ハックルベリィ・フィンの冒険 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102106020

感想・レビュー・書評

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  • 昔テレビで観た冒険物語的なものを想像して読んだら正直難しかった。
    ただ当時の時代背景やお国柄などあるだろうけど当たり前のように人間が人間として扱われることのない奴隷制度というものがとても恐ろしく感じた。

  •  大学の米文学史の授業で出会った本書。15年ぶりの再読だったのと、コールタールに羽毛の私刑が強烈に印象に残っていたため、内容をまったく覚えていなかった。当時の感覚でいうとコメディ味溢れる冒険譚だったんだろうか。トムが無茶苦茶過ぎて、一歩間違えばジムは死ぬか不幸な末路を辿っただろう。トムの性質というより、子どもの頃はごっこ遊びにも妙なこだわりを持って遊んでたことを思い出した。
     現代の感覚でハックの勇気ある決断を褒め称えるのは簡単だが、当時の絶対的正義に背き自分の心の声に従うことは並大抵の覚悟では成し得なかっただろう。

  • 僕らは大人たちから「大人になるために」と言って、次から次へと教科書を詰め込まれ知識を注ぎこまれきた。でもこの本には教科書的な知識なんて一かけらも出てこない。

    「おやじは、いつか返すという気持ちさえあれば、物を借りることは少しも悪いことではないと、いつも言っていた。未亡人はそれは盗みを体裁よく言ったにすぎない、きちんとした男の子のすべきことでないと言った。」ハックルベリイ・フィン(ハック)は、暴力親父と育ての親の未亡人との両極端の教えの間で悩む。
    しかし元黒人奴隷で、訳あってハックと川下りの旅をともにするジムは、こう言った。「未亡人の言うことにも正しい点があるし、お父っつぁんの言うことにも正しい点がある。われわれのとるべき最善の方法は、いろいろあるものの中から二つ三つ選び出し、これだけは今後借りない、と言うことだ。そのほかのものは借りても差し支えなかろうと思う。」

    読者がハックに引き込まれるのは、教科書やマニュアルといったものをハックがはなっから放り投げてるところにあると思う。筏(いかだ)の上で暴風雨に巻き込まれたり、銃弾がすぐ横をかすめ飛ぶような状況では、教科書なんてクソの役にも立たない。
    ハックのその場のひらめきが(たいていは口から出まかせなんだけど)、どんどん膨らんで、周りの人を巻き込む数々のエピソードは、例えば、ハックが聡明な女の子に出会い、同情や憐れみが、次第に思慕というか恋愛のような感情に変化し、うまく心の中で整理できないながらも、彼女のことで頭がいっぱいになって走り回ったように、どんな教科書よりも的確に“人生とは何か”“生きるうえでどんな課題が迫ってくるか”を私たちに教えてくれる。

    一番好きなエピソードは、ハックが川に流されてジムとはぐれ、やっとの思いで追いついたらジムが眠っていたので、少しからかってやれと企む話。
    しかし実はジムは、はぐれたハックを心配のあまり泣き疲れて眠っていたのだった。ジムに「ごみくずたあ、友達の顔に泥を塗って恥ずかしい思いをさせるような人間のことさ」と言われ、「謝りに行く決心がつくまで十五分かかったが、しかし、僕はやってのけた。そして、後になっても謝ったことを後悔しなかった。それ以来、ジムに性の悪い悪戯をしないし、あの時だってジムにあんな思いをさせるとわかっていたらしなかったであろう。」とハックは思った。
    誰もが経験する、楽しさと苦しさが複雑に絡まったような人生を、ハックは種明かしのようにさらっとほどき、私たちに見せてくれる。

    この本を電車で読んでいて、何回降りるのを忘れて乗り過ごしたか。それほど夢中になれた。
    (2011/9/25)

  • トムの冒険は夢見がちな子供の常識・形式・先人に
    とらわれた、ごっこ遊びだが、ハックの冒険は
    とても人間的で欲深く、狡い大人や矛盾を抱えた
    世の中や人として正しいとは何かを巡る冒険。
    ジムとのやり取りの一部は当時の社会の限界に
    とらわれる面もあるが、さまざまな人と出会い、
    自分の行いや他人の行いに対する自分を振り返り
    自分は卑しい人間であるとか、恥ずかしいとか
    悶えているあたりが、子供より大人向き。
    トムが再登場してからは、トム色濃いめ。

  • 訳者は赤毛のアンの名訳で有名な村岡花子氏。赤毛のアンでは瑞々しく繊細な自然描写を描き出した氏であるが、このハックの冒険における自然描写ではどうにも装飾過多に走り過ぎた嫌いがあり、少なくとも私にとって読んでいて何度も鼻に付く場面があった。原書とも読み合わせたが、訳者の丁寧に自然表現を翻訳して描写する性質が、本書においては執拗な過剰描写になってしまった感がある。駄訳であると言いたい訳では決して無いが、個人的にハックの冒険に関しては、本書よりも岩波文庫の西田実氏の翻訳をお勧めしたい。

  • レポートの課題のために読んだ。個人的には冒険物ではあったが難しさは感じた。アメリカの奴隷制度や、虐待など、アメリカのリアルな社会を冒険のストーリーに載せている。もう少しアメリカの歴史や、宗教を勉強した方が面白かったかも。

  • ハックフィン少年と黒人のジム爺さんの冒険譚。
    あとがきにこの小説は子供のための読み物ではなく「大人に、大人のみに読まれるべきだ」とあるが、ハックの正直で素直な、無垢で自由な精神は大人になっても老人になっても、いやむしろ大人や老人にとってこそ大切だと、おっさんになった今はしみじみと思う。
    ハックのろくでなし親父のセリフ「返すつもりで借りたものは盗んだことにはならない」は自分勝手で一方的な言い逃れに聞こえるが、昔自分の友人が「相手がどう思っていようとこっちが友達と思っていたらそれは友達だ」と言っていたのを思い出す。「人の良心というものは物の道理がわからず、なんでもかんでも人を責めるだけだ」も妙に心に残る。
    奴隷制度、児童虐待など今なら完全アウトな内容も多いが、こんなとんでもなく理不尽な時代をたくましく生き抜いてきた純粋な精神性はなにかと小うるさい現代でこそ眩しく光り輝いている。
    終盤トムソーヤーが突如登場し、ハックとともにジム救出に奔走するが(このあたりのドタバタは何のことやら?)ここでもトムはカリスマとして君臨。しかし、善意の人に対して悪戯や嘘を次々と繰り返す様は悪魔的なものさえ感じて少々閉口するな~。最後は当然大団円になるんだが。

  • 私は断然、トムよりハックが好き。

  • 「トムとの冒険で大金持になった浮浪児ハックは、未亡人の家に引きとられて教育を受けることになった。固苦しい束縛の毎日――。
    飲んだくれの父親が金をせびりに現われるに及んで、逃亡奴隷の黒人ジムとハックの脱出行が始まった。筏でミシシッピー川を下る二人を待ち受けるのは、大暴風雨、死体を載せた難破船、詐欺師たち……。
    現代アメリカ文学の源泉とまで言われる作品。」

  • 記録

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著者プロフィール

Mark Twain 1835年-1910年.
邦訳された自伝に、
時系列順に並べられている
『マーク・トウェイン自伝 〈上・下〉 ちくま文庫 』
(マーク トウェイン 著、勝浦吉雄 訳、筑摩書房、1989年)
や、トウェインの意図どおり、執筆順に配置され、
自伝のために書かれた全ての原稿が収録されている
『マーク・トウェイン 完全なる自伝 Volume 1〜3 』
(マーク トウェイン 著、
カリフォルニア大学マークトウェインプロジェクト 編、
和栗了・山本祐子 訳、[Vo.2]渡邊眞理子 訳、
[Vo.1]市川博彬、永原誠、浜本隆三 訳、
柏書房、2013年、2015年、2018年)などがある。



「2020年 『〈連載版〉マーク・トウェイン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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