愛の続き (新潮文庫 マ 28-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102157220

作品紹介・あらすじ

科学ジャーナリストの「ぼく」は、英文学者の恋人とピクニックにでかけ、気球の事故に遭遇する。一人の男が墜落死し、その現場で「ぼく」は奇妙な青年パリーに出会う。事件後のある夜、パリーが電話をしてくる。「あなたはぼくを愛している」と。それから彼は「ぼく」に執拗につきまとい始める。狂気と妄想が織りなす奇妙で不思議な愛のかたちを描いた、ブッカー賞作家の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • ある事故をきっかけに、見知らぬ男からストーキングを受けるサスペンス的な物語。淡々としておりながらも、映画的な小説だった。冒頭の気球のシーンに始まり、妻との口論、道路を挟んでのストーカーとの対峙、銃撃事件。盛り上がりどころを外さない。またセッティングもいい。主人公は科学ライターで、神や信仰を信じない。だからこそ「あなたとの出会いは神の導きだ」と言う宗教的盲信をした男につきまとわれる。

    主人公は冒頭の事故で、人が死ぬ原因を作ってしまった事に罪悪感を抱く。その具現化が「ストーカーという妄想」なのではないかと妻は疑う。

    「ぼくは純潔と汚辱のボーダーラインを何度も往復してしまったのだ」
    自らを純潔と宣える胆力と自己主張の強さに、呆れ半分の尊敬を覚える。
    結果最後に手に取るのはピストルだ。思い悩んだ先に、自己の破滅ではなく、敵の排除がある。
    結果的には誰もがほぼハッピーエンドとなったのではないだろうか?
    主人公と妻は不審を乗り越えたかもしれないし、ストーカーの青年はあらゆる事象に勝手に神の兆しを感じて幸福感を得る。

    唯一哀れなのは、青年が「あなたの事を愛してしまった」のではなく「あなたが僕を愛するから、僕もあなたを愛さなくてはならなかった」事。これほど互いを不幸にする思い込みはない。

  • 第22回アワヒニビブリオバトル「失恋」で発表された本です。
    2017.02.07

  • ①文体★★★★★
    ②読後余韻★★★★★

  • 映画「Jの悲劇」原作本です
    映画から入りましたが原作もおもしろいです

  • 『贖罪』には及ばない気がするがこれも相当のもの。
    冒頭の異様な緊迫感に始まり、途中この話はもしかして心を病んだジョーの妄想なのか?と思わせる位のねじ曲がり。被害者であるはずの人間が信じ愛していた(あるいは信じ愛されていた)人間との絶望的すれ違いにより追い込まれていく描写は小説を読むことの価値の何たるかを雄弁に語っている。
    結局誰もが救われないまま終わってしまう物語なのだが、人間は孤独を超えたところに何を見出すのだろうか?真摯に突き付けた課題につき読者に熟考を促す、まさに必読の作家の一人ですな。

  • たまに覗くブログの筆者が薦めていた一冊。
    イアンマキューアン、何となく名前は知っていたけれど外国の小説自体がかなりご無沙汰でした。
    内容は、気球の事故を発端に主人公の男性がストーカー(男性)被害に遭う…という何ともヘビィな設定。
    主人公の視点から描かれているのだが、現実と妄想がごちゃまぜになってきたり、周りの人間に対する猜疑心がモヤモヤ沸いて来たり…
    (とにかく暗い…)
    (けど結末が気になる…)
    という感じに、まんまと乗せられて読み切ってしまった。

  • 気球事故を境に、変人パリーに付きまとわられるジョーの物語。
    客観的で中立的な認識は存在しない。私たちが普段目にし、考えることは、それぞれの感情や立場など、主観が多分に入り混じったもの。
    気球事故がおこる。何を勘違いしたか、パリーは、ジョーから愛のサインを受け取ったと勘違いをする。
    その後、妄想にとりつかれたパリーのストーキングが始まる。
    手紙を書き、電話をする。家の前に何時間も待ったりする。ジョーが、やめろと威嚇しても、パリーにしてみればそれは愛の裏返し、効果なし。ジョーが、生垣の葉に触れただけで、後日「あの君の愛のメッセージ見逃さなかったよ」と手紙がくる。お手上げ。

    主人公であるジョーは、そんな変人パリーに対し、冷静に論理的に対処しようとする。パリーはド・クレランボー症候群であると自ら突き止め、警察や恋人であるクラリッサに相談する。
    ジョーの辛いところは、それがわかってもらえないところ。どんなに冷静に対処しようとしてもクラリッサには、「あなたおかしいわよ」「あなたの妄想なんじゃないの」みたいにあしらわれる。ジョーの不安が的中した時でさえも、クラリッサは自分の非を棚上げし、ジョーが悪いと突っぱねる。(クラリッサには女性の感情的に物事を捉える側面が露骨に描写されてます)

    終わってみると真実に向かって突き進んでいたのは、ジョーであり、その他の登場人物は何らかの錯覚?をしているのだけど、面白いのは、俯瞰してストーリーを追っている自分自身も途中でジョー実は変なんじゃない?頭おかしいかもしれんはこいつと、感じてしまうところ。こんな状況で正しく認識できないのなら、いわんや現実をや、です。

    全体的に軽いタッチで書かれていて読みやすい本でした。アムステルダムよりは好き。





    パリージョット、ジョー、クラリッサ

  • 資料ID:C0026799
    配架場所:本館2F文庫・新書書架1

    エルサレム賞

  • 西村玲子さんおすすめ。

  • 帯には最高傑作と書いてあるけれど、私にはそうでもなかった。
    この作品でブッカー賞を獲らせなかったから次の『アムステルダム』でブッカー賞をあげたのだという意見に私は賛成しかねる。私は断然『アムステルダム』の方がいいと思う。

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著者プロフィール

イアン・マキューアン1948年英国ハンプシャー生まれ。75年デビュー作『最初の恋、最後の儀式』でサマセット・モーム賞受賞後、現代イギリス文学を代表する小説家として不動の地位を保つ。『セメント・ガーデン』『イノセント』、『アムステルダム』『贖罪』『恋するアダム』等邦訳多数。

「2023年 『夢みるピーターの七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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