悲しみよ こんにちは (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102118283

感想・レビュー・書評

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  • 少女小説の傑作とだけあり、作品自体短いのもあるがおもしろくてすぐ読み終わった。
    著者は18歳と若くしてこの本を書いたのもあり、若さゆえの気の移ろいやすさ、「正しさ」への反発、 お勉強からの逃避、初体験など…自分は大人になってから読んでしまったが、本当の少女のときに読んだらさらに共感しわくわくしただろうと思う。主人公の境遇や考え方は全然自分と違うが。

  • 結末に対し、ひっそりとした喜び、達成感、自己憐憫を味わいうっとりしつつも、ふと湧いてくる悲しみを受け入れる主人公に自然のままの人間らしさを感じた。
    表現がとにかく巧みで、人物の発する奔放さ、甘さ、倦怠感が文字を飛び越えて肌で感じられるようだった。

    葛原妙子さんの早春のレモンの歌と通じるところがあった。

  • 原作を読んで映画うぃ鑑賞したが、セシル、アンヌ、エルザ、シリル(映画ではフィリップ)が想像通りすぎて、読者にここまで人物を描かせた若きサガンの筆力に愕然とする。

    親や教師など、身近な大人に対するリスペクトや好意、一方で、自分を滑稽に感じさせる彼らへの妬みや怒り、はたまた「大人でもこうなんだ」というある種の軽蔑が共存する感じにすごく頷ける。
    母を亡くした多感な年頃の少女が、父の異性関係の自由奔放さを受け入れ、ともに楽しめてしまうのはレアなケースだけど、だからこそ自分にとって父は心の通じ合う唯一無二の存在だし、父にとっても自分は特別な存在。この幼い親子の、2人だけの世界への執着と、セシルの無邪気な好奇心が産んだ悲劇だったのだろう。

    現実的なことを言ってしまえば、「自覚のある愚か者」レイモンが大人・父親になれてないって話だけど、「らしさ」を内面化したくない自分としては、恋愛や生き方の自由さを肯定してくれる作品だと思う。
    年と経験を重ね「大人」になるにつれ、愚かな人に対して、怒り、もしくは諦念を抱くはずだけど、博識で真面目な常識人・アンヌでさえも、レイモンに惹かれ、モノにしたいと思ってしまう。恋愛が理屈じゃないことを思い知らされる(笑)

  • なかったからこちらを本棚に入れたが、
    本当は朝吹登水子さんの訳本の方が好き

  • 悲しみ
    それは尊く美しい感情である、と冒頭で述べられている
    人々が嫌い遠ざけようとする感情になぜこのような評価を下しているのか、それは本書を読み進めていけば分かってくるだろう
    悲しみ、それは何かに熱中したり、人生を捧げるほど情熱を注いだり、そしてまた何かを愛したりして、それらを失った時にやってくる
    すなわち、悲しみという感情は自分が何かを愛した証左であるのだ
    それ故に美しい
    実際エルザは父の影響であろうがこれまで男性を愛したり、勉強などに必死になったことはなかった
    これはそんな彼女が誰かを愛し、そしてそれを失うまでの物語
    このタイトルは読み変えれば「初めての愛」である

  • 若さというみずみずしさはあるけれど、既に世を知ってしまったような無気力感が漂う作品。アンニュイで退廃的というか。

  • 悲しみや思慮深さ、後悔などを持ち合わせない陽気で楽天的な父子。「愛」を知っているのか、そうでないのか、娘の一つの策略は確かに何かを壊し、また日常に戻る。今までになかった「悲しみ」を携えて。その悲しみは何に対してなのか、誰に対してなのか、生活の何を変化させるのか。

  • 正直、私には難しすぎた。セシルの一貫性のない感情に全く共感できず、というより心寄り添える登場人物がまるでおらず、淡々と進む話をただ追うだけになってしまった。(共感できる人物なんていなくてもいいんだろうけど。)

    それでも確かに、思春期の(もはや思春期に拘らず)人間の感情は些細なことで揺れ動くものだし、節操ないのは当たり前かもしれないと思わされた。

    日本語訳が苦手でかなり敬遠していた海外文学だけど、意外にも淀みなく読めたのは嬉しい。良さは分からなかったけれど。

    ただ、好きな表現はあった。
    『よろい戸のすき間から日の光が差し込み、光のなかを、びっしり並んだ埃がのぼっていく。』

  • 夏の南仏、ヴァカンス、淡い恋…
    文章が洗練されて美しい。夏の描写や何気ない瞬間の表現が素晴らしい。かなり雰囲気が好きな作品。読みやすいしね。
    なんとなくだけど、吉本ばななのTUGUMIっぽい。
    いやむしろTUGUMIが悲しみよ、こんにちはっぽいのか。

  • 定期的に友人たちと本を持ち寄り交換する読書会を開催している。そのメンバーの1人である素敵な女性から受け取った本がこれだった。

    サガンは中学生の頃に読んだが、正直あまり好きではないという記憶のまま私の中に留まっていた。だが読み返してみてそれが一変した。フランス有閑層である彼らが経た一夏のアバンチュールは、あまりにも眩しくて儚い。

    青春時代はそれを抜けて成熟へ向かう時、ふと振り返るとその輝きが分かるものだと誰かが言った。中学生の私は青春真っ只中にいて、この本が描く人生の酸いなど何も分かっていなかった。あれから時を経て成熟には悲しみが伴うことを知った私はきっと大人になったのだ。

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著者プロフィール

1935‐2004。フランス、カジャルク生れ。19歳の夏、デビュー小説『悲しみよこんにちは』が批評家賞を受け、一躍時代の寵児となる。『ブラームスはお好き』『夏に抱かれて』等、話題作を次々に発表した。

「2021年 『打ちのめされた心は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フランソワーズ・サガンの作品

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