- Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102142127
作品紹介・あらすじ
ゴーゴリ-列車事故から奇跡的に父の命を救った本の著者にちなみ、彼はこう名付けられた。しかし、成長するに従って大きくなる自分の名前への違和感、両親の故郷インドとその文化に対する葛藤、愛しながらも広がってゆく家族との距離。『停電の夜に』でピュリツァー賞などの文学賞を総なめにした気鋭のインド系米人作家が、自らの居場所を模索する若者の姿を描いた待望の初長編。
感想・レビュー・書評
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短篇集『停電の夜に』からの流れで、著者初長編を読んでみた。
三人称現在形の文章で、約二世代の話が淡々と語られる。ドラマチックな出来事もけっこう起きているが淡々と進む。これがインド系に由来するのか、著者個人の資質によるのか、よく分からないが、通勤電車の中に居ながらにして、インド亜大陸とアメリカ大陸(と少しだけヨーロッパ大陸)とを行き来してきるような壮大な感覚を得たような。。
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短編集で初めて読み、その後気になっていた作家、ジュンパ・ラヒリ。初めて読む長編に選んだのは、タイトルに惹かれた本作。
彼女の作品はどれも自身の出自に関連したインド系移民の話なのだけど、家族の世代間ギャップ、エスニックアイデンティティなどについて描かれているが、移民とかインド系とか関係なく共感できるストーリーが魅力。
この作品では、遠く故郷を後にして、孤独と向き合いながら、新たな土地で自分の居場所を見つけていく一世の生き方にかなり共感しながら読むことができたが、後半の二世の恋愛や結婚生活などを含む箇所が冗長に感じられた。但し、この物語の主人公?で二世であるゴーゴリの自分の名前への思い、アメリカ人家族への憧れはよく理解でき、一緒に憂い、一緒にワクワクしながら読んだ。
また、この一家を含むラヒリが描く家族は、彼女が属するような、高学歴で移民先でも成功した部類の理想的な家庭が多い。そんな家族の中にあっても、家族として共有できない各自が感じる孤独など、個人に視点を当てた描かれ方にも共感できる作品であった。 -
インド出身でアメリカに暮らす大学教授一家のほろ苦い家族物語。主人公は息子のゴーゴリ、というよりその家族。
著者の小説には、家族にすら理解されない言いようのない孤独というようなものがすっと描かれていて、それが何とも腑に落ちる。自分だけではないんだとも思わせてくれる。自分自身が学生だった頃、かみさんと付き合っていた頃、子供が小さかった頃、子供が大きくなった最近のこと、年老いたおふくろ、17年前に亡くなった親父のこと等々思い出しながら読み終えた。愛する家族であっても、その時々で近付いたり離れたりする。全く理解できなくなったり、自分も若いころはそうだったくせに許せなくなったりする。
家族でも夫婦でもどんなに近くにいても、本当の心の内は思いもよらない。やはり一身同体ではあり得ない。
今この時、この本を読めてよかった。孤独や現実を受け入れることができるようになった。と思いたい。 -
「停電の夜に」で著者を知りこの本を読んでみた。ゴーゴリがまるで自分の事のように思えて、自分の両親の事を考えながら一気に読んだ。ガングリー一家とその周りの人々の話で、悲しい出来事もあったりするけど、誰の身にも起こり得る普遍的なストーリーを淡々とした文体で書かれてあり、返ってそれが読みやすかった。
マクシーンと付き合っていた頃の都会的な生活に酔っていたゴーゴリは、18で故郷や両親から離れて東京で生活を始めた私ととても重なる部分が多く、おそらく同じように感じながら読んだ人は多いのではないかと思う。
この本を読みながら、普通の何でもない私たちにも沢山の物語があり、そうした物語を作りながら生きているのだなーと改めて思った。
この本は映画にしたら良いのに、と思っていたら既に映画化されていた!読後にそちらもレンタルで観て、駆け足ながらも原作に忠実に描かれていて、優しい気持ちになれる映画だった。 -
ゴーゴリが読みたくなる
お母さんのコロッケ、私も食べたい。
両親に対する思い
異国と母国の両方への憧れ
どこにも帰属できない感覚
アメリカの暮らし
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久しぶりの長編
このところ再読ばかりだったけど、
新しい本と出会うわくわく、
読書っていいなと思い出させてくれた1冊
形は違えど誰にでもある自分だけの探求の道
さまざまな言葉にならない感情や思いと一緒に生きていく -
とても良い本だった。感動した。中盤から主にゴーゴリの視点で物語は描かれるのだけど、僕はやはり父アショケの目線が気になる。「おまえを見て思い出すのは、事故よりあとの全部だ」(p.203)という台詞は、感動を覚えた。
ゴーゴリという名前を補助線に、ベンガル人というアイデンティティをバックグラウンドとした人生を描く物語のたたずまいも、とても好ましい。父の死、結婚、離婚、個人にとって重大なライフイベントも、なんというか飾り立てた物語ではなく、日常の中に足がついた描写になっているような印象だった。 -
ベンガル式の命名法では、1人の人間が2つの名前を持てる。愛称はダクナムといい、文字通り呼ばれる名前となる。