- Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102100042
感想・レビュー・書評
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細かな語りが乾いた雰囲気を上手く醸成していて、ねっとり引き込まれる作品。情況の静と動とともに人生の静と動が描写され、自然の中で生きる人間の営みを深い洞察で作品にした。最後は穏やかな虚無感にいくばくながら浸ることができる。
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原題:The Old Man and the Sea(1952年、米)
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ハードボイルドとか男のロマンとかは、私にはよく分からないが、とりあえず、このお爺さんはいい男だ。ぎらつくような闘争心。「強い奴が、偉いんだ」という単純明快な論理。深みがないと言われればそれまでだが、ここまで徹底すれば、いっそ清々しくて天晴れだ。「難しいことは分からんが、とりあえず俺は勝つ」みたいなシンプルな性格には愛嬌すら感じる。 -
老漁師サンチャゴから学んだ7つのこと:
1. 揺るがない気持ちをもつことの大切さ。
84日間一本釣りで獲物が釣れなくても今日は絶対に釣れるんだと強く信じてやまない強い心があれば、いつか必ず獲物を仕留められよう。
2. 己が生まれてきた意味を自覚することの大切さ。
自分が漁師として生まれ、大物を釣り上げるためだけに生きてきたと自覚しているため、周りに何を言われようとも行動や思いに迷いが生じない。
3. 決意することの大切さ。
今目の前で戦っているこの大物のカジキ、いや獲物、いや兄弟を殺す、と固く誓っていることにより、途中で行動がブレることがない。また困難に直面しても途中で諦めるという気持ちが起きない。
4. 戦いというのは壮絶であること。
一人の老漁師と一匹の大きな獲物との戦いは、孤独な心理戦・持久戦となり、いつしか相手に対し友情や愛情、そして尊敬にも似た気持ちを抱かせてしまうほど壮絶なものであった。つまり楽な戦いなどは本物の戦いではないということだ。
5. 師弟関係の大切さ。
海で一人で孤独に獲物と戦っているときにも、老人を慕っている少年のことを常に思うことで、老人は気持ち的には少年と二人で獲物と戦っていると思われる。師弟関係は人を孤独から解放し、疲労困憊の身体からも力を湧き立たせてくれる、人間を前進させてくれる源泉だ。
6. 前向きな考えの大切さ。
仕留めた獲物を船に横並びにして岸に向かっているところ、サメに獲物を襲われて獲物の一部がなくなってしまった。それでも40ポンド分なくなって軽くなったろう、と思う前向きさ。どんな困難に直面しても、前向きな考えがあれば過去にとらわれずに前に進めるはずだ。
7. 諦めない心の大切さ。
サメは血の匂いで次々と集まり襲いかかってくる。そんな中、サメと対峙する銛がなくなっても老人は今ある道具でサメに戦いを挑む。最後まで諦めない気持ちは、老人を生きて岸まで返したことにつながったのだと思う。
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老漁師サンチャゴは言った。
「だが人間は負けるようには造られてはいない」
「打ち砕かれることはあっても負けることはないんだ」
そう、人間は負けることはないんだ。何度でも這い上がれば、負けることはない。 -
わたくしが初めて自力で読んだ洋書が、今年生誕120年を迎へたヘミングウェイでした。リライト版ではオスカー・ワイルドだつたけど。
Men Without Womenといふ作品で、「女のいない男たち」とか「男だけの世界」などと訳されてゐるやうです。
会話主体の小説ながら、贅肉をそぎ落としてゆくやうなシンプルな文章に惹かれたのであります。おお、これが固ゆで玉子なのか、と実感したものです。
この『老人と海』も同様で、冒頭からぐいぐい読ませます。
年をとつた漁師・サンチャゴは、メキシコ湾流に小舟を浮かべて漁をして暮らしてゐます。相棒として少年が同行してゐたのですが、40日たつても一匹も釣れぬので、少年の親が別の舟に乗るやうに言ひつけたのです。少年は不満ながらおとつつあんの言ふことには従はないといけない。それでサンチャゴは一人で漁を続けるのですが......
沖へ出たサンチャゴ。少年がゐたらなあ、と何度もぼやきます。しかしつひに獲物が喰らひつきます。カジキマグロ。でかい。綱に繋がつたまま、悠揚たる態度で老人を翻弄します。足掛け三日の駆け引きの後、漸く仕留めるのですが、大きすぎて引き上げられません。で、小舟に固定してそのまま凱旋せんとする老人。
魚があまりに大きいので、どちらが引かれてゐるのやら、といふ感じ。まるで入学式を迎へた小学生が、大きいランドセルに振り回されて、背負つてゐるのか背負れてゐるのかわからないのに似てゐる。
ところが、カジキの血の臭ひに誘はれて、鮫が襲撃してきます。危し、サンチャゴ。獲物を守り切れるのか......?
ストオリイは単純ながら、引き締まつた流線型の文章に乗せられて、老人の行動から目が離せません。少年との友情も重要なファクタアでせうが、わたくしは「生きる」ことの本質に迫つた佳作だと思ひました。人間は(すべての生き物は、かな)ほかの生命を奪ふことなしに生きることは出来ない、といふ当然の事を再認識させます。
数数の死闘に耐えて帰還した老人。徒労感に打ちひしがれ、疲労困憊して眠るさまは、人生の厳しさを教へるのです。ああ、俺はまだまだヒヨコだ、とね。
ついでながら、福田恆存の翻訳が絶品であります。沙翁作品でもさうですが、この人の訳を読んだ上で、なほ新訳を試みる翻訳者が後を絶ちませんが、勇気があるなあと。
ちと力が入り過ぎましたかな。わたくしの柄ではありませんね。ご無礼いたしました。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-815.html -
言わずと知れた名作なので、タイトルとあらすじから、孤独な老人が海に向き合いながら黙想したり、回想したりする話だと勝手に想像していた。実際に読んでみると、確かに、独り言癖のある老人がいろいろ考えながら大魚と闘うストーリーではあるが、驚くほど臨場感とスリルある描写の連続で、地味な設定に反してとても面白い。現代にも通じるエンターテインメント性があると思った。
また、ヘミングウェイが「失われた世代」の一人と言われるように、昔は強く有能な漁師だった老人が、一匹も魚を釣れなくなっていたところに現れた大魚を放すまいとする姿には、失われたものに対する執着が表現されている。しかし、喪失感だけに留まらず、物語の終盤、老人が持ち帰った大魚の残骸を目にした村人たちが老人への尊敬の念を新たにするシーンからは、経験を積んだ者への労りと肯定を見出すこともできた。 -
・大ディマジオの効果は?
・夢のライオンと砂浜の役割は?
「あの子がいれば」と何回言うのか -
鮫が襲ってくること、分かっていたけどいざその描写に辿り着くと手に汗握るような臨場感。老人が巻き込まれないかヒヤヒヤ...老人が海水に手をつけて傷を治そうとしたり、魚を捌くところがとってもリアル。自分じゃ出来ない体験を本を通してできるから読書っていいですよね。子供の頃に読んでたら、ワクワク感とかまた違った感触だっただろうなぁ
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どことなくノスタルジックな気持ちにさせてくれて、ふとした時にまた読み返したくなる。映画、小説ともに大好きです。
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アメリカ