アンの娘リラ 赤毛のアン・シリーズ 10 (新潮文庫)

  • 新潮社
4.04
  • (70)
  • (46)
  • (49)
  • (3)
  • (3)
本棚登録 : 716
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102113509

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最初に「リラ」を読んだのは、もう40年ほど前。確か中学生の時である。「アン」シリーズが好きで、シリーズ一冊目の「赤毛のアン」から十冊目の「リラ」まで、何度も通してよく読んでいた。
    この新潮文庫版は、約50年前に世に出た村岡花子の翻訳に、時代に合わせて一部手直しを加えて2008年に刊行された改訂版である。

    舞台は第一次世界大戦下のカナダ。大切な人々が戦地に赴き、不安と緊張の日々が続く中で、十代のリラは、少しずつ成長していく。母アンの、のどかな青春とは色合いの違う、くらく、心沈む毎日。それでも人々は生きていかなければならない。希望やユーモアを織り交ぜながら。そして、その日々は、リラの心に深い色を加えていったようだ。
    この本を、初めて訪ねた丸善東京本店の松丸本舗の書棚で見つけた。こんな所にリラが?
    その書棚には、東日本大震災を受けて、苦しい日々をどのように生きていくか、といったテーマの本が並んでいた。被災地に住む我々は、あの日以来、逃れることのできない不安と緊張の中で生きている。それは、リラの青春の日々と重なるものだ。
    このような視点から「リラ」を見ることができるとは、新鮮な驚きだった。
    「リラ」が、「アン」シリーズのうちの一冊、という以上の価値を与えられたようで、古い馴染みの私としては、思いがけない喜びだ。
    この時代に生きる若い人たちに、共感してもらえる一冊ではないかと思う。

  • 赤毛のアンシリーズの最終巻。この10冊を読むのに、三年近くかかったように思う。

    赤毛のアンの物語なのに、最後はアンの娘であるリラの物語になっている。あまり期待していなかったが、読み進めるうちにどんどん引き込まれていった。シリーズの中で、一番好きな巻かもしれない。

    他の巻は、どちらかというとバラ色のストーリーだが、この最終巻だけは戦時色が濃く、とても暗い。そして大事な人の死にも直面し、とても悲しくなるところがある。

    そんな中でも、末っ子のリラが日々成長していく姿が素晴らしい。戦争の中で、今までの楽しい生活が一変し、大事な人をこの世から無くしてしまうといった不幸に直面する。そういった困難を乗り越える中で、初めて人は成長できるのかと思った。

    先日、東北地方太平洋沖地震が発生し、多くの人の命が奪われ、各地で深刻な被害が出ている。原発事故も近隣諸国を含めてとても危険な状態だ。こんな理不尽なことがどうして起こるのだろう?平和な日本に起こった危機的な状態。この困難を皆で乗り越えることで、一人ひとりが成長できるはず。リラのように。

  • 最初は生意気な印象だった末娘のリラの成長がすばらしい。
    シリーズの中で異色に感じる程人生のシビアな面が描かれているが、それはモンゴメリ自身が第一次世界大戦を経験したからに他ならない。それでも、アンから引き継がれた想像の世界や、希望を失わない人々に勇気づけられ、読者はシリーズを終えることになる。
    最後にこの1冊があることで、シリーズの読後感が引き締まる。

  • 赤毛のアンシリーズ最終巻。最初の巻を読みはじめてから1年くらいかかったかな。ゆっくり読んできました。
    この最終巻だけは、のんびり平和な今までとは違い、戦争のせいで全体の雰囲気が暗め。でもリラの成長とともに書かれたこの巻は私は結構好き。

  • 赤毛のアンシリーズで一番好きな巻です。

    20歳のころ読んだのが最後だから、もう一度読みたいな。

  • これまでのアンのシリーズとは一線を画したお話です。
    一冊すべてが戦争で彩られている。
    その中で青春時代を過ごさなくてはならなくなったリラちゃんのお話。
    「リラ・マイ・リラ」という愛称がマリラと通じていてどうにも切なくなりました。
    アンの物語全編にわたって言えることなんですが、生活習慣とかとらえ方とかの違いをすごく身近に感じられる物語です。

  • 2010.4
    アンがアンではなく「ブライス夫人」になってしまい、ちょっとさびしい。WWⅡほどWWⅠの記憶(知識)がなかったので、世界史の本を久しぶりにひっくり返してみる。戦争の政治的な話が多くて、少しつまらない。カナダが参戦していたことを、昔歴史で勉強した時は知らなかったっけ。

  • アンブックスのよさは「何気ない日常の中に含まれる人間たちの豊かなペーソス」だと思う。
    起きる事件といえばせいぜい自分ちの牛がお隣のキャベツ畑を荒らしてしまったとか、ケーキを持って歩いているところを見られるのは恥ずかしいことだと思い込んで、思わずケーキを川に投げ込んでしまったとか、その程度のこと。
    そんなささいな出来事に潜む小さなおかしみや悲しみなどの感情を豊かに描きだしているところが、アンブックスの一番の特色だと思う。

    でもそんなアンブックスの中で、この『アンの娘リラ』だけは「世界大戦」という大きな史実が下敷きにあるので、他のアンブックスと比べて登場人物の喜びや悲しみの質がまるで違う。
    作中でアン自身が言っている通り、同じ10代の頃のアンとリラの経験を比べると、なんという大きな差があるのかと愕然とする。

  • 最初は四苦八苦しつつでしたが、途中からは楽しく読むことが出来ました。
    リラの精神的成長と、それを見守りながら一喜一憂する家族の姿がしっかり描かれていて、とてもよかったです。
    さらにすごかったのが、風景描写。 単なる描写に留まらず、モンゴメリならではの表現がちりばめられ、主人公の心理ともきちんとリンクさせているところは、さすがです。

  • 読んだ後、暗い気持ちになった。第一次世界大戦が世界の人々に与えた暗い影響。それが重くのしかかった話だった。反戦本だと思う。

全36件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1874年カナダ、プリンス・エドワード島生まれ。1908年に最初の長篇小説『赤毛のアン』を出版。世界的ベストセラーとなる。オンタリオ州に移り住み、その地で数々の作品を執筆した。42年トロントにて逝去。

「2012年 『パットの夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

モンゴメリの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×