移動祝祭日 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100158

感想・レビュー・書評

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  • アーネスト・ヘミングウェイ22歳。新妻ハドリーを伴い、文学修業のためパリに渡ってからの思い出の日々を綴った青春回想エッセイです。ヘミングウェイの死後、発表されたものとのことです。

    「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリはどこへでもついてくる魂の饗宴=移動祝祭日だからだ。」

    1920年代パリ。第一次世界大戦が終わった後のパリは、次世代の新しい芸術を志す者が集まり、様々な才能が競い合う芸術の都であった!パブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、ガートルート・スタイン、ジェイムズ・ジョイス、エズラ・パウンド、フォード・マドックス・フォード、エヴァン・シップマン、スコット・フィッツジェラルド・・・。
    名がまだ売れていない若き日のヘミングウェイは、つましい生活を送りながらも、こうしたパリで文学を志し、文学サロンでの多彩な芸術家たちとの交流、美術館訪問、貸本屋で借りる文豪たちの小説、カフェでの執筆とさまざまな出会いを通して、その文学才能を開花させていった。それに、お腹をすかせながらもパリで興ずるボクシング、競馬、カフェでのワイン、高級でないフランス料理、そして妻との新婚生活!
    まさにヘミングウェイにとっての青年時代の祝祭の日々が、当時を思い出しながらの会話やシニカルな観察眼を踏まえた文章力にて絶妙に再現され、それらに思わず笑みがこぼれます。また、当時に交流していた「自堕落世代」の芸術家たちへのどちらかといえば厳しくあからさまな批評・批判の数々は、読者にはとても面白いのですが、これは当時の文学界に波乱を巻き起こしたのではないかなあ。(笑)特にフィッツジェラルドとの破天荒な会話や2人珍道中は映画になっても面白いかもしれない。いや、それよりもこの『移動祝祭日』自体、映画でも相当面白くなるだろう。
    青年時代の苦くもきれいな思い出に彩られたパリでの生活。解説を読むと、祝祭の記憶をこのような形で封印したかったヘミングウェイの想いが伝わってきて、羨ましくも物悲しい気分にさせられました。
    パリ!そこは一度は暮らしてみたい憧れの都。しかし、祝祭の日々は若い時代に味わうものなんですね・・・。あ~ホントに限りなく羨ましい。魂だけは若返らせ、自分も一度は暮らしてみたい!

  • やっぱり、食事の描写とヘミングウェイがカフェで開くノートと鉛筆の走る音を想像するのが最高に良い。

  • ヘミングウェイの集大成ともいえる作品。2冊目にこの本を選んだのは順序的におかしいかもなと思ったけど、多分これから著書を読むにあたって理解の補助になるだろうと思い、むしろプラスになるのではないかと思ってみたりする。
    やはりヘミングウェイの書く文章は明快で生き生きとしていて、さも自分自身がその世界に入り込んでいるかのように感じられて好きだ。もしかしたらリラでのエヴァン・シップマンのトルストイのくだりにあるように、翻訳者の手腕も一因としてあるのかもしれないが...。
    この本を通じてエズラ・パウンドやスコット・フィッツジェラルドなどの著書も読んでみたいなと思ったし、リラにも行ってみたいと思った。私のやりたいことが増えたことが読んで得たものの中で1番大きいことだろう。
    私にとってのa moveable feastは多分熱海だと思う。ただ、訪れた場所が少ないこともあり、比較対象が少ないため、これから色んな場所に行って、真のa moveable feast見つけたいな。

  • 老いたノーベル賞作家が、若き日の海外生活をノスタルジックに振り返る。売れない作家の苦しみ、貧乏、焦燥感が生き生きと伝わってくる。

  • ヘミングウェイを初めて読んだ一冊。
    きっかけは、シティ•オブ•エンジェルの冒頭で、ニコラス•ケイジ演じる天使?が天使の溜まり場である図書館で、読書中の人の後ろから、覗き込んで読み上げるシーンの一説が気になったから。

    ここで、読み上げた一節を調べると、この小説に行き着いた。

    ヘミングウェイとしては、晩年の作品。
    若い頃のフランス•パリで恋人と過ごした時のことを書き留めたい衝動から作り上げたのではないかと推察。

    多少、小説ならではの誇張もあると思うが、基本的には、元恋人と思い出を確かめながら描いた作品
    (事実、執筆時に電話で当時のことを確認していたとのこと)。

  • 芸術家が集う1920年代パリの活気を綴ったメモワール。決して、青春の群像劇ではない。堕落する者もいるパリで、数々の出会いが交錯する。それが作者の才能を刺激し、逞しい創作意欲を育んだ...“祝祭日”とは喝采を浴びた者だけに許される慰めの軌跡ではなかったか...

  • 往来堂書店『D坂文庫2012冬』から。
    文豪が若き日々をパリで過ごした時の回想録。当時の暮らしぶりや交友が赤裸々に語られていて、大文豪も所詮"男"だったんだなぁと、その存在が少し身近になった。それにしても、スコット・フィッツジェラルドとのことを描いた部分は出色。これだけで短編小説として楽しめる。
    それから、もうひとつ。これから絵画を観るときは空腹にしよう。

  • 「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らす事ができたなら、その後の人生をどこですごそうと、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」

    という冒頭のエピグラフで有名なヘミングウェイの遺作。以前から気になる本であったのだが、品切れ状態となっていた。新訳で、文庫で出たので早速、読んでみる。

    20年代のパリという伝説的な都市と伝説的な芸術家たち。そして、貧しくも、芸術を志す青年と新婚の夫婦の美しい愛。カフェ、レストラン、リゾートなどなどの風俗の記述。様々な芸術家達の姿の辛口の描写。

    もう、絵に描いたような「修業時代の芸術家の貧しいけど、幸せな日々」の話である。そして、その美しい日々は、作家としての成功とともに、やってきた「リッチな連中」の侵入によって終わる。

    「若くて幸せな日々」を描きながら、61才で自殺した作家の胸中には、どのような思いがよぎっていたのだろうか?

    という作品の背景から必然的にやってくるセンチメンタリズムは抜きにしても、なんだか、とても切ない気持ちにさせる作品である。

  • お決まりぽいですが、『ミッドナイト・イン・パリ』繋がりで読んだら面白すぎて一気読み。ヘミングウェイが辛辣すぎて笑えて仕方ない。文学に真面目でひとを作品で判断するところとかどこかの誰かみたいで、可笑しかった。こういう男が好きだ。1920年代の狂騒の時代といわれたパリにたくさんの作家たちが集ったのは、アメリカがピューリタン色が強かったせいもあると思うけど、パリに行ったらなにかかわるのかもと思わせるものがあるのかも、昔も今も。短編集を読もう。

  • 個人的にヘミングウェイのベスト。

著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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