蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす: ヘミングウェイ全短編〈3〉 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (702ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100127

作品紹介・あらすじ

炸裂する砲弾、絶望的な突撃。凄惨極まる戦場で、作家の視線が何かを捉えた-1937年、ヘミングウェイはスペイン内戦を取材、死を垣間見たこの体験が、以降の作品群に新たな光芒を与えることになる。「蝶々と戦車」を始めとするスペイン内戦ものに加え、自らの内面を凝視するラヴ・ストーリー「異郷」など、生前未発表の7編を含む全22編。遺族らの手による初の決定版短編全集、完結編。

感想・レビュー・書評

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  • このままずっと読み続けられそう。ヘミングウェイの短編にはそんな魅力がある。少年時代、スペイン内戦、アフリカ、パリ、キューバ、アメリカ・・・あらゆるテーマが変奏されて小説の中に顔を出す。
    が、もうこの辺でいいや、と途中で読むのをやめてしまった。
    すごい。たしかにすごい。感心する。でも、個人的に、そのすごさはどこか、他人事。

  • タイトルが一人歩きしそうなくらい印象的かつアフォリズム的。内容はヘミングウェイの短編らしく淡々とした文章で、テンポ良く読めるし時間がないときに向いている。我が家のトイレ本。

  • 徹底的にそぎ落とされた美しい男の世界。ヘミングウェイはマッチョではない。その弱々しさ、女々しさが男らしいのだ。海、戦争、少年とヘミングウェイのよい要素が満載の短編集だ。

  • 3.2

  • 『ヘミングウェイ全短編』の最後の作品集です。自ら従軍記者として取材し、身近に体験したスペイン内戦と第二次世界大戦を描いたものが多く、今まで以上に「死」、それも「突然の死」をダイレクトに伝えます。

  • 2019.9.28 図書館

  • 「キリマンジャロの雪」を読むために購入。

  • ヘミングウェイの短編集.完結編はキューバ時代.
    編者も書いているように,第二巻よりは低調な感じ.ちょっとマンネリ感があるな.「最後の良き故郷」とかも悪くはないが,既視感がある.そのなかではスペイン内戦などに題材をとった「蝶々と戦車」「戦いの前夜」「誰も死にはしない」なんかがいいかな.
    生前未発表の短編も入っているが,こちらは発表しなくてよかったのもある気がする.最後の「異郷」は老いのつらさが滲み出ている.若い美人と旅行するのも楽じゃない.

  • ☆☆☆2017年7月レビュー☆☆☆


    ヘミングウェー短編集第3巻。
    スペイン戦争の体験からか、戦争を題材にした作品が多い。特にマドリードを舞台にした作品が印象に残った。
    ”チコーテ”というバーを舞台にした『密告』『蝶々と戦車』。戦争の最中でも、バーは案外にぎわっていたんだ、と思うと同時に、殺伐とした空気の中でバーが殺人や粛清の舞台となる。この2編からはそういう事が伝わってくる。
    街の雰囲気、自然の描写や、自分がそこに居るような臨場感のあるのが素晴らしいと思う。


    「マドリードが包囲されはじめて二度目の冬。タバコと人々の寛容さを含めて、すべてが欠乏していた。人々はいつも腹をすかし気味で、天気のようないかんともしがたい事柄に対してまで、突然、むかっ腹を立てていた。」
    ↑『蝶々と戦車』の序盤の一描写。
    戦争で荒れていく街の様子、人々の心がわかる。そしてここから何かよからぬ事が起きることを予感させる。


    いつになるかわからないが、再読すればまた何かしらの発見がありそうな気がする。

  • 憤懣とはけ口とで駄目なら隠遁か死か、そこには挫けない男はいない気もする。年齢を重ねるほど視界は開けては来ず、靄が掛かったように目を凝らせば凝らすほど何か分からなくなる。

  • 新訳のヘミングウェイ全短編3分冊の第3巻。
    キューバを舞台にした〝密輸船〟もの2編と、スペイン内戦をモチーフにした6つの短編が強い印象を残す。

     スペイン内戦当時、外国から参戦したインテリ義勇兵達の生活風俗が描かれ印象深い。彼らは日中の戦闘を終えた後、ホテルの一室やバーで一杯やりながら時を過ごす余裕もあったらしく、どこか優雅で呑気でもあった当時の戦争の有様が興味深い。

     一方、内戦時代のマドリッドのレストランでの椿事を描いた短編「蝶々と戦車」は、内戦時代の陰鬱な空気を描き、印象に残る。
     
     とりわけ、作品「密告」が秀逸。マドリッドの伝統あるバーの名店での〝裏切り〟を描いている。暗い戦争の時代に、良きものが失われてゆく寂しさ、苦い思いを彫り込んだ秀作。バーを愛でる酒呑みの1人として、胸に滲みた。この短編集の白眉となる名編。

                      

  • 最後の良き故郷

  • かなり残酷でグロテスクな状況が描かれているにも関わらず、詩的で情緒が溢れでている。翻訳で読んでいるので訳が良いのかも知れないが、五感に訴える文章だと思う。

  • 久しぶりにヘミングウエイの短編が読みたくなり手に取った。

    「老人と海」以外の作品は、あまり世界に入り込めない。

  • ヘミングウェイ全短編3。全短編集を全部読み終わるのにはずいぶん時間がかかったけど、読み終わった達成感よりも読み終わってしまった淋しさのほうが大きい。

    戦時の陰鬱な感じがよく出ている。どの作品も良かったけど、酒場で目撃したある事件を蝶々と戦車にたとえたセンスは、さすがだと思った。
    そして、ヘミングウェイのスーツケース盗難事件(彼はこの事件によってそれまで書きためていた全ての作品を失った)について書かれた部分には圧倒された。「底なしの絶望」とはこのことか…と。

  • 「」の使い方からカンマの打ち方まで、まさに文章のお手本

  • 久々に読むヘミングウェイの短編集。戦争での体験を描いた作品から少年時代の望郷を描いた作品まで幅広く収められている。若い恋人と車でアメリカを旅する様子を描いた「異郷」は、さながらロード・ノベルの風体でありながらも、スペイン内戦に魅入られ戦地へ赴きたいという思いと、このままゆっくり旅をつづけたいという思いの葛藤が印象的。

  • 単行本で読んだので、収録作品は以下のみ。

    汽車の旅 
    ポーター 
    十字路の憂鬱 
    死の遠景 
    何を見ても何かを思いだす 
    本土からの吉報 
    異郷

    この人の短編は終わりが、あ、ここで終わるんだ?といつも思ってしまうそっけなさ。読解力が無いからだと言われてしまえばそうなんですが。
    私はあの小説の「ビミニ」が好きなので、関係する短編はどれも興味深く読んでしまう。
    訳者さんのおかげなのかもしれないけど、この人のタイトルって本当にカッコいい。素敵過ぎる。と思っています。
    そんなわけで、「何を見ても何かを思いだす」目当てで読みました。

  • ヘミングウェイが好きだ。
    何でか自分でもわからんが、とにかく好きだ。


    ヘミングウェイの短編は読みにくいものも多く
    非常に甲乙付け”易い” のだが
    この本も割合に好き嫌いが分かれる作品が多いと思う。

    個人的には「密告」「蝶々と戦車」「戦いの前夜」が白眉。
    特に「蝶々と戦車」はヘミングウェイの短編の中でもベストスリーに入るほど好き。
    (ちなみに残り二つは「清潔でとても明るいところ」と「身を横たえて」)

    いずれも、人間が不条理に立ち向かうドラマを、
    不合理に打ちのめされる悲しみを
    信じられないほどシンプルな料理法で提供してくれる。
    登場人物達は必ず、何かにぶつかって潰えていく。
    それは戦争そのものだったり、戦争による小さな不和だったり
    戦争の意味や意義や意図をほんの少しでも疑問に思うことの危険であったり
    人間そのものだったりする。


    そういった哀しさを、別に美談に昇華するでもなく
    ただポイっとこちらへ放ってくれる。
    それを自分なりに噛み砕くのが、殊の外楽しい。
    彼の短編にあるのは、幾通りも解き方があるパズルで遊んでいるような面白さだ。


    実際のところ、3つの短編集の中では一番読みやすいんじゃないかと思ってる。
    なので人にヘミングウェイを勧めるときは大抵この本から手渡している。

    ただ、勧めた人で良い返事を貰えた人は
    現在までただの一人もいやしません。

  • 『世の光』『スイス賛歌』を読まずしてヘミングウェイを語るなかれ。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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