- Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102101094
感想・レビュー・書評
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「ハツカネズミと人間」がとても好きなタイプの小説だったと夫に言ったら、「なら怒りの葡萄も好きだと思う」と言われ読んでみた。
大恐慌の時代、仕事を求めてカリフォルニアに向かう人々は大勢いた。大家族で、不具合だらけの車での移動はどれほど大変だったことか。ジョード一家もそのうちの一つの家族。仮釈放中のトムを中心に、口は悪いけれどユーモラスで憎めない爺ちゃん、婆ちゃんやたくましいお母、生意気な子供たちや他の家族たちや他のメンバーたちがカリフォルニアに向かいます。その場面が目に見えるような描写はさすがと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭からして、粗暴で洗練さを欠く服役者の登場で思わず仰け反った。
殺人者であり、いかにも底辺臭がプンプンするので、やれやれ大変な物語に足を踏み入れていまったな、とやや後悔しながら読み進めた。
瑞々しく小ぢんまりとした日本には無い、乾いて熱くて広大なアメリカの大地の強風が読む者を打ちのめす。
情景描写は活動写真のように眼前に広がり、わびさびを感じさせる確かな筆致が心を惹きつける。
お金、権利、人の思いを蔑ろにした法律、などが幅をきかせる以前の人間が、いかに温かく生活と心を紡いでいたかを思い知らされる。
現代の我々は何か大事物を置き去りにして、文明を便利さを手に入れてしまったのではないかと首を傾げたくなる。
下巻もボリュームのある紙数だけれど、推して読み進めたい。 -
むかし読んだのは1962年。作者案内にはその年にノーベル賞受賞とあります。映画化もあり、話題だったのでしょうか。でもストーリーをすっかり忘れており、初めて読むような感じになりましたのが、個人的などうでもいいことですがわたしとしまして不思議。なぜなら社会機構の矛盾というような題材に関心があった若い時代、記憶の底に残ってもいいのだろうに、ということです。ま、未熟だったのですかね。
さて、上巻を読み終えて、もちろん底辺にある近代資本主義の矛盾を突いているのは痛いほど分かります。でもねえ、ジョードー一家がオクラホマからテキサス州、ニューメキシコ州、アリゾナ州そしてカリフォルニア州へと、故郷を捨て新天地へ困難な旅するさまを、簡易地図でたどりながら読んでいると、その情景描写の目に浮かぶような筆運びに魅了されてしまうのです。
この一家13人は苦しい悲惨な旅なんですよ、老人たちは旅に病み死に、若者は怒り、かたや無気力になり失踪し、一家がバラバラになっていく。しかし、それも時代を超えていつの世にもある。その普遍性をある物語に圧縮して解きほぐしていく、これぞ文学の骨頂というのですなと、感心してしまうのでもあります。 -
とてもソリッドながら読む事をやめれない文章だった。世界恐慌の中それでも強く生きようとする人達を、どちらかと言うと淡々と描いているが、とても惹きつけられる小説だった。