キス (新潮文庫)

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制作 : Kathryn Harrison  岩本 正恵 
  • 新潮社 (2004年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102146217

キス (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 1997年、春に刊行され全米で話題となった今作。

    実の父と娘とのタブーとされる近親相姦の物語。
    幼いころに別れた父と再会した「私」は、
    父と、暗く、寂しい、先が見えない関係に堕ちる。
    生々しい表現は、一切なくむしろ
    硬い重苦しさを感じる文章。

    父と娘の関係は、「愛情」や欲は無く
    「私」と母や祖母との親子の問題が根底にあり
    父は、娘と共に娘の母親である、元妻から受けた
    仕打ちを慰め合い、傷をなめ合っているかのように
    感じた。

    解放と理解の物語。

  • 好きな文章を書く方のレビューを見ていたらたまたま一緒に見ていた姉もこの本を読んだことがあると言っていたので何となく覚えておりました。でも買うのはなあ…と思っていたので図書館で借りてみました。

    なんと言うのか。作家というのはここまで、こんなことまで書かなくては生きていけないのか、と言う作家の業のようなものを強く感じました。解説にありましたが自分を解剖するような作品だと思いました。

    失ってしまった20年間の記憶や感情は何をどうしても取り戻すことはできない。それをわかっていながら目の前に差し出された愛と言う名前のついた誘惑にあらがうことが出来ない。作中の人物全てが不器用で世の中に傷つきながら生きていて唾棄すべき父親すらもなぜか可哀そうな人だなあと思わせてしまう。母と娘、と言う同性であるが故の反目も。

    とても静かな、さみしい本でした。

  • 「洋子さんの本棚」で取り上げられ深い話になっていた本。
    ノンフィクション。事実は衝撃的。
    自分の過去を淡々と文章にし、本にしようとする著者の強い意志を感じた。
    父親はもちろん罪深いが、母親の行動は最悪だ。同性のすることか。私には虐待としか取れない。

  • アンドリュー・ヴァクスは「親と子供の近親姦は強姦である」と非難している。

  • 1/8 読了。
    母に愛されずに育った娘が、成人してから再会した強烈なコントロールフリークの父にあらゆるものを搾り取られていく。
    めちゃくちゃしんどい。ノンフィクションゆえに父と娘の近親相姦が話題を呼んだらしいが、これは「お母さんに愛されたかった」と思い続けた娘が、それは自分がどうしようもなく「お母さんを愛していた」ということなのだと認めるまでの話であり、娘から母への痛々しいラブレターだ。育った境遇が近いのもあり、特に幼少期のエピソードはいちいち抉られた。
    書いていることはエグいが、断片的記憶の並べ方、繊細だが感傷には浸らない筆致など、全体に潔癖で(近親相姦を全く美化せず甘美にも頽廃にも書かないところも大変潔癖)、読み終えると不思議と清々しささえ感じる。お母さんの亡霊を見るラストシーンが美しいせいもあるだろうな。ここだけは思いきりベタベタな感情が露わになっているのだが、それを祝福したい気持ちになってしまうのだ。

  • ノンフィクション。本人の意思がはっきりしない中で周りに翻弄されながも、事実を事実として冷静に見つめ正確に記録している。
    このような家族は決して多くはないにしても実在するのだろうし、それを不幸な出来事と簡単に片付けてしまうのは短絡的なのだろう。
    いずれにしても、いかなる理由であれ、父娘間の愛なんて倒錯であり屈折している。これは卑劣な性犯罪であり、法的な刑に処すのが妥当だし、母の意思で処女膜を破られる何て事も絶対にあってはならない。人権無視の狂気であり親の威厳を借りたハラスメントとしか思えない。

  • 「なにを怖がっているんだい?」
    彼の求めるものは、すべて与えてしまうだろう。それをわたしは怖れている。きっと時間の問題だ。
    「地獄に堕ちること」半分本気で、わたしは答える。
    2014/08/19-08/29

  • 父、娘、そして母の物語

    両親の離婚により生き別れになっていた父親と再会した著者。
    長年の別離により、あるいは母を渇望する者同士として、彼らは恋人のように一目惚れをした。
    この関係がおかしい事は理解している。しかし、相手を求めずにはいられない。

    ただ、そこには激情はあれど、幸せな匂いはあまり感じられない。
    罪の意識もあるのだろうが、それは本当に恋だったのだろうか。
    途中から傷を舐めあっているようにしか見えなくなってきた。
    積極的には関わる事はない母の存在。
    終盤へ向かい、これは親子の歪な物語だったのだと分かった。

    好きで、好きで。でも、本当に欲しいのは何?

  • 近親相姦とゆうところにまず着目してしまいますが性描写もほとんどなく、センセーショナルな内容とゆうよりはとても深く重く痛い作品
    母や祖父母との関係も複雑に絡み合っていて著者の痛みが痛烈に伝わってきます
    父との関係はもちろんですが、それ以上に母と娘の関係がとても悲しく痛いです
    彼女を形成しているのは母の存在で、だからこそ母を乗り越えなければいけなかったんだろうな
    解説のところに、"彼女は小説家としてこの体験を書いてしまわなければ、先に進むことができなかった"と書いてある
    なんだかとても納得した

  • ――正直、一度では読み切れなかった。あまりにも描写が辛すぎて。自分の過去を静謐に辿っていく。淡々とした冷淡な眼差しにはしかし、冷淡では割り切れない複雑な感情がこめられている。

    幼くして父親と引き離され、やがて一度のキスを始まりとして肉体関係が始まる。母親への裏切り。しかし、母親は彼女の愛から背くことで彼女を裏切り続けてもいる。祖母の呪縛、父の新たな家族、あまりに感受性たが多感すぎるが故に、周囲の人物たちに絡め取られがんじがらめとなっていく彼女の心は擦り切れながらも、切実なほどに愛を渇望している。彼女が求める愛を巧く与えられない彼女の、両親、祖父母、友人、恋人、医師。互いが互いを愛そうとしているのに、巧く愛せない彼ら。そこには一つのうねりがある。逃れられないうねり。盲目なまでに彼らはうねりに追従する。すり切れた感情が、欺瞞も、怒りも、憎しみも全てを乾燥させてしまう。けれど、ときおりふっと激情が立ちのぼる。

    単純なノンフィクション小説として片付けられないくらいの、この、擦り切れた文体は、どことなく山田詠美に近しい雰囲気だと感じる。いえ、影響されてるとかではなくて、単純に属性が似ているのかもしれないということ。あるいは、内田春菊。内田春菊なんて、ファザーファッカーを描いているわけだから、やはり同系列なのかもしれない。だが、内田春菊よりもなおこの物語に出てくる登場人物たちのほうがよほど切実な気もする。型が合わなくて、それでも、はめようと努力して疲弊してすり切れて感情的になって摩滅して、そうして、その終焉に必要だったのは登場人物の欠如。祖父が、そして、母が物語から離脱することによってぎりぎり保たれていた均衡がようやく崩れる。崩れて、彼女は一人再び歩き始める。解説者はそれを容易に、「成長」と呼んでいるが、内実はそれほど単純なものじゃない。彼女は成長しているのかどうかすらわからない。成長という考えは進歩史観に支配されているだけのような気もする。成長なんて考え方自体が錯覚な気もする。前へ進むための欺瞞。ともかく、彼女は歩き始めることとなる。少なくとも停滞から抜け出して自らの幸せを手に入れていく。しかし、いつだって彼女は彼女が持つ影を身にまとい続けることだろう。なぜならば、それが彼女のアイデンティティ、彼女の個性を形作っている重要な要素として組みこまれてしまっているのだから。

    時系列は飛び飛びで、どれもこれもぽつりぽつりとした回想録のような形態をとっているのに始終ひきつけられ続け、そして、あまりの詳細さがこの物語の強烈なまでの自伝性を成立させている。それでも、彼女が母をして、「最愛の人」と呼び、祖母がなくなっても、母の負担を減らすために、祖母の遺言を守らずに祖母の骨を母の骨の上にまかないあたりの描写がこの物語に救いを与えている。救いのない救いを与えている。

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