ニュースキャスター 下巻 (新潮文庫 ヘ 4-13)

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  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102145135

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  • 「リーダーシップとインスピレーション。
    それらは生きのびるためには、不可欠の要素だった。
    それに変わるのは深い絶望であり、
    絶望は精神的降伏につながって、
    彼らを破滅に導く恐れがあった。」

    アーサーヘイリーの書こうとしている世界は、
    独特のものがある。

    時代に深くかかわる物語を提案する。
    この「ニュースキャスター」も、
    今のマスコミというものをうまくすくい上げている。

    時代は、本当に即時にニュースが伝わる。
    世界が、一つになっているかんじがする。
    「同時代」を共有している。
    ニュースを伝えている個人よりも早く、ニュースが流れる。

    ニュースの「独自性」「意見の公平性」ということが、
    「ニュースキャスター」の思想にも深く関連してくる。

    そして、企業であるが故に、
    利潤を追求するということが大きな課題にもなる。
    大きな企業の1部分であるときに、
    経営手腕を発揮しようとする「トップ」が、
    経営だけを追求するときに、
    いろんな問題が生じる。

    本当に、「大切な真実」を切り捨てるときもある。
    「コストダウン」ということが、重要なことなる。
    また、経営者がすすめている問題についても、
    ニュースは、立ち入ることが出来ない。

    企業とニュースの独自性を
    どのように保って行くのかということは、
    実に重要な課題であろう。
     
    ペルーの「輝ける道」は、
    テロリスト的左翼集団として、有名をはせている。
    その大きな収入源が、
    「ヘロイン」というところに不思議なものがある。
    豊富な資金を背景にして、容易周到な計画をする。
    そして、マスコミジャックをする事を考える。

    ストックホルム症候群についての説明は、おもしろい。
    ある極限状況におかれると、
    人間は、正確な理解ができなくなり、
    困難を切り抜けるための方法をつかめなくなってしまう。

    監禁状態におかれたときにどうすれば
    よいかということについての対策は、
    実にスリリングなものがある。

    「誘拐事件」というものが、個人にかかわる問題であるが、
    同時に、要求されていることが、金銭ではなく、
    自分の主義を伝えようとすることに使われることは、
    これからありうるかもしれない。

    主人公 ハリー・パートリッジとクロフォード・スローンは、
    好対照な人物である。同じような時代を歩きながら、
    つねに「生活信条の違い」から、
    その取り組むかたちが違ってくる。

    そして、スローンは、悲劇の主人公ながら、
    愛情に満ちあふれた生活をしている。
    ハリーは、「若さ」ゆえ、愛する人を失い、
    そして、「不運」なゆえに愛するものを失う。

    最後まで、ほほえむことが出来ない。
    涙を流すことができない「自分」を心配していたが、
    その涙は、沢山でるような「できごと」にめぐりあう。

  • 人気ニュースキャスターの家族が誘拐。だが犯人からは身代金の要求はない。普通の誘拐モノのような始まり方なのだが、さすがはヘイリー、一筋縄ではいかないストーリー展開である。
    …今回古本屋で買ったのだが、かな〜り前に読んだことがあったようで、途中から展開が読めて(と言うか思い出して)しまったのだが、何度も読み返すのに足るいい本であると思う。ちょっと長いけどね(文庫で上下巻)

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