- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102142035
感想・レビュー・書評
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ある機会のために選書をしなければいけないのと、このたび改訳が出たということで手に取った。そういえば読んだこともない、“The Postman Always Rings Twice”。カバーデザインは映画版のジェシカ・ラングっぽいのかな。
あらすじとしてざっくり知っていたとおりのシンプルなストーリー展開で、「これでいいのか」と思ったくらい、王道の夫殺し事件である。流れものの男と、田舎の食堂の美人妻。夫がじゃまだ、何とかならないものか…と二人が企てる。絵に描いたような未遂と成功、陪審の評決…と、前半はありがちな流れで、刺激がないわけではないけれど、犯罪小説ではほぼテンプレート通りの展開である(出版年があとに記すとおりなので、ひょっとしたらこれがテンプレートとして後に流布するのかもしれないけど)。そこまで読んで正直なところ、ちょっと飽きて「もういいや」となりかけたのだが、男の評決が下ったあとの展開が、お互いが仕組んだようで仕組んでいない食い違いを見せ、そこに素直なひねり(変な言いかただけど、こうとしか言いようがない)があって、がぜん面白く読めた。帯によれば映画化が7回だそうである。分量と展開のコンパクトさが映像に最適なのだろう。「名作」というより「定番」の印象を強く持った。
奥付けを読んで、1931年の出版と知って驚いた。コーラの、「美貌を引っ提げてハリウッドへ乗り込もうとしたが、トーキー映画の隆盛で、潰しがきかなくてダメだった」という背景をアレンジすれば、1980年代くらいまでのアメリカ中西部ならフツーに成立しそうなドラマである。調べてみたところ、1927年に最初のトーキー映画が作られているし、1939年にはカラー+トーキーの大作『風とともに去りぬ』が公開されている。わずか12年でここまでくるのか…と、コーラの失敗よりもコーラの周りの時代の流れの早さに驚いてしまった。 -
何回も映画化された作品だが(私が見たのはルキノ・ヴィスコンティ版)なぜ映画化に向いているのかわかる気もする。
全編主人公のモノローグなこともあり、戯曲形式で発表した方がよかったような気もする。 -
こちらの作品は何度も映画化された有名な作品。
有名だが、映画も本も今まで手に取ったこともなかった。
その理由は
エロエロなんでしょ
という先入観。
タイトルにエロ要素は全くないにもかかわらず、わたしは本書をエロ作品だとずっと思っていた。
何故なのか。思い返してみるけれど、よくわからない。
かすかに想像できることとして、不倫があって殺人を犯すらしいと何かで知って、不倫ってなんなの、汚らわしいとなってエロ認定したのじゃないかと思う。
なんて純粋なわたし。
大人になってそれなりに汚れたわたしは、本屋さんで本書を見かけたときに特に躊躇することなく手に取った。
適度に汚れると読む本の幅が拡がる。メリット大きい。
物語はとても簡単。
流れ者のフランクは、たまたま入った食堂でギリシャ人の男とその妻に出会う。
ギリシャ人に誘われるまま食堂で働くうちに妻であるコーラと関係を持つようになる。
ギリシャ人が邪魔になったふたりは、深く考えることなく殺害を計画する。
一度は失敗するものの、二度めには成功する。しかしすぐに容疑をかけられてしまう。
こうはじまって、特になんということもなく物語が進んでいく。
計画が甘いので当たり前に容疑がかけられて、別々に取り調べを受けたらそりゃそうなるといった展開をし、そうなったらその後、そして結果も想像でき、ほぼ想像した通りに終わる。いや寧ろ、わたしの想像のほうがもっと悲惨だったかもしれない。
でも、くだらない一冊という感じはなかった。
文章が良いのか、この身勝手な理由でひとを殺すフランクとコーラにも嫌悪感はそれほど感じない。特にコーラは、人妻の不倫から連想されるお色気ムンムンの思慮の浅い愚かな女というよりは、小さな夢を追い求めるある意味では真摯な女性だった。
エロエロな文章も殆どない。映画は観ていないので何とも言えないけれど、そこが中心ではないので終始エロエロということはないと思う。
読んでみて解けた誤解だった。
この本で物語を知らないわたしは、いつ郵便屋さん出てくるんだとずっと思っていた。読む前は人妻と郵便屋さんとの不倫で、ふたりの合図がベルを二度鳴らすことだと思っていた。
結論から言うと、郵便屋さんは最後まで出てこない。
郵便配達がないので、ベルも一度も鳴らない。
それじゃあこのタイトルはなんなんだとなるが、この疑問は巻末の訳者あとがきを読めば解決する。
物語と関係ないタイトルではあるけれど、このタイトルにはとても魅力があると思う。
響きもリズムもいいし、印象に残る。
それに、作者のエピソードと作中のフランクの気持ちにどこか通じ合うものもあって、物語と関係がないようでいて仄かに関係している。そこが奥ゆかしいというか。
ありきたりな、愚かなふたりの物語ではあるが、最後まで読ませる魅力がタイトルだけでなくある作品だった。 -
題名だけは知っていたが、一度も読んだことのない本の一つ。神谷町のTSUTAYAで偶然目についたので購入。
これほどまでに、題名とストーリーの関連性が無い本も珍しい。映画の影響か、かなりセクシュアルな描写が多いものと思っていた。文庫の表紙もそういう雰囲気を持った女性の絵で、電車の中で読むには多少勇気がいる。
実際のところ、そういう描写がない訳ではないが、それを売りにしているものでもない。2度目の「事故」が起こってからからのスピード感と、不意を突かれる展開に引き込まれてしまうと、もう最後まで一直線。
6回目の邦訳とある。読みにくい訳でもない。しかし、なんとなくしっくりいかないというか、いかにも翻訳本を読んでると感じてしまう所が残念かな。。。。(204頁のコーラのセリフも代名詞が誰を指しているのかわからない) -
今から80年前、第二次世界大戦に世界が突入する前の好景気から一転経済不安が広がった頃、禁酒法が撤廃された直後の作品。
アメリカンマフィアを気取ったチンピラの主人公フランクが定食屋の女房コーラを引っ掛けるところから物語が始まる。
心情表現の少ないあっさりとした文章。検事、弁護士、探偵、保険屋が登場し、裁判での大逆転と裏切り。淡々とした格闘シーン。当時のハードボイルドの定番を踏んでいるのではないだろうか。しかしフランクの思考は単純で、コーラの亭主を殺す過程はスリリングである一方でコミカルでさえある。
そしてコーラに愛を感じた直後の暗転。
僅か200ページを淡々と、それでいて30年代のアメリカの空気とジェットコースターに乗ったような展開を感じさせてくれた。 -
可もなく不可もなく。スタンダードすぎる物語展開だけど、この作品がそのスタンダードを作ったのなら、それはすごい名作だと思う。真相は不明。
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面白かった、間がないから3だけど3.5って感じ。
あまり新鮮さはなく、シンプルな筋書きだったけど後書きを読んでみて、確かにキャラクターがよかった。
どちらもありがち、だからこそ親しみやすく、話の中で裁きを受けるがザマァみろとは思わない、同情を誘う印象だった。
男女の恋愛を描いているが、決して美化されていたり綺麗で尊いもののような書き方はされておらず、現実的で愛情以外の憎しみとか、めんどくさくなる気持ちとか、居酒屋で夫婦事情の重めの愚痴を聞いている感じだった。それが良き。
名作!!って感じはないけど、皆んなから親しまれてる昔からある作品って印象でした。地元の定食屋 -
読んだのは1963年に新潮文庫から出たもの。
翻訳された言葉たちに、こう、時代を感じた……。
フランクにいい印象はずーっと持てなかったが、最後の一文に面食らった。翻訳された文章から受けた印象のためかもしれない。原文だとどうなのか気になるところ。
他の翻訳者のバージョンでもちょっと読んでみたい。 -
確かに、映像でみたら面白そうだなって思った。