私たちがやったこと (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102149324

感想・レビュー・書評

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  • 見逃してたぜ、レベッカ・ブラウン。「この人、何故私のこと知ってるんだ?」とゾクゾクさせてくれる貴重な著者。高波に持ってかれてしまうゆえに覚悟と体力がないと読めないのだが、まさにそれが他のどんな本とも違う魅力。

  • 39738

  • ごく短い話が束ねられた短編集。
    オムニバス映画を観ているみたいな感覚でした。
    心理描写が多い方が好きなので…こちらはあまり好みじゃなかったかな。

  • 昔表題作を読んでこれはもっと大人になってから、と思ったけど、やっとすんなり読めた。
    というか時代が彼女に追いついたことが大きい。

    ●結婚の悦び ―The Joy of Marriage
    出だしの語りはとても幸せそうな新婚生活だったのに、だんだん娼婦のような立ち位置に置かれてとてもみじめ。
    とても特殊な例ではあるけど、男女で結婚観に差があるんだな、と思う。

    ●私たちがやったこと ―Folie a Deux
    安全のために、私たちはあなたの目をつぶして私の耳の中を焼くことに合意した。
    こんな狂気に満ちた恋愛小説の書き出しって他にあるかしら。
    柴田元幸曰わく、ブラウン自身がレズビアンなので、「わたし」と「あなた」が男女なのか、男男なのか女女なのかもはっきりしないというけど、 おそらく「あなた」は男性で「わたし」は女性。やはりこの話も男女がどれだけ恋愛(もといパートナー)を大事にしているかの差異がポイントになっていると思います。
    視覚に対して聴覚を失うダメージの方が明らかに少ないのかもしれないけど、やはりパートナーの外見(この場合は声色)が変わって心変わりしやすいのも、 精神的に弱いのも男性なのだと思う。向こう見ずなことをしてしまうのはいつだって女性。
    恋人の数だけ愛の形があるのだと、そしてどれだけ互いの気持ちが強くても、他人との関係は脆いものなのだと気づかされます。やっぱりもっと大人になってから読むべき話だったのかな。

    ●アニー ―Annie
    カウガールのレズビアン。
    価値観や生活スタイル、気持ちの差異が埋められなくて、刻々と別れに向かって行く話。
    恋人に求めているもののひとつとして、共感は外せない。自分に共感して、自分を肯定してほしいという気持ちは愛について考えるとき、誰しもあるものだと思います。 さらに同性を好きになる場合、異性相手よりもパートナーに自分を投影してしまう傾向があるのかも。
    違いを認めて、相手を尊重する恋愛とはまた違う形。

    ●愛の詩 -Love Poem
    美術作品を破壊する話。
    これこそ女性・女性なのか、男性・男性なのか、女性・男性なのかよくわからないので、原文で読みたい。
    美しいものは儚いゆえにいっそう美しいんだと気づかされる。
    秘密を共有することはとても甘美だということにも。

    ●ナポレオンの氏―歴史へのその影響 -The Death of Napoleon:Its Influence on History

    ●よき友 -A Good Man
    レズビアンが、ゲイの友人を看取る話。
    ジムはHIVだったのかな。さわるとうつるっていうのは今の時代には合わないけど、そういえば長い間そういう認識がされていたなあ。
    なんでこのひとの話はこんなにきれいなんだろう。

    ●悲しみ -Grief
    終わりがきれいだと、これ以上続きはいらないと思ってしまう。
    外国に行く彼女に自分の夢を馳せて、一番いいところだけを見ていたいという気持ちが表れてるのかな。

  • 11/20 読了。
    表題作の原題は「Folie a deux」(ふたり狂い)。永続的にお互いが不可欠な存在となるために、ひとりは目を潰しもうひとりは耳を焼くことに決めた1組のカップル。盲目のピアニストと聾の画家のペアとなったふたりは、はじめのうち充足した気持ちに浸っていたが、次第にその世界は歪みはじめる。表題作をはじめ、コミュニケーションの不可能性、支配と搾取に終着してしまう関係を描いた、レベッカ・ブラウンの粋を味わえる短編集。レズビアンの語り手と、エイズによりパートナーを失い自らも同じ病におかされたゲイの友人の最期の日々を描いた「よき友」にはめちゃくちゃ泣かされた。

  • 小川洋子氏推薦の短編集。翻訳が柴田元幸ならきっとハズレはないと思って購入。表題作の「わたしたちがやったことは」お互いの為に片方が耳を、片方が目を潰しお互いがお互いを頼りふたりだけの閉じた世界で生活してる話だけど、谷崎の『春琴抄』のような雰囲気を感じる。小川洋子が好きな人にはぴったりの幻想的な愛のおはなしが詰まった短編集。203/225

  • 表題作を含む、7篇を収めた短編集。その大半が狂気を孕んだ内容だった。すごく好みの本だった。
    読む前からぶっとんだ内容の短編が収められている、と聞いていたので予め分かってはいたものの、それでも冒頭の「結婚の悦び」には驚いた。その幻想文学的な、どこか狂気に満ちた内容に最初こそ戸惑ったが、すぐに夢中になってしまった。「体の贈り物」の印象しかなったけど、こういうものを書く人だったのか。
    そして表題作「私たちがやったこと」。
    「安全のために、私たちはあなたの目をつぶして私の耳の中を焼くことに合意した。こうすれば私たちはいつも一緒にいるはずだ。」
    この冒頭部分でいきなり鳥肌が立った。人工的に作り出した二人だけの世界。お互いは決して分かたれることはなく、「私」と「あなた」は二人で一つの存在になる。
    だが「社会」に属している以上、他者との関わりを絶つことはできない。初めから綻ぶのが分かっていた生活だが、二人の望むものがいびつだが純粋な分、破綻していく様が痛々しい。
    最後の数行に胸を衝かれる。

    世界最後の二人になると互いの名前さえ必要なくなるという。
    収録作品の殆どが名前のない「あなた」と「私」で語られているのを見て、何となくそんなことを思い出した。
    どの作品も好きだが、中でもいいなと思ったのが「アニー」、「愛の詩」、「よき友」。

  • レベッカ・ブラウンの幻想短編集。「わたしたちがやったこと」は狂気の二人が社会の介入によって崩れていく様を描く。とてもいい。
    ほかに好きだったのは「よき友」と「悲しみ」。「よき友」は(おそらくエイズで)亡くなって行く友と「わたし」についての短編。「悲しみ」は死を旅行になぞらえて描いたもの。幻想小説といえども、やはりブラウンの小説には「死」とそれを「看取る人」の匂いが強いし、それが魅力でもあると思う。少なくとも私はそれに惹かれてブラウンを読む。
    「ナポレオンの死」には惹かれるものがあるが、完璧には理解できない。
    肌に合わないなと思ったのは「アニー」。
    この本一冊をとってみても好き嫌いが分かれることを考えると、レベッカの作品は幅広い。
    2011.03.30

  • 2011年1月、表題作ともう一篇のみ読了。

  • 短編7作。
    精神の結びつきを突き詰める。
    狂気であるが狂喜なのだろう。
    分からなくもない自分にゾクゾクした。

  • アメリカ現代特有の、乾いた、印象。柴田訳の妙はいくばくか。表題作が一番よかった。デルヴォーのイメージを想起された。

  • HIVと同性愛をテーマにした『よき友』が印象的。

  • 同著者の 「家庭の医学」 は好きだけど、この本はあんまり。
    柴田さんの訳もいつもは嫌いではないけど (むしろ好きだけど)、この本の訳はもうひとつ。
    いまや翻訳文学と映画字幕と歌詞の世界でしか生きていない芝居がかった台詞回しが、なんとなく気持ち悪い。これはエリザベス・ギルバートの 「巡礼者たち」 を読んだときとまったく同じ感想 (そういえば 「巡礼者たち」 の翻訳者さんは柴田さんの教え子さんですね)。
    「~なのさ」 とか 「~なんだぜ」 とか 「~するっきゃないわ」 とか 「~だい?」 なんて言い回し、現代の話し言葉ではもう使われていないでしょう。だから、そういうのが会話の中で出てくるたびに 「ああ、これはウソだ。翻訳者がノリノリになって演じているだけなんだ」 と鼻白んでしまう。レズビアンの女性の口調もしかり。 「いかにも」 すぎて、私はダメだった。さらに、翻訳書で 「おぢさん」 なんて表記を目にしてしまうと、翻訳者の過剰な演技に一気に萎えてしまう。そのへんを 「これはそういうフレームの中で語られているんだから、それでいいの!」 と割り切って読めたら、純粋にストーリーを楽しめるんだろうけど。
    しかしながら、残念なことにストーリー自体も好みではなかった。表題作 「私たちがやったこと」 と 「よき友」 は魅力ある作品ではあるけど、私は好きじゃない。 「ナポレオンの死」 は読みすすむのが苦痛だった。

  • 表題作の短編「私たちがやったこと」

  • 読むきっかけ・感想:某サイトでオススメされていたから。柴田訳リンク中だったから。
    感想:『私たちがやったこと』は設定の過激さもあって衝撃的でした。少女という時代を過したことがある人間としては、『アニー』がすごすぎた!
    レズビアン作家という前知識なしに読んでいたのですが、そういった要素が加わることで思いがけず広がった感じ。

  • 柴田元幸氏訳。短編集。

    たんたんとした語り口だけど、情熱的に相手を愛する主人公に私は共感できた。何度も読みたい本となった。

    私は知らなかったけれど、レベッカ・ブラウンは有名なレズビアン作家。
    口絵の写真では男性に見えるけれど、読めばその女らしさがよく伝わってきます。

    表題作は米国の春琴抄。

  • 『結婚の悦び』『私たちがやったこと』『アニー』『愛の詩』『ナポレオンの死』『よき友』『悲しみ』収録。
    現実的・日常的な場面を描いているはずなのに、すごく幻想的で非日常的な雰囲気です。
    レズビアン作家というだけあって、恋人が男女を意味しないところも、独特の不思議な感覚を作り出しているのかも。

    『私たちがやったこと』で、互いが不可欠になるために、耳を聞こえなくした“私”と、目を見えなくした“あなた”は、
    二人だけの世界を作り上げようとして、二人だけの合図で、二人だけの濃密な関係を築いたはずなのに、
    次第に正常なはずの機能も歪んで、どろりと煮詰まったような感覚になっていくのがすごかったです。

    恋人同士の二人の世界が、外部の地位や名声が入り込むことでバランスを崩していったり、
    逆に外部との関わりを排斥して二人だけの世界を完結しようとするあまり、内側からバランスを失ってしまったり。
    それはリアルだなと思いました。

  • ・誰かの日常の断片がとても抽象的・主情的に描かれている。登場人物に特定の名称をつけないでストーリィを展開させていく手法が多い様。
    ・女の人の作品かな?と思いながら読んでいたけれどやっぱり女性作家だった。ロマンティックでファンタスティック。
    ・内容は大きな括りで『愛』がテーマの短編7作。色々な形があるし、捉え方があるし、表現の仕方があるのだ。

  • 読んでいて、悪夢をみているかのような、それでいてとても甘美な感触の残る不思議な短編たち。
    『体の贈り物』とだいぶ雰囲気が変わっていたのでちょっとびっくりしたけれど、本の中の「よき友」には内容的に通じるものがあるのかな。
    この人のつむぐ物語は小説ならではのものだと思う。例えば映画などで映像化しようと思っても、全く意味のわからないものになるか、はたまた最高に陳腐なものになるかのどちらかだろう。だれかに挑戦して欲しいなぁとは思うけれど。

  • 表題作である「私たちがやったこと」と「結婚の悦び」は良かったかな。これらの不思議でちょっと不安?不気味?な感じがちょっと良いと思った。

  • 有名なレスビアンと分類されている作家らしい。

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著者プロフィール

1956年ワシントン州生まれ、シアトル在住。作家。翻訳されている著書に『体の贈り物』『私たちがやったこと』『若かった日々』『家庭の医学』『犬たち』がある。『体の贈り物』でラムダ文学賞、ボストン書評家賞、太平洋岸北西地区書店連合賞受賞。

「2017年 『かつらの合っていない女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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