ポピュラーな物語なのだが、原作小説をしっかり読んだことはなかった。そして初読。少々意外な感じであった。
ウエンディ兄弟はピーター・パンに連れて行かれ、ネバーランドという奇妙な島へ。そこではインディアンと海賊らが追いつ追われつし、頻繁に戦も起きる。殺すとか虐殺という殺伐とした言葉も出てきて、ちょっと驚く。
ピーター・パン自身も意地が悪くて、ひねくれ者な性格である。( ピーターはかつて、夜の空で遊んで帰った際、母が子供部屋の窓を閉めてしまっていて心に傷を負った体験が原因らしい。)
子供向けに翻訳されたものは、残酷さや悪意などは適度に和らげて毒気を抜いてあるのでは? いう気がした。
その他は印象に残ったこと。
妖精ティンカーベルは嫉妬深くこれまた性格が悪い。ウエンディはネバーランドでなぜか島の子どもたちの母親のようになってしまうのが奇妙(作者バリー自身の、母への思慕が背景にあるらしい。)
ウエンディの父親は、我が子らが出奔・行方不明になって以後、犬小屋で寝起きし、犬小屋に入ったまま出勤している、というのが可笑しい。
終盤ピーター・パンとウエンディは再会、その会話が悲痛。
「 大人になんかならないって約束したじゃないか! 」
「 どうしようもなかったの。わたし、もう結婚しているのよ、ピーター。」(17章)
イカす一節もある。
「 パン、きさまは誰なのだ、何者なのだ?」
(海賊フック船長が問う。ピーターが答える。)
「 若さだ、喜びだ 」「 卵から出てきた小さな鳥だ 」第15章