ロリータ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (482ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102105016

感想・レビュー・書評

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  • 死んだ初恋の人の面影を別の女性に見出すが・・・・という、不朽のテーマにのっとった物語。

    私はナボコフの「深読み無用」という言葉に従って素直にハンバートの目線で読みました。
    ロリータがどんな容姿なのかひたすら想像し、その痛ましさ(おっさんが小娘に軽蔑される時の情けなさや肩身の狭い気持ち、ジェネレーションギャップのやりきれなさの書き方の見事なこと!)に凹み、ラストに山から小さな村を見降ろして、平和な人々の暮らしの声を聞きながら、自分がロリータをそうした平和で健全な世界にいられなくさせてしまったのだと自覚して絶望するくだりに涙を流したものでした。

    でもそういう読み方って最近はあんまり歓迎されてないんですね。若島正の「ロリータ、ロリータ、ロリータ」などを読んで、ここまで深読みする人が多いのだと知って驚きました。
    とりあえず私は素直に読み続けようと思います(笑)。「芸術(つまり好奇心、やさしさ、思いやり、恍惚)」というナボコフのあとがきにある一文を考えると、ハンバートは勝手ではあるけれど(ハンバートに心打たれる私でも、リタやシャーロットはやっぱり気の毒すぎると思いますし)、ロリータへの最終的な愛は詭弁と取るべきではなく、本当にこれからの彼女の幸せを願っている、と解釈できると思うし、したいです。


    余談ですが、過去様々にこの本の装丁や表紙は変わっています。その中でも私が一番好きなのは、この文月信氏の表紙です。幻想的で感傷的なこの物語の雰囲気がよく出ていると思うのです。映画のスチールや扇情的な絵のものは・・・うーん。

  • ロ、リー、タ。舌の先が口蓋を三歩すすんで、三歩目に軽く歯にあたる。ロ。リー。タ。(『ロリータ』より)早熟な十代前半の少女に魅せられた中年男ハンバートの悲劇の物語は、裁判中の彼の独白と手記という形式で語られる。いかなるモラルも引きずらないとナボコフ自らが宣言したこの作品は出版と同時に一大センセーションを巻き起こしたが、彼の小説にたいする理念、すなわち小説は美的な快楽を伴う次元においてのみ存在意義があるという概念を反映したものであることは確かだ。映画は断然キューブリックよりエイドリアン・ライン派です。ハンバート役を演じたジェレミー・アイアンズが素晴らしかった。インテリで、いい歳で、それなのに奔放な小娘に弄ばれる情けない男の役が彼ほどはまりそうな役者はいません。ロリータを見つめる視線の切ないこと。ロリコンの語源としてひどい認識も強いけれど、文学としては純愛を書いた美しい作品なのです

  • 「漂白された巻毛は根もとの黒い色素をあらわにし、剃られた脛のうぶ毛はとげに変わり、よく動く濡れた口はどんなに私が愛でふさいでも彼女が秘蔵する蟇のような顔つきの亡き母の肖像画のその部分と、うんざりするほどの類似性をあらわした。ハンバート・ハンバートが抱えこんだのは青白い宿なしの少女ではなくぶくぶくふとった脚の短い、やたらと胸のでっかい、知恵の足りない、ラム酒漬けのカステラみたいな女だった」ナボコフの表現は魅力的だ。大久保康雄の翻訳が凄いのか、珍しく翻訳本で文体に惹かれた。ナボコフは文学は芸術だというが、芸術の前に人の目を惹くものでなければいけない。今の時代に、この本自体がとりたてて面白いわけではない。しかし普段はまだるっこしい文学的翻訳がこれに限ってはスルスルと頭に入ってくることに驚いた。

  • あとがき『ロリータ』について、が面白かった。

  • 第1部、予想したような古臭い本ではなく、軽快でユーモアもあり魅力のある、面白いものだった。
    第2部のロリータの境遇が辛く長かったけれども。
    しかし、主人公は知的で教養がある魅力的な人物で、ロリータの不幸そうな様子を無視して、自分が小悪魔に振り回される哀れな下僕と称している。これに共感し憧れる輩がいくらでもいることを思うと、小説の素晴らしさより心配が先に来る。
    ロリータのような少女はなぜどのように不幸なのか、もっと考えられ、知られるように、取り上げられるといいと思う。今の社会の現象を見ると、「この本面白かった」だけでは済まない。

  • ロリータに出会った当初のハンバートの恍惚状態に唖然としながら読む。
    物語が転換点をむかえるごとに少し読みやすくなり面白さと悲愴感が増していく。

    ハンバートの真剣さは時に耐えがたいほど残酷で、ロリータは母親に会いたかったろうなとそればかり考えてしまった。
    それでもハンバートに同情もしてしまうのは痛々しさが突き刺さるから。

    読み終えてもう一度「アナベル期」を読み返すととても切なく感じる。
    もしかして、それも美化された思い出なんだろうか。

    テニスをするロリータが一番いきいきと描かれていると思った。

  • H.H.は徹頭徹尾自己中心的で救いようのない変態で、シニカルでスノッブで難解な文章をこね回す鼻持ちならないいやなやつだ。それでも(それだからこそ、なのか)ラストの展開には共感や倫理を超えた強烈な一筋の聖なる光が差し込む。ホッパーの絵のような、古いアメリカの陽光を感じる空気感がすばらしい。

  • ザ・文学。なかなか手ごわい。読み切れずに図書館に返却。そのうち再チャレンジしたい。

    ・・・と思っていたが、優先順位を考えて、「読みたい」から除去。2020/2/8

  • ある少女の義理の父親になった手記風の小説です。
    もっと薄い本だったイメージがあったんですが、すこぶる分厚いです。
    そしてもうちょっと違う方向の小説を期待していたのですが、期待の方向とは違っていました。
    作者本人があとがきにも、途中で投げる人居るだろうとありましたが、読むのが大変でした。
    彼女の関係の話を期待していたのですが、彼女を賞賛したりするような、いわゆる、推しメンに対する語りのようなものが、半分以上ある感じでした。
    更に翻訳物ではよくある、読みにくい文章で、かなりきつかったです。
    平行して、同じ翻訳物の世界週末戦争と毒味師イレーナを読んでいて、こっちは読みやすいので、訳者の問題かもしれませんが…。
    しかし盛大なオチに驚きました。
    一応ところどころで伏線のようなものはあったのですが、彼女があんなにビッチだったとは。
    登場人物の名前が複数パターンで呼ばれていたり、フランス語ルビがあったり、訳注が結構多く向こうの文化に馴染んでいないと理解しづらいものがあったりでした。
    多分、原文で読まないと読みづらいし理解し難いんでしょうね。

  • 本当に気持ちを込めて書いたと伝わってきた。いろいろな感情が昇華されて、美しい。一読の価値あり〜。

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著者プロフィール

1899年ペテルブルク生まれ。ベルリン亡命後、1940年アメリカに移住し、英語による執筆を始める。55年『ロリータ』が世界的ベストセラー。ほかに『賜物』(52)、『アーダ』(69)など。77年没。。

「2022年 『ディフェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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