人間の土地 (新潮文庫)

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制作 : 堀口 大学 
  • 新潮社 (1955年4月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102122020

人間の土地 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 久々のサンテックス。学生の時に好きだった感覚が蘇った。
    ユーロになる前のフランスの50フラン紙幣はサンテックスと星の王子様。繊細な色彩で、象を飲み込むウワバミや、サンテックスの飛行機と飛行経路も書かれたかなり凝ったもの。

    表紙の絵と後書きは宮崎駿。戦闘機乗りの資料はかなり持っているようですね。

    サンテックスは結局、「平均寿命は2週間」と言われる戦闘機パイロットになり偵察飛行中に行方不明、その後正式に墜落機が見つかり死が確認されました。

    ★★★
    郵便飛行機の操縦士の時、欧州から南米へ砂漠や海を越えて空路の旅での肉体および精神的体験の記録。
    飛行機乗りの命を支える小さな印。着陸を台無しにする草原の小さな川、一軒だけ建っている農家から漏れる灯り。
    水の無い砂漠の民族の暮らしと生活、彼らは欧州の森で滝の終わりを見たがり、無尽蔵な水にフランスの神の気前の良さを感じる。
    砂漠では危険な不帰順族もいる。不時着した飛行士を殺すこともあるし、親しくもてなすこともある。
    10分通信が途絶えると行方不明を示すほどの危険な空路、ある仲間はそのまま姿を消し、ある仲間は不時着地から数日間歩き続けて帰ってきた。

    サンテックス自身も危険な飛行を行い、ある時は砂漠にとらえられた。いきなりまっただ中から砂漠に乗り込んだ、まるでトリモチに捕まったように。
    仲間の操縦士と3日間歩き続けて救出するまでの日々、砂漠の生物に見た生命の知恵、水や救助の幻。帰れないと思い泣くのは自分のためではない、待っていてくれる人たちのため、彼らの自分を見る複数の目。それを思うと堪らない。向こうで彼らが助けを求めている。
    【「ぼくが泣いているのは自分の事なんかじゃないよ」そうだ、そうなのだ、耐え難いのは実はこれだ。待っていてくれる、あの数々の目が見えるたび、僕は火傷のような痛さを感じる。すぐさま起き上がってまっしぐらに走り出したい衝動に駆られる。彼方で人々が助けてくれと叫んでいるのだ、人々が遭難しかけているのだ。
    これは実に変わった役割の転倒ではあるが、僕は普段からこう考えている。
     (…中略…)
    なぜぼくらの焚火が、ぼくらの叫びを世界の果てまで伝えてくれないのか?我慢しろ…ぼくらが駆けつけてやる!…ぼくらのほうから駆けつけてやる!ぼくらこそは救援隊だ!】(P162~)

    ★★★
    嵐に会った仲間の場面が圧巻でした。
    【そこには竜巻が幾つとなく集まって突っ立っていた。一見それらは寺院の黒い円柱のように不動のもののように見えた。それら竜巻の円柱は、先端に膨らみを見せて、暗く低い暴風雨の空を支えていた。そのくせ、空の隙間からは、光の裾が落ちてきて、皓皓たる満月がそれら円柱の間から、冷たい海の敷石の上に照り渡っていた、そしてメルモスはこれら無人の廃墟の間を横切って、光の瀬戸から瀬戸へとはすかいに海がたけり狂いつつ昇天しているに相違ない巨大な竜巻の円柱を回避しながら、自分の道を飛び続けた。月光の滝津瀬に沿うて、前後四時間の飛行の後、彼はようやくその竜巻の寺院の出口へ出ることができた。しかもsの光景が如何にも圧倒的なものだったので、黒鳴戸(ボトオノアール)から解放されたときになって初めてメルモスは気づいた。自分が恐怖感は持たずにしまったことに】(P25~)
    この描写は、嵐に会った友人のメルモスの話を書いたものだが、サンテックスに語ったメルモスも、書いたサンテックスも情緒が深いというか飛行機乗りは危険な中に美しさを見つけてしまうものなのか。
    この場面はまさに宮崎駿が映像化したくてうずうずしてそうだ(笑)

  • フランス文学屈指の名作である。
    多くの人が堀口先生の訳を難解と感じ挫折されているようだが、私はとても正しく美しい訳だと感じた。この訳で内容が理解出来ないのならば、フランス語で読むか、或いは理解出来るようになった時にもう一度読むべきだろう。
    空について、砂漠について、土地について、人間について――飛行士の生き方が、美学がこのたった一冊に凝縮されている。
    無人島や砂漠に放り出されて、けれども一冊だけ本を持っていけるならば、私は本書を選びたい。

  • Terre des Hommes(1939年、仏)。
    ともすれば、エゴイズムを個性の発露として美化しがちな文学の世界で、この作者は稀に見る高邁な精神の持ち主だったようだ。空や砂漠という過酷な自然と日々対峙していると、本質的なものを見抜く感覚が鋭敏になるのかもしれない。不要なものは自ずと削ぎ落とされるのだろう。一世紀近くたった今でもなお、色褪せることなく、むしろ一層の現実味を帯びて胸に迫ってくる名言の数々。人生の道標たりえる一冊だと思っている。

  • 無人島に1冊だけもっていくとしたら、
    刑務所に差し入れてもらうとしたら、
    死ぬ前に1冊だけ読めるとしたら、この本にします。

  • 人間についての、机上ではない考察。

    その土地、経験、職業が人生観や人間観、もっと大きく捉えると哲学というものに、いかに大きな影響を与えるか、あるいはそれらこそが哲学の土台になるものではないかと思う。

    日本人は自然と対決するというよりは、自然と寄り添い、折り合いをつけていくという思想になっていると思うが、それはたぶん、この国の地理や気候のせいだ。何人であっても、長年この土地で代々暮らしてくればそういう思想になると思う。同様に、砂漠などの厳しい自然に対峙しなければならない環境では、自ずとこの本に書かれているような人間観になるだろう。

    哲学は、それぞれの人が自らの経験に基づいて構築するものだ。だから皆、固有の哲学を持つ。それでいい。

  • 辛く悲しいことがあると僕は『人間の土地』を読む。

    そして、雪山で遭難し生還したギヨメの話をゆっくりと噛み締める。

    読み終えると、暖かい太陽の下でのんびり昼寝をする。

    そして僕はまた毎日へと戻る。

  • 星の王子様で有名な著者ですが、かたや飛行機のパイロットでこんな作品を残してるとは知りませんでした。無知な自分が恥ずかしい…。


    なかなか一回読んだだけでは彼の思想を読みとくのは難しかったですが、読み終わるともう一度読みたくなるような不思議な感覚を持ってます。


    どんな環境であれ、自分の役割を認識したとき初めてその人は幸福になりうる。というところはまさにそうだなぁと。自分の役割は何なんだろう?と考えさせられます。

  • 「人間関係の贅沢…」という本作の名言が、伊坂幸太郎の「砂漠」に引用されるなどあって、一人歩きしているが、本作を読んで初めてその意味の深さを知ることになる。

    「星の王子さま」を初めて読んだときの、心がじんわりする感じを更に進めた、サン・テグジュペリの死生観や哲学に触れることによる興奮の大きさに自分でも驚く。

    それから、宮崎駿の解説も秀逸。

    今では当たり前の移動手段・郵送手段となった飛行機、これを造ったことで手に入れたものと、失ったもの、どちらが多いか真剣に考えてしまう。

    人類にとって画期的な発明や創造は、一見して利便性を高める有用なものに思えるけど、その実、人類自身を苦しめてしまいかねない諸刃の剣であることを痛感させられる。

  • 感想を書くには難しい部分が多いです。
    でも、僚友ギヨメが雪山で遭難したときのエピソードや、砂漠で幻覚を見るエピソードなどが印象に残っています。
    わたしは夜間飛行の
    「ロビノーくん、人生には解決法なんかないのだよ。人生にあるのは、前進中の力だけなんだ」
    という一文が好きなのですが、思うにここでは「前進する力」について書こうとしていたのではないでしょうか。

  • 私的、最高傑作の文学である。
    もう二度とこの様な本を書く人間は現れないだろうと思うと、悲しくなる。

    星の王子さまの解説のような一冊。
    しかし、解説にとどまらず、より深く掘り下げ、その全てはひとつのところに通じている。
    彼らしく、潤いのある夢のように美しい文章が深く沁みるように続く。

    彼ほど美しく夢想の中に居るような体験をさせてくれる作家はひとりもいない。

    人の本然とは? 人間とは?

    を突き詰めた一冊であり、サン・テグジュペリの哲学を感じる一冊。

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