愛は束縛 (新潮文庫 サ 2-24)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102118245

感想・レビュー・書評

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  • 私はパリには一度も足を運んだことはないが、サガンの小説を読むとパリの匂いや景色や街並みが頭の中にイメージとして浮かび上がってくる。
    想像の中のパリは自由で、愛に溢れている街だ。
     
    しかし、愛というものはこんなにも切なく残酷で孤独なものなのだろうか。
    愛しているのに傷つけてしまいすれ違い、永遠に離れ離れになってしまう、失くしてしまった後になってあれこそが愛だったのだと気付く。
    生きていればきっとそんな経験は一度はあるのではないだろうか?

    読み終わった後に、過去に好きだった人を思い出し、懐かしみ、そして今傍にいる人を愛しく思えたらいい。

  • 「愛は束縛」
    ヴァンサンとローランスの間にあるものはまさにそれのようだった。
    一方、「愛」には違う面もあるようだった。

    朝靄に包まれた、寝ぼけまなこの心地よさみたいな冒頭から徐々に物語は滑り出していく。途中、コリオランやオディール、養父や艶やかな女性たちとのやり取りを通じて、なだらかに盛り上がりをみせていく物語。
    心地のいい流れであった。

    濃密だけど軽快で、苛立ちを覚えるものの冷静で。
    フランス語の見事な遊びを感じさせる訳でした。

    また、ヴァンサンの心理描写もローランスの心理描写も非常に的確で、どこか身に覚えのあるような記憶とつながる表現が秀逸。

    濃厚で官能的な雰囲気も、この文才ゆえだろうか。

    初サガンでした。 

  • 冒頭の、官能的な香りが読む者にまで伝わってくるような描写が素晴らしかっただけに内容にはあまり感動することができなかった。

    資産家の娘のローランスと、売れない作曲家でローランスの夫ヴァンサン。
    ローランスに養われている生活が7年間も続き、いっしょに住んでいる家でさえも自分の家だとは思えず、自由な時間がいっときもなかったと気づき始めてくる。作曲した映画の音楽が大ヒットとなり、お金持ちの仲間入りを果たしたかと思われたが印税もローランスの元に渡ってしまった。ここから逃げ出したい。でも逃げ出せない。ここから去ったところで自分にはお金も、音楽以外にできる仕事も何もない。ヴァンサンは絶えず自問自答を繰り返しているが、結局は何も打開することができずうじうじと「ローランス」の家で生活している(実家暮らしの私はこのあたりに共感した)。自由になりたくてお酒を飲んだり、買春をしたり、ギャンブルをして大金を手にするものの、その場しのぎの自由と自信では結局は何も変わらない。

    途中からヴァンサンの感情や行動の移り変わりが突拍子もないものに見えてしまい、ちぐはぐな印象を受けた。ローランスの知人でありお金持ちの人たちと晩餐をしているときも、自分は大ヒットを生み出した作曲家として権力を持つものとして認められたのだと自信にあふれたかと思いきや、テーブルの下で愛人のスカート下に手をいれたり、急に自分の印税はすべてローランスの物になったと告白して周りの人を唖然とさせたり、目まぐるしい。すべてはローランスへの復讐なのだろうかと思ったけれど、終盤ではローランスの本音が暴露され、かわいそうに思えて家を出るのをやめている。人に対しての恨みが長続きしないためか、盛り上がりに欠ける。
    最後のシーンも、あれはどういう感情で口笛を吹いたのか読み取ることができなかった。

  • サガンの24作目

  • ・原題の"la laisse"は犬のリード。

    ・ブルジョワ出身のローレンスと




    ・ぶつけたつもりで分かった気でいても、

  • 「頭はいいが、機知はない。金遣いは荒いが、気前のいい鷹揚さはない。美しいが魅力はない。献身的だがやさしさはない。機敏だが生き生きはしていない。人を羨むが自らの願望はない。彼女は、人を中傷するが憎しみは持ってない、自尊心は強いが誇りはない、親しげだがあたたかさがない。感受性は強いが傷つくことはない。彼女は子供っぽいが純真さがない、愚痴を言うがあきらめはしない、高価な服を着ているがエレガンスがない、ヒステリックだが怒りはない。彼女は率直だが恐れを知らない。そしてつまり、情熱はあるが、愛がないのだ」

  • 読み終わった後、しばらく放心してしまった。香水の匂い、雨、シェイクスピア。

  • ああ,フランス!て感じの本だった
    激しくて,でも茫漠としたものがあり華やかで悲しい。

    ローランスは愛ではなく「最悪な情熱」でもって自分に執着したのだと思いついたヴァンサンのモノローグはすごい。
    悲劇さえも悪ふざけ。

    ローランスの不器用さが切ない。
    最後の,プライドも何もかも捨てた叫びはどうしようもない雨。

    一瞬,希望が見えた中での突然の終わり。
    二人がお互いへの愛情をほんとに理解していたのは結婚まえだけだったのかも。

    とりあえず邦題が違和感。
    ネタばれにも近いし,束縛とはまた違うニュアンスな気がする。
    内容はよかったから題名も頑張ってフランスの洒脱な雰囲気をだしてほしかった。

  • 相手を思うこと、自分を大切にすること、
    意志を通すこと、自分らしくいようとすること。
    そういうことをすべて両立させるのがいかに難しいかを感じた一冊でした。

    表現にはユーモアがあり、
    読みやすくも満足できる作品でした。
    サガンは三冊目だけど、かなり好きみたいです、私。

  • 3度めにしてようやく読了。
    時代背景なのか、フランスの文化なのか、この夫婦のどの部分にもほとんど共感ができない。ストーリーを読むというより、この独特の夫婦の(特に夫の)心情をみごとに描き切った筆致に感心してしまった。訳もいいのだと思う。読んでいて、濃厚な香水の香りにおしつぶされそうになったり、ふつふつといら立ちや無力感が湧いてくるような空気。
    「愛は束縛」なのではなく「愛と見せかけた全く別のものによる束縛」。ラストシーンは意外。

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著者プロフィール

1935‐2004。フランス、カジャルク生れ。19歳の夏、デビュー小説『悲しみよこんにちは』が批評家賞を受け、一躍時代の寵児となる。『ブラームスはお好き』『夏に抱かれて』等、話題作を次々に発表した。

「2021年 『打ちのめされた心は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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