅力はそれだけではなくて。ホリーにはホリーの美学みたいなものがあるんだと感じました。彼女のやることなすこと世間一般からは受け入れられないことがほとんど。でも、ホリーにとってはそんな批判やバッシングは痛くも痒くもなくて。自分の信じたことを凛とやってのける気概があります。彼女だけの哲学みたいなものが一本筋を通しているんじゃないでしょうか。
    とある事情から、国外へ逃亡することになったホリーは、一緒に暮らしていた猫を町へ放ちます。
    けれども、そのすぐ後に「何かを捨てちまってから、それが自分にとってなくてはならないものだったとわかるんだ」と後悔し、更にこれから先への不安に身震いします。いつも強くて美しい彼女が僕へ見せた弱気な部分。この小さな綻びが何故だかわたしには、ホリーが可愛らしくてたまらなくなりました。それでも彼女は旅立ちます。それでこそホリー。
    読んでいるときは、ホリーに対して同じ女性という立場から、嫉妬してしまうようなジリジリとしちゃう気持ちにもなったけれど、読み終わるともう一度ホリーに会いたくなりました。そんな魅力溢れる女性です。

    「あのホリーってコ、どうしてんのかなぁ。散々迷惑かけられたし、それを悪いとは全然思ってないし、男にちやほやされてさぁ、意味分からんコやったよなぁ。でも、意外と良いコやったよね。性格もさっぱりしてるし、イヤな奴には堂々と意見言うし、おもろいコやった。元気にしてるやろうね。あのコやったら、どこでもしぶとく生きていけるやろ。そやけど、全然連絡もよこさんと、ホンマ常識ってやつがないねん。まぁあのコらしいけどな。もし顔見せにきたらみんなで飲みにでもいこー」地球っこより……って感じになりました 笑

  • ホリーは美しさとあやうさが魅力的だけど、全体のお話としては惹きつけられなかった。どうしてもオードリーヘップバーンのイメージが強く、そのイメージを上手く払拭できなかったからかもしれない。

    「花盛りの家」がお話としては一番好みでした。
    私が憧れるのは、ホリーよりオティリーだなぁ。

  • 表題作を含む4つの短編集。このうち『ティファニーで朝食を』『花盛りの家』は、天真爛漫でまっすぐ恋する女性の姿をブレることなく最後まで描ききっている。人を盲目的にさせる恋愛の要素も作用しているだろうが何より、彼女たちが本来持っている無垢で直情的な部分が滲み出ており、自分にはないその人物像に羨望や憧れのようなものを感じた。作品全体には牧歌的な雰囲気があり、陽だまりにいるような心地にさせてくれる。訳は村上春樹ということもあって非常に読みやすく、また彼の特徴的なレトリックも堪能できて、二度美味しかった。

  • 黒いドレスに、肘まである黒い手袋を身につけ、それとは対称的な、光輝くティアラとネックレスを身につけた少女が、一方の手で肘をつき、もう一方の手ではキセルを持ち、こっちをじっと見つめている。

    映画は観たことがないのですが、オードリー・ヘップバーンの『ティファニーで朝食を』の写真は、鮮烈に印象に残っています。女性を「妖精みたいに可憐で可愛い」と思ったのは、今のところあの写真を見た瞬間だけじゃないかなあ。

    そんな映画の原作を含む中・短編を、四編収録したのがこの作品集。表題作目当てで読み始めたのですが、思っていた以上に他に収録されていた短編も、味わい深い短編ばかりでした。これはうれしい誤算!

    まずは表題作の『ティファニーで朝食を』
    あとがきでこの本を訳した村上春樹さんも触れていますが、ヒロインのホリーの描写は、オードリー・ヘップバーンのイメージとは少し違うかもしれません。自分の場合はとにかく可愛く、魅力的な少女というイメージが植え付けられていたのですが、原作のホリーは自由気ままで、男性関係にも積極的。可愛らしく健気な妖精というよりかは、悪戯をしてクスクス笑うタイプの妖精といったイメージでしょうか。

    でも、この悪戯好きの妖精のイメージも好きだなあ。個人的にホリーの魅力は彼女のおしゃべりにある気がします。自分が話し下手なせいもあるかもしれませんが、流れに棹さすかのように、次々と縦横無尽に話を展開していく女性はスゴいなあ、と圧倒されることが多々あります。油断すると置いて行かれるような話の展開は、自分は聞いていて好きなのですが、ホリーのおしゃべりにもそれに似たようなものを感じます。だから、彼女がただしゃべっているだけでも、ずっと読めるような気がするくらい好きなのです。

    この人物造形をやってのけたカポーティと、そのおしゃべりの訳を見事にやってのけた村上春樹さんはとんでもないなあ、と思います。そして話が進んでいくごとに、ホリーの隠された半生が明らかになり、そこから導き出された彼女なりの哲学というものが、感じられるようになるのです。そこでまたホリーの魅力が増すわけですね。

    悪戯好きの妖精と書いたけど、まだヘップバーンのイメージに引っ張られてるかなあ。陳腐な表現ですが、嵐のような人が一番正しいのかも。でも、その嵐って実際に来てる瞬間は迷惑ですが、さしたる被害もなく通り過ぎてくれれば、強風や強い雨という非日常。そして学校が休校になる、というワクワク感だけが、後に残ったりもします。ホリーの存在もはた迷惑なところはあるけど、でも一方で思い出さずにはいられない。できるならまた会ってみたい、そんなふうに思えます。

    そのほかに収録されている短編は3編あるのですが、それらとこの表題作の共通点は、自由への希求と過去への郷愁のような気がします。

    「花盛りの家」のヒロインのオティリーも、個人的にはホリーに負けない魅力的なヒロイン! 不幸な生い立ちながらも、ひょんなことから娼館で一番の人気者となり、その後恋に落ち、小さな集落のある村に嫁ぐことになるオティーリー。しかしそこで待っていたのは、今までと全く違う生活と新しい嫁を良く思わない姑で……

    オティーリーの前向きさというか、物事の捉え方や対処の仕方が面白かったし、夢か現実か分からない不思議な展開から、ちょっとお茶目でキュートな結末まで、様々な魅力のある作品だったと思います。でも一方で、これは世の男性に対する警告だよなあ、と思わなくもなかったり(笑)

    「ダイアモンドのギター」「クリスマスの思い出」は何かを企む楽しさやワクワク感を見事に表現する一方で、寂しさやもの悲しさも印象的な作品。いずれも短い短編なのですが、この短さで楽しさやワクワク感と、もの悲しさを両立させるのがスゴいと感じます。そして何よりラストの切り取り方と、そこから抱かせる読後感はもはや名人芸!

    いずれの作品も回想形式であったり、あるいは過去の思い出というものが話に関わってきます。その回想や思い出というものは、いずれも状況は違えど、楽しさやキラキラ感がどこかにあったように感じます。おそらくそれは、登場人物たちの自由への思い、自由だった時代への思い、というものがあるのではないでしょうか。

    有名すぎて、なかなか読んでこなかった作品ですが、やっぱり名作といわれるゆえんのある作品なんだなあ、と感じました。いずれは映画版『ディファニーで朝食を』も観たいなあ。

    • 沙都さん
      地球っこさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

      好きな女性のタイプ分かりますか?(笑)

      先ほど地球っこさんのレビューを...
      地球っこさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

      好きな女性のタイプ分かりますか?(笑)

      先ほど地球っこさんのレビューを読ませていただきましたが、最後の関西弁の語りかけが、まさに読後のホリーに対する感情を言い表していますね。たぶん自分も、セリフにすると、これに近い言葉になると思います。

      ホリーのような、おとなしいタイプの男性を振り回す女の子って、一昔前のアニメやマンガ、ラノベにはたくさんいたように思います。

      ホリーのことをいい感じに思ったのは、子ども時代や思春期に触れた、そうした諸々の作品の影響や、自由と冒険を味あわせてくれたキャラクターたちを、ホリーを重ね合わせているのかもしれないなあ、と地球っこさんのコメントを拝読して思いました。

      遅くなりましたが、こちらこそ本年もよろしくお願いいたします。
      2020/01/14
    • 地球っこさん
      とし長さん、おはようございます。
      昨日は騒々しくコメントしてしまい失礼しました。
      一晩寝たら落ち着きました 笑

      私も中高生時代に大...
      とし長さん、おはようございます。
      昨日は騒々しくコメントしてしまい失礼しました。
      一晩寝たら落ち着きました 笑

      私も中高生時代に大好きだったマンガやコバルト文庫(今でいうラノベかな)のキャラクターの好きなタイプには、どこか共通点がありました(*^-^*)
      今だにそういうタイプのキャラクターに思わず出会うとどきどきします。
      だからこれからも読書はやめられないなぁ……たぶん♪
      2020/01/15
    • 沙都さん
      地球っこさん、落ち着かれましたか? 良かったです(笑)

      騒々しいとはつゆほども思いませんでしたが、こうやってコメントいただくのもある意味、...
      地球っこさん、落ち着かれましたか? 良かったです(笑)

      騒々しいとはつゆほども思いませんでしたが、こうやってコメントいただくのもある意味、地球っこさんがホリーよろしく部屋の窓をこんこんと叩いてくれたようで、とても楽しいですよ。

      地球っこさんの仰るとおり、好きなキャラクターのタイプってありますね。自分も最初に出てきた登場人物が好きなタイプのキャラだと、あっという間に物語に引き込まれます。こうした出会いも読書の醍醐味でしょうね。
      2020/01/15
  • 儚さと破天荒さが同居するホリーが、コケテイッシユな女として魅力的に描かれていて、映画ですでにヘップバーンのイメージが出来上がっていたからか、情景が思い浮かべながら読む。

    象徴としてのティファニー。

    アカとアオの対比。これは原書ではどんなワードで表現されていたのだろう?

    「わたしとしては普通よりは自然になりたいんだぁ。」

    続く3つの短編も2人の人間の間の微妙な感情が描かれていてよかった。

    古典として時の試練に耐えうる小説と消えていく小説の違いは何だろう?

    2020.5.23

  •  ホリーが、自分にとってのティファニーを、心のオアシスを求め続けている姿が物悲しかった。「ティファニーで朝食を」以外の短編でも、オアシスの渇望、叶えられない希望、諦め、それらがとても印象的だった。
     幸せや心の拠り所を探して生き続けるけど、求めてるものはなかなか見つからない。手に入っても、満たされるかは分からないし、いつまで続くか分からない。それでも生き続ける人間の物悲しさが、生き生きと明るく、でもどこか寂しく表現されていて素敵な世界観だったな。
     自分の居場所を見つけたホリーの猫、ホリーの幸せを願う僕。ラストの描写は心に迫るものがあるけれど、どこか寂しい。

     感覚的で鋭利なタイプの本とは逆で、一つ一つが与える効果を考えて構成された本な気がした。だから、心にまざまざとした印象や、傷跡を残していくタイプの本ではなかった。直接的な描写が積み重ねられているけれど、どこかふわふわしていて、柔らかに何かを心に残していってくれた。個人的にずっと冷血が気になっているけど、彼の他の作品とはタイプが違うだろうから、冷血を読む前にこの本を読めてよかったと思う。これ以前の本も機会があれば読んでみたい。

     あとがきの村上春樹の言葉には納得する部分が多々あって、彼の洞察力や表現力は流石だなと思った。カポーティにしか表現できない美しくも悲しい世界観、イノセンスの表現、彼と執筆についてなど。

     「ティファニーで朝食を」はとても映画向きな小説だと思うからこそ、小説の世界観が全面に出ている映画が創られたら観てみたいなと思う。

  • イオンで夕食を。
    (ただの買い出し。)


    米国版『人間失格』
    もしくは米国版又吉直樹。

    っぽいと思いました。

    先に出てるのこっちだろうけど。

    何処へ行っても、どこででも逞しく生きていけると思います。

    ホリーにしてもティコにしても逃げるの鮮やかだよなー笑

  • 「ティファニーで朝食を」他、短編を加えた計四編の作品。表題作も含めて、「ここではないどこか」を希求してもがく人間のいじらしさ、不器用さ、純粋さ、弱さそして強さを描いた作品。

    ティファニーで朝食を
    ホリーみたいな女性って天真爛漫さばかりが人目について誤解されやすいけど心のどこかに入り組んだ所が必ずあって、そこに僕はよりいっそう惹かれる。
    「信心深いとかじゃなくて、もっと実際的なものとして自らの則に従う」こと。
    卑怯者や猫かぶりや精神的なペテン師や商売女に成り下がらないなら、楽しい気持ちになるために墓だって暴く。自分の気持ちに公正であることが世間の常識に反したとして、公正さを欠いた人生に何の意味があるだろう?

    花盛りの家
    ちょっと不気味な欧州怪談みたいな話。後半の夢の中みたいな展開を読むと最後、ロワイヤルが来た瞬間にはオティリーは死んでいたのかもとか考えてしまう。

    ダイヤモンドのギター
    一番好き。文章のテンポ感はずっと変わらず、無駄な抑揚はつけない。それでも脱走の瞬間とその失敗の場面はコマ送りで脳内を駆け巡った。本当に悲しい時に涙なんて出ない。本当に辛い人は声も出さずに、大泣きしている人を慰める。ドライな文体で哀しみを表現するのがむしろ人間のリアルな姿を浮き彫りにしていて好きだ。

    クリスマスの思い出
    ダイヤモンドのギターが印象強すぎて、結構後半まで内容が入ってこなかったが最後の一段落だけでお釣りは十分すぎるほど。
    「まさにそのとき、それが起こったことが僕にはわかる。電報の文面も僕の秘密の水脈がすでに受け取っていた知らせを裏づけたに過ぎない。その知らせは僕という人間のかけがえのない一部を切り落とし、糸の切れた凧のように空に放ってしまう。だからこそ僕はこの十二月のとくべつな日の朝に学校の校庭を歩き、空を見わたしているのだ。心臓のかたちに似たふたつの迷い凧が、足早に天国に向かう姿が見えるのではないかという気がして。」

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