人間の絆(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (660ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102130254

感想・レビュー・書評

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  • モームの自伝的長編小説。
    1915年に書かれているので100年経っている。
    後年書かれた『月と6ペンス』が大ヒットしたおかげで、『人間の絆』も読まれるようになったらしい。ベストセラー作家というとどうしても村上春樹と比較してしまう。両者とも読みやすく面白い本を書くが、ノーベル賞から距離を置かれるなど共通点もある。

    肝心の小説に話を移す。
    主人公フィリップ・ケアリが両親を失い叔父夫妻の養子になるところから物語は始まる。神学校に入学して、ドイツに語学留学に行ったりロンドンで会計士になろうとしたり、やっぱりやめてパリで画家を目指したり、そしてロンドンに戻って医師になるというお話。上下巻合わせて1300ページあるので、かなりボリュームがある。行く先々でたくさんの人物が登場する。

    友人たちとの出会いと別れや、恋愛に焦点が当てられている。けっこう衒学的で、その当時のロンドンやパリでの暮らしや、芸術についての考えや身の立て方、果ては紳士とは?などいろいろと世情を垣間見れる。

    上巻で僕が気に入ったのは実家やキングススクールという神学校で過ごした時期の話だ。主人公が高校生になるくらいまでの話。主人公フィリップは先天性内反足という障害を持っていて、それが為にいじめられるなど鬱々とした毎日を過ごす。このあたりでは感情がほとばしるような筆致に圧倒された。

    青春期によくある迷いといえばその通りだが、主人公フィリップは変遷の多い人物だ。あれになると言ったらやっぱりやめる。次はこれを目指すといったように。息子の節操のなさに呆れながらも愛し続けるケアリの叔父さんと叔母さん、立派な人物で頭が下がる。全体を通して感情の機微、人生の上がり下がりが上手く描かれている。なかでも人物の描写はまるで優れた絵画を思わせるように情報に富んでいて、厭きることがない。

    唯一残念だったのは、主人公フィリップが小説家にはならないことだ。モームの口から小説家になるとはどういうことか語られたとするなら、きっと面白い話になっただろうからだ。

  • こんな小さいけど、素敵な作品があるんだな、と何だか幸せな気持ちになりました。

    私は"Lデパードとアリエット愛の物語"が、一番好きです。
    お父さんも亡くなったぢろうに、会いに行けばいいのにー、とか思うけど、そういう問題では無いんだろうな。

    愛の凄さでしょうか。
    私には無理だな。

    何とも言えない、切なくて温かい気持ちになりました。

  • 人間の本性に対する心理描写だけで面白く読めてしまいます。ストーリーテラーたるモームの技巧ここでも発揮。翻訳は、精細な原文分析による達意の名文を味読できる中野好夫さんが好みですが、工夫を凝らした中庸が達成されており、シンプルで読みやすい。

  • モームの「自伝的」長編,ということらしい.
    青年期の主人公の心の迷い,移り気と持続力のなさ,女性との関係,過去の自分を振返ったときの恥ずかしさ,親代わりに育ててくれた叔父・叔母へ横柄な態度など,読んでいるこちらが身につまされて恥ずかしくなる.
    下巻に続く.

  • 古典小説なのに、
    まるで現代の話のように感じる作品というのがたまにあって、
    これはまさしくそんな小説
    現代に置き換えて場面を想像することができるから
    とても読みやすい


    とりたてて何かが起こる小説ではないのに
    不思議と惹き込まれる
    地味なのに魅力的。


    イギリス文学らしいということかな?
    小説を読むということは必ずしも刺激だけを求めるわけではないのだ。

  • 人生の書にしたい。

  • 久しぶりに、自分が物語に入っている感じになった、主人公とそこまで共通点があるわけでは無いのに。

著者プロフィール

モーム W. Somerset Maugham
20世紀を代表するイギリス人作家のひとり(1874-1965)。
フランスのパリに生まれる。幼くして孤児となり、イギリスの叔父のもとに育つ。
16歳でドイツのハイデルベルク大学に遊学、その後、ロンドンの聖トマス付属医学校で学ぶ。第1次世界大戦では、軍医、諜報部員として従軍。
『人間の絆』(上下)『月と六ペンス』『雨』『赤毛』ほか多数の優れた作品をのこした。

「2013年 『征服されざる者 THE UNCONQUERED / サナトリウム SANATORIUM 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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