ジャン・クリストフ 3 (新潮文庫 ロ 2-3)

  • 新潮社
3.36
  • (2)
  • (1)
  • (11)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 42
感想 : 0
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (611ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102128039

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 恋愛!それが自己献身の場合には、人間世界の中で最も神聖なものになる。だが、それが幸福あさりの場合には、最も愚劣で欺瞞的なものになる……。

    「アントワネット」の章は、クリストフが探していた、あの家庭教師の女性の、生い立ちから語られるスピンオフ的な物語。あまりにドラマチックなあのすれ違いの裏に、これほどの事情があったことに驚く。ジャナン姉弟をみまった不幸に胸がつまり、壮絶な人生に息を呑んだ。

    「家の中」の章では、ようやく邂逅をはたした真の友・オリヴィエとアパートの住人たちとの交流、戦争の危機、成功の兆しなどを越えて、クリストフは個人や民族・国家を超えたより大きな生命の世界へ魂を広げていく。次の章でわかるように、一緒に暮らすクリストフとオリヴィエには男色の気はない。であるが故に、あまりにも濃密で美しい友愛に感動を覚えた。

    「女友達」の章では、いくつかの恋愛模様が描かれるが、いずれもヤキモキする展開。特にオリヴィエの恋愛の描写は痛切だ。男女が恋に落ちて絶頂期に至り、そのあと徐々に盛り下がっていく流れが克明に描かれており、利己的な愛情が行き着く絶望感がすさまじい。そして伏線の張られていたあの人物が登場したとたん、さらにどん底へ突き落とされたのにはまいった。しかし、だからこそ、彼らは真実の愛にたどり着いた……ラストの読後感はまさに圧巻のひとこと。この一冊だけで映画を何本も見たような密度・充実感だ。

    冒頭にあげた抜粋だけではなく、多くの名文が目を引いたので、メモを残しながら読んだ。恋愛ではなく姉弟愛だったが、アントワネットの献身こそ神聖なるものであろう。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1866年、フランスの中部クラムシーに生まれ、1944年に没する。作家、音楽史家。第一次世界大戦中は反戦論を唱え、第二次世界大戦中も反ファシズムをアピールした。文学や芸術の領域で活動するだけでなく、現代社会の不正と戦い、人権擁護と自由を獲得するために政治的・社会的論争を起こし行動した。1915年、ノーベル文学賞受賞。主な作品に、大河小説『ジャン・クリストフ』、『魅せられたる魂』をはじめ、『ベートーヴェンの生涯』や『戦いを超えて』、『インド研究』などがあり、そのほか、小説、戯曲、伝記、自伝、評論、日記、書簡などの膨大な著作がある。

「2023年 『ジャン・クリストフ物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ロマン・ロランの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヘミングウェイ
ウィリアム シェ...
ドストエフスキー
ドストエフスキー
ウィリアム・ゴー...
ドストエフスキー
宮部みゆき
遠藤 周作
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×