水いらず (新潮文庫)

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著者 : サルトル
制作 : 伊吹 武彦  窪田 啓作  白井 浩司  中村 真一郎 
  • 新潮社 (1971年1月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102120019

水いらず (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 以前読んだのは遥か昔なので全く覚えてない、ただつまんない小説やなあ、という印象は覚えてる。なので躊躇いながらの再読でしたがなんとこれが面白かった。『嘔吐』に至る前の短編5作品を収録、試作品的な色合いは否めないが、なにせサルトルは難しいので、きゃつの試行錯誤を一緒に辿ってやるくらいの方がわかりやすい。わーっこれ大島弓子みたい、大江じゃん、ポーじゃん、ドスっぽくね?と実存主義はさておきキャーキャーはしゃぎながら存分楽しみました。実際はどれもどよ~んと重い圧迫感ある内容ですがね。節操ない本読みに成長しました。

    ていうか、私みたいな頭の悪い人間がサルトル読むにはミーハー性によるしかないのですよ。サルトルという名前の響きだけでいかれちまうような得体のしれない魅力に乗じるしか。『うたかたの日々』のシックみたいな心境で。あそこまで偏執的にはなれませんけどな。

  • 短編集。
    壁が良い。
    唐突に始まる不条理な世界。
    残酷な現実がそこにある感じが良い。

    あとは、正直よくわかりませんでした。

  • ストーリー的なところとか、細かいところは習作感があってプロっぽくないけど、この不穏な空気はなんだろう。ある意味嘔吐よりエネルギッシュでこういう小説好き。

  • 水いらず
    性がテーマになっている。登場人物が各々に、本音とは真逆の言動をしているように感じられ、ある意味では滑稽で、面白かった。


    「数時間後には死ぬ」という漠然とした状況設定だが、未知ゆえの興味が湧き面白かった。感覚を確かに失いながらも、やたらと働く思考の様子が描かれている。

    一指導者の幼少時代
    家庭に抱くコンプレックスから始まり、「自分とは何者か」という錯乱の中過ごす少年期の、心の変化の話。
    自分の身の置き場を二転三転しながら、どこにいてもしっくりこない感覚に共感も覚える。


    全体的にかなり軸がしっかりしていて、説得力のあるものに思えた。実存主義という全体背景の中に無意識に自分を溶け込ませながら、寂しさと心強さを、同時に得られた気がした。

  • 最近やっと「嘔吐」を読んだので久々の再読。やっぱりこっちのほうがわかりやすい。確かに随所に実存主義的な要素はちりばめられているけれど、単純に小説として面白く読めるのがいい。

    不能の夫と、浮気しているその妻、妻の愛人、おせっかいな友人、どいつもこいつも面倒くさいー!って感じの「水いらず」、なんらかの病で狂人になってゆく夫にそれでも寄り添う妻の純愛というよりこちらも病んでる感満載の「部屋」あたりはある意味恋愛もの。

    スペイン内戦中に敵の捕虜になった男たちの死刑前夜の心理描写が秀逸な「壁」は小説としては一番の完成度。

    「エロストラート」は読んでてとても不快だった。小説としてではなく、現代日本に、あまりにこのタイプの低劣な犯罪者が多いから。時代や国が違っても、こういう人間はいなくならないんだなと。

    「一指導者の幼年時代」は長編ってほどではないけれどそこそこのボリューム。天使のように愛らしかった少年が悩んだり屈折したりしながら自己肯定にいたるまでの成長譚だけれど、一見前向きなようで実はものすごく皮肉。あと部分的にBL(笑)

    ※収録作品
    「水いらず」「壁」「部屋」「エロストラート」「一指導者の幼年時代」

  • 「一指導者の幼年時代」は自分の存在を自分の内奥から発見するのではなく他人の目を借りることで見出す過程の話だが、心理描写を詳しくして自分の存在の根拠を見つけられない苦悩を描き出すという感じではなく駆け足で物語が終わってしまった。それでも面白かったけど。

  • サルトルの短編集。彼の哲学書に挫折した方は、本書から入ってみては?
    『嘔吐』もそうだが、サルトルの「いわんとしていること」を、「理解」というより「体感」できるのではないだろうか。

  • サルトルということで。
    哲学の授業でもどうもしっくりこない。
    どういうわけか「私」がこの肉体に宿り、今・ここで存在しているということは、大いに驚くべきことではある。だが、それを気持ち悪いもののように描くことがどうもよくわからない。気持ち悪いとみている存在はなんなのか。また、存在の彼方にあるものを感じるこの存在は何か。何かを見つめる限り、存在からは離れられない。無が存在すると言っているのと同じように感じる。
    収録されている作品ひとつひとつの中には、興味深い言葉が散りばめられているが、どうも作品全体としては、対話性がないような…描き出す対象がわざとらしいというか…あとがきには「乾ききった」とあったが、とても冷徹なまなざしで存在を見ているように思えた。
    同じ極限状態を扱っていても、カミュの方が熱く、心の琴線に触れるものがあったため、どうも読んでいて嫌悪感を覚えてしまった。

  • 以前東京に住んでいる時、近くの古本屋で彼の哲学書が安価で売られている光景をよく目にした。サルトルに代表される一時期は隆盛を極めた実存主義も、止まり木で囀る鳥の声ほどに、いまやすっかりなりをひそめてしまった。以前、拾い読みした「性」に関する分析はとても面白かったが、いま彼の小説を読んでみても、なにか新しい知見を得られるような驚きはなかった。読んでよかったと思ったのは、「壁」と「一指導者の幼年時代」の2つの作品ぐらいだろうか。

  • 初サルトル。
    剥き出しな印象。
    「私の盲腸を瓶にいれてこの人に見せたら、まるで見当もつかないだろう。‥してみると、ひとでなんかは人間よりもっと愛し合っているにちがいない」
    ボヌール、ボヌール。

  • あちこちに三島由紀夫が見えてきた。三島に与えた影響の大きさを感じた。

  • また読みたくなりそうだ。

  • 難しい。けど読み始めると勢いづく。

  • サルトルといえば実存主義哲学だけど、そういうのぜんぜん知らなくてもいけます。本の裏には脅し文句みたいに「実存主義」という言葉が並んでいますが、必ずしもそういう思想と照らし合わせる必要はないと思うし、肩ひじの張るものでもないです。まあ存在と無は今度時間があったら読むとして…
    この中にある「部屋」を読んで、セカイ系は危ないなとなぜか思いました。

  • 抽象画を観てるみたいに、感覚的にわかる話が多いのが印象的。
    さすが哲学者。
    感覚を刺激されます。

  • しっかり読みこんだのは「水いらず」だけ。
    あとは事情で駆け足。
    再読必須の予定。

    話の面白さとか、そういうものではない。
    難解な言葉は特に無く、ただよくある男女のもめ事が
    一人称と三人称を混合した視点で描かれているだけ。
    だがそれは文章以外に、決して表現できない世界だった。

    その表現の奥深くに存在する様々な人間の確かさ。
    確かでありながら、多くの不可思議と矛盾。
    それらのぐちゃぐちゃと混乱した存在を否定することは
    生きて存在している私たちには不可能だ。
    これはもう、丸ごとの人間そのもの。つまり実存。
    そして物語の結末では「人間は自由という刑に処せられている」という
    有名なサルトルの思想を彷彿とさせられた。

    サルトルの描いた小さな世界のなかに、
    ぎゅうっと詰め込まれたサルトルの哲学、思想、叫び、苦しみ、諦観・・・

    それは文にのみ許される言葉による芸術だ。

    ・・・ということで「水いらず」の感想でした。

  • サルトルの短編集。

    一作品ごとの完成度は期待以上のものではなかったけれど、作品全体を通しての人間存在の追求は、やはり考えさせられるものがあります。
    「存在する」という不完全さから目を背けることができない作家だと感じました。

    彼の長編小説は読んだことがないけれど、読まなければと思わせてくれる一冊でした。

  • (1971.02.14読了)(1971.01.31購入)
    1964年のノーベル文学賞を辞退。
    (「BOOK」データベースより)
    性の問題をはなはだ不気味な粘液的なものとして描いて、実存主義文学の出発点に位する表題作、スペイン内乱を舞台に実存哲学のいわゆる限界状況を捉えた『壁』、実存を真正面から眺めようとしない人々の悲喜劇をテーマにした『部屋』、犯罪による人間的条件の拒否を扱った『エロストラート』、無限の可能性を秘めて生れた人間の宿命を描いた『一指導者の幼年時代』を収録。

  •  実存主義を打ち立てた哲学者が書いただけあって、ここに収録された五篇はどれも、人物の内面描写が中心となっている。とはいえ、あくまでも小説なので描写は観念的になりすぎない。実存的な感覚とはどういったものかをめぐる、肉感的な表現が頻出する。

     なかでも、物の生々しさへの不快感や恐怖感、特に人間の肉体への違和感は全篇に共通して流れている。登場人物たちは、たとえばセックスへの不快感にとらわれ、「なぜ人間には体があるんだろう」と感じるリュリュ(「水いらず」)や、自分の考えや行いとは無関係に存在しつづける自分の体にとまどう思春期のリュシアン(「一指導者の幼年時代」)のように、自分ないし他人の肉体を異物として感じる。
     さらに彼らが異‐物としての身体を抱えている以上、彼らのあいだでいとなまれる性愛が、人格の交流としての「愛」よりも、性器と性器(物と物)の奇妙な接触としての「性」に重きを置いて立ち現れるというのも頷ける。
     また、狂気/正常の襞が重層的に織りなされるにつれ、もはやだれが本当の狂気なのかが分からなくなる「部屋」や、自分で自分を犯罪へと駆り立てていく男を描いた「エロストラート」に見られるように、人間精神の暗黒面を剔抉した場面も多い。
     そして、実存の肉体性や、健康からの逸脱といったこれらの感覚は、後年の『嘔吐』のロカンタンへと結晶していくことになる。

     五篇のうちでは、死を目前にしてみずからの実存の有限性に直面する囚人を描いた「壁」に、死への凝視の真摯さという点で特に好感を持った。「きれいに死にたい」という、その願いさえ叶えられそびれた人間はその後、どのように生き延びていったのだろうか。

  • カミュの著書と対比してみてみるとまたおもしろい。
    『異邦人』の主人公の虚無性と本作の短編の一つである『壁』の中に描かれた人物達の醜い生への執着性とではまるで実存の在り方が変わってくる。彼らは互いを論敵として定め様々な論争を繰り広げてきたようだが、こういった文学の一端に隠れ伏すような形で互いの思想的断片が垣間見られるという点で連関的に評価したい。

  • この本やったかな?
    死刑執行前の描写が身に迫る。

  • 「部屋」のピエールとエヴが好き。

  • 普通に小説としても楽しめる。

  • 一指導者の幼年時代、読むべし。
    サルトル、かっこいい。
    うちふるえる。
    珍しく二回読んだ。
    それというのもインドの空港で30時間過ごさねばならなかったのでこれが無かったら孤独死していたと思う。

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性の問題をはなはだ不気味な粘液的なものとして描いて、実存主義文学の出発点に位する表題作、スペイン内乱を舞台に実存哲学のいわゆる限界状況を捉えた『壁』、実存を真正面から眺めようとしない人々の悲喜劇をテーマにした『部屋』、犯罪による人間的条件の拒否を扱った『エロストラート』、無限の可能性を秘めて生れた人間の宿命を描いた『一指導者の幼年時代』を収録。

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