代替医療解剖 (新潮文庫)

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制作 : Simon Singh  Edzard Ernst  青木 薫 
  • 新潮社 (2013年8月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159767

代替医療解剖 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 結論ありきの論理だと思う。
    現在普及している鍼治療が、そもそも非常に浅いところにしか打たず、パルスでごまかしているものなのは認める。
    ただ、気とか経絡とか言う前に鍼が何に作用して、あるいはどういう働きかけで効くのかという調査をしても意味はないと思う。
    加えて凝りの概念が理解出来ないとこれは話にならない。

  • サイモン・シン最新作、待望の文庫化!!
    …のはずだったのだが…。

    個人的にはがっかり。
    身も蓋もない言い方をすれば、これは代替医療批判本。理数系の話をわかりやすく解説したいつもの"科学的読み物"ではなく、社会問題を題材にしたもの。

    学会に発表される論文じゃないんだから、いくら断じられても作者の主観の域を出ないし、作者は公平を強調しているが、同じ論調で通常医療にも批判を加えなくてはとても公平とは言えない。
    また、"科学的でないもの"を主題としていることから当然、科学的・理系の専門的な解説はなりを潜め、"科学的でないもの"の説明が延々続く。
    これではなんのためのサイモン・シンか。

    ホメオパシーに至っては、私は本作で初めて知った。説明を読んでもよくわからない。こんなものが世界的に普及しているというのも信じられない(私が知らないだけなんだろうけど)。言い方は悪いが、造語を造語で解説しているファンタジーのあらすじを読んでいる気分だった。

    代替医療について知りたいなら本書でいいかもしれない、でも、サイモン・シンを読みたい人には落胆が待っている。

  • Simon Lehna Singhの著作にはハズレがない。

    今回はタイトルの通り「代替医療」について。ここでいう代替医療とは、カイロプラクティク、鍼(お灸含め「
    気」の流れをコントロールして治療する方法一般)、ホメオパシー等である。
    これらの治療法は果たして、大学病院で治療してもらって処方箋を出してもらうよりも元気になるのだろうか。

    ここで、一つ重要な問題を考えないといけない。
    ある治療法がある病気に対して効果があるという事をどのように「科学的に」検証すればよいだろうか。
    単純にはその病気を患っている人を多数集めてその治療法を試してみて、効果を検証すればよい。と思われるかもしれないが、「プレセボ」という効果を考慮していない。つまり、プラセボによって元気になっているだけで、実はその治療法は全く意味が無いという可能性である。

    話はそれるが、このプラセボというのは案外バカにならない効果があるようである。
    今後、このプラセボ効果の科学的な解明を望むばかりである。

    閑話休題、このようにある治療法が、ある病気に対して効果があるかどうかは実は難しいのである。

    色々と方法はあるのであるがそれは本書を読んでもらうとして、結論は、上記のカイロプラクティク、鍼、ホメオパシーは科学的には効果が無いようだ。(一部は少し効果あり)

    よって、変な医療に手を出して高額の費用を払うよりはきちんと大学病院に言って最新の医療に従った治療を受けたほうが賢明だということである。

  • (ネタバレあり、です)
    代替医療。それは、冷たい科学的な医療に対する暖かくて人間的なもうひとつの治療方法ではないのか。
    読みながら、何度も息を飲んだりグゥの音をあげたり溜め息をついたり唾を飲み込んだりした。

    本書では、鍼、カイロプラクティック,ホメオパシー、ハーブの4つの代替医療を「科学的に」検証している。
    本書の結論は以下の通り。
    (1)鍼はごく一部の症状に効き目があるが、それ以外にプラセボ(プラシーボ)効果を上回る効果はない。
    (2)カイロプラクティックはある種の腰痛に効き目があるが、ほとんどはカイロプラクティックというよりはマッサージの効果であり、プラセボ効果を上回る効果はない。椎骨周辺を触ることにリスクがある。
    (3)ホメオパシーはまったく効果がない。むしろかなり有害である。
    (4)一部のハーブは一部の症状に確かな効果がある。使い方を間違えると危険(飲みあわせ)。その他は、プラセボ効果を上回る効果はない。

    共同著者の一人、エルンストはホメオパシーの実践者、推進者であり、西洋医学ではなく代替医療で初めて大学の教授になった人だ。その人が、こういう結論に達している。

    第一章はモノゴトを「科学的に検証する」ということを丁寧に解説している。科学的な検証によって否定された瀉血や強制労働などの有害な治療法。科学的な検証により肯定された感染症に対する清潔/消毒/ワクチンの有効性。二重盲検やランダムサンプリングなどの手法がなぜ大切なのか、豊富な事例を使って説明する。
    その後、上にあげた4つの代替医療の有効性を順番に検証していく。

    本書の白眉は「プラセボでも治るならいいじゃない」に対する反論だ。
    (a)科学的に検証された現代医療の治療法では、生理的化学的な効果とプラセボ効果の両方を得られる。代替医療にはプラセボしかない。
    (b)プラセボ効果は効果が不安定である。例えば、信じる人にしか効かずバレると効き目が無くなる、同じ症状に対する処方がバラバラ、など。
    (c)プラセボでは治らない病気がある。ビタミンの欠乏による壊血病、不潔な環境での感染症など。代替医療は概して「何にでも効く」と主張する。
    (d)プラセボは進化しない。現代医療は進化改善し続けている。
    (e)現代医療は、医師も製薬会社も厳しい何段階にも及ぶ審査が課せられている。それでも医療事故が起きている。代替医療にはそれがなく、簡単なトレーニングで治療者になりほぼノーチェックで薬を処方している。その結果起きている事故について、あまり知られていない。
    などなど。

    私個人は、家族友人に現代医療の従事者が多いこと、それなりに科学的論理的な思考を好むことから、どちらかといえば現代医学寄りの人間だ。一方で、文化人類学を研究したことから、近代科学になじまない考え方の価値をも大切に思っている人間だ。
    ホメオパシーは完全にアウトだと思っていたが、鍼を含む東洋医学や、カイロプラクティックと通じるところのある整体には惹かれるものがあり、「信じれば救われる」のを良しとする信条の持ち主だ。
    代替医療に対しては「プラセボよりはある程度マシな効果がある」と思っていたのでショックを受けている。本書は「ほぼプラセボしかない」と言っているから。

    読み終わって「ちょっと待ってくれ、時間が欲しい」と著者に呼びかけてしまった。

    ただ、これだけは言える。
    本書が大前提にしている「(本人や周りの意思と関係なく)病気が治ることは良いことだ」は、常にそうとはいえず、良い場合とそうとは限らない場合があるということ。
    本書の「科学的な検証」が有効な射程とそうでない領域があるということ。
    全体は部分の集合ではなく、生物としてのヒトは細胞の集まりかもしれないが生きている人間はそれ以上の何かであるということ。

    なお、少々気になったのは、本書の肩入れ。代替医療の*効果*になると科学的に有為かを厳しくチェックしているが、代替医療の*副作用*となると(代表性バイアスにとらわれる傾向にあるなど)科学的な態度ではなく「ほら見ろだから代替医療はダメだ」という傾向が見られる。この点は残念。

  • 代替医療の問題についてはかなり前から気になっていて、一度時間をかけてしっかりした本を読んでひと通りの基本事項を頭に入れたいとおもっていた。そして代替医療を批判をするにしてもどういうロジックの組み立て方があるのかを見ておきたかった。科学的なデータに基づいて代替医療を分析した一般向けの書物はきっとたくさんあるんだろうけど、文庫でお手軽に手に入り評価も高い本となるとやはり『代替医療解剖』だろう。サイモン・シンといえば自然科学の話題を一般向けにわかりやすく解説した数々の著作で本邦でもすっかりおなじみである。期待通り、本書のクオリティは高い。医療の有効性を適切に評価するには一体どのような試験が必要なのか、医療の歴史をひもときながら初心者にもわかりやすく解説されている。最初に「科学的根拠に基づく医療(EBM)」の基本を解説した上で具体例を見ていく構成なので、なにより明快である。また著者にエツァート・エルンストが加わり、科学的なデータの取り扱いや分析など専門性が要求される場面での情報の確度、信頼性を一段高いものにすることに貢献しているとおもわれる。そして代替医療に対して本書が下している評価も十分納得できるとおもう、「科学的な視点に限定すれば」。実際科学的な分析についてはまったく申し分ない。といっても素人のわたしが厳密に判定できるわけではないけれど、科学的な分析に重大なまちがいがあれば辛い評価がつけられているはずで、その点はひとまず信頼してよいだろう。しかし、この「科学的な視点に限定すれば」というのが相当曲者。
    たしかに代替医療の有効性や安全性に論点をしぼるなら、本書の結論は妥当である。仮にわたしが主流の医療に不満を持ったとしても、有効性や安全性の不確かな、あるいはプラセボ以上の効果が見込めなかったり危険があったりする代替医療に手を出したいとはおもわないだろう。その点に異論はない。しかし本書の主張は「医療はどうあるべきか」にまで射程がおよんでいる。そうなると「代替医療の有効性や安全性を検証したらこうなりました」という科学的な視点だけで「だからこうすべき」と結論を急げば当然無理が生じてくる。事実、本書の6章はかなり議論が粗いと言わざるをえない。
    たとえば著者らは「効果が証明されていない、または反証された医療を広めた責任者トップテン」と題して、さまざまな人たちを批判する。メディアを「代替医療に対しては、あまりに肯定的、かつ素朴な見方を示す傾向」がある一方で「通常医療のリスクをセンセーショナルに報道する」と批判している。メディアに対する本書の指摘はたしかに当を得たものである。しかしそもそも「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」と言われるように、ニュースの価値は必ずしも内容の正確さだけで決まるとは言えず、情報の意外性やもの珍しさで決まる面も多分にある。この前提に立てば、メディアが代替医療を肯定的、通常医療のリスクを批判的に報じるのだとすると、それは代替医療が(よくて)玉石混淆、通常医療は信用できるというのが世間の相場だという状況の裏返しと解釈すべきことであり、それは著者らにとっても悲観すべきことではないはずである。ところが著者らは「(主流の医療に対して)新聞や放送局はいたずらに攻撃的」「小さな問題を大きな恐怖にふくらませたり、暫定的な調査結果を、国全体の医療にとっての脅威に仕立てたいという気持ちに逆らえないようである」などと「想像力」をたくましくしながらメディア批判を展開する。メディアに批判されるべき点があることに異論はない。しかし一方でメディアとはそういう性質を持った存在であり、踏みこんだ批判をしようとすれば情報の受け手になっている大衆への批判もさけて通れない。それにしては本書のメディア批判はあまりに表面的だし稚拙と言わざるをえない。
    また著者らは「政府と規制担当当局」にも責任があるとする。政府は規制をするなどして「積極的な役割を果たすべき」だが「政府は代替医療に穏便な対処」をしており、「政府は……あいまいに逃げてきた」と主張する。たしかに科学的な検証結果と現実を見比べてそのように結論したくなるのは理解できる。しかしたとえば日本の場合を見ても、医療行為については国が資格を与える制度設計になっているし、医薬品などについても薬事法で規制がなされている。ルールを満たしていないものについては品質の保証はありませんという形で、規制の内側と外側とで線は引かれているわけである。著者らは「代替医療は安全性を問われない別世界のなかで、ほとんど規制を受けずにすんでいた」と主張するけれども、そもそも医療制度の枠組みの外側と内側とが同等の条件でないのは当然の話だし、枠組みの外側でやっている人たちに内側でやらないのはおかしいと言う筋合いもないだろう。もちろんそれだけでは一般の消費者が被害を受ける危険もあるので、消費者保護のために政府が規制をきびしくするという方向の議論はあってもよいとおもう。しかし代替医療の包括的な規制となると政府の介入がかなり強力になるので、相当慎重でなければべつの問題が生じる危険性が高い。たとえば本書の付録の「代替医療便覧」にはさまざまな代替医療が列挙されており、その中にはどういうわけか風水が登場する。著者らは風水を「代替医療」だと認識しているようだけど、風水は占いの類であって、少なくとも医療介入でないことは明白である。占いの類まで「代替医療」にふくめて議論するということは、つまり著者らは占いの類であっても規制の対象にすべきと考えていることに他ならない。そうなると著者らが好むと好まざるとにかかわらず、オカルトはもちろん神秘を主張する宗教なども規制の射程に入らざるをえなくなってくるだろう。問題はそこまで巨大な権限を政府に認めるべきかどうかを科学的な視点だけに基づいて決めることの妥当性である。「政府は……代替医療産業と対立するのを恐れているのかも」だの「有権者の気分を害したくないのかも」だのといった推測はもはや行政に対する無知を露呈するものでしかない。
    著者らは医師たちにも問題があると主張する。この点については一理ある。とくに「(患者が)代替医療を使うきっかけの少なくとも一部は通常医療への失望である」という指摘は重要である。ただ、個々の医師の態度が通常医療への失望を生む原因のすべてなのかという点はもっと掘り下げるべきだろう。主流の医療では医師の診察時間が短くなりがちで、しかし診察時間を長くするためには莫大な予算が必要になる。この点は一応言及されているけど、課題はそれだけではないだろう。国ごとに事情はちがうものの、たとえば待ち時間が長すぎるだとか、そもそも病院へ行くにしても制約があるだとか。アメリカにいたっては医療費が相当高額で、お金もなく保険にも入っていない人にしてみれば、代替医療の方が安ければそっちに行くことは十分考えられることだろう。「セレブリティ」が代替医療を選択することについては本書でも言及されているものの、他方でお金のない人にも事情があるわけである。「政府と規制担当当局」によって解決されるべき医療の課題には、こうしたことも少なからずふくまれるとわたしはおもうけれど、本書は「政府と規制担当当局」に対しては規制のあり方を問題にするばかりで、医療保険制度全体をどうすべきかという視点を欠いているようにおもう。
    たとえば本書は「スモールウッド・レポート」について、「彼とその研究チームは医療経済を専門としているわけではなく、実際、代替医療に関する研究データの読み方はあまりにも甘い」と批判を加えている。なるほど、科学的な視点に基づいてこのレポートを切って捨てるのはたやすい。では、こういうレポートが出てきた背景にたとえば、国家予算に占める医療費をとにかく圧縮したいという動機付けがありそのために代替医療が検討された、というような事情はなかったのだろうか。あるいは通常医療のコストがあまりに高額なので代替医療が積極的に検討されているという側面はないのか。本書では一部の代替医療について高額であるとか金儲け主義であるなどの批判が見られるけれども、そういうミクロな話ではなく、国家予算の規模で見て医療費はどうなのかという議論をしないことには、代替医療を支持する大きな動きが出てくる背景について説得力のある説明はできないのではないだろうか。「科学的な視点に基づけばこういう結論が出てくるのに現実はこれに反している、ということは彼らが真実を知らないにちがいない」ではなくて、「現実が理屈の通りになっていないのはどうしてなのか」とさらに考えることができればもっと深い分析ができただろうに、とわたしはおもう。
    本書は6章でさまざまな人たちを批判しているけれど、そうした中でも医療について知らない一般の人たち、つまり患者になるかもしれない人たちに批判の矛先を向けないのは徹底している。この姿勢は大変評価できる。本来説得すべき相手を無知だと批判してもいいことは何ひとつないからである。著者らはプラセボ効果に頼った治療を避けるべきという考えを示し、「医師と患者の関係が、嘘のない誠実なものであってほしい」と述べる。この点にはわたしもなんら異論はないし、そうあってほしいとおもう。しかし一方で、本書の筆致には権威主義的な部分が見え隠れすることもまた事実である。実際、代替医療を包括的に規制しようなどというのは「パターナリズム」の極北だろう。あるいは、すべての人たちが「科学的根拠に基づく医療」を理解できれば「パターナリズム」ではないと言えるかもしれないが、それはより一層現実味のない、「すばらしい新世界」のような想定である。本書には、著者らはあわせて三つの博士号を持っていると主張する下りもあるけれど、その割にはすでに述べたように科学的視点の射程外にある論点にまで結論を下そうとしていたりするなど、粗雑な議論が散見される。権威主義臭さを消臭するならするで、もっと徹底的に隠しきってほしかった。
    本書の批判は英国皇太子にもおよんでいる。もちろん事実に基づいた批判なら問題はないはずである。ところが本書では皇太子とMHRA(英国医薬品規制庁)の関係について陰謀論じみた説を紹介しており、この下りは本書の品質をはっきり低下させているとわたしは感じる。実際、著者らは5章で「代替医療業界は、主流の科学者たちを悪者にすることで新たな患者を獲得しようとする」と述べ、「科学に対する攻撃」のパターンを分類してみせる。そして「科学は代替医療に偏見をもっている」というのは「ありえないことだ」とただちに棄却している。なるほど、たしかに「科学者の世界は、自分の主張を支持する証拠を見出すことのできた反主流派を暖かく受け入れる」というのは正しいかもしれない。しかし「科学は代替医療に偏見をもっている」とする主張を棄却しながら、一方で陰謀論じみた説を無批判に紹介しているのでは、まるで説得力がない。著者らは代替医療のセラピストたちについて、「弱い立場の人たちを食い物にし、金を搾り取り、ニセの希望をもたせ、健康を損なう危険にさらし続ける」存在と考えているようだけど、その意見が前に出すぎるあまり自分たちの批判する対象と変わらぬ水準の主張に手を出していたのでは本末転倒である。
    代替医療についてわたしが一番知りたかったのは陰謀論などではなく、たとえば次のような問題である。「通常医療では有効な手段のなくなってしまった人が代替医療を受けたいと言った場合に、それを止めるよう説得することは可能か」。この問題は科学的視点に基づいた合理性だけでは解決できない。本書ではガンを患った人が通常医療なら助かる見込みが十分あったにもかかわらず代替医療に頼ったことで命を落とした、という事例がくり返し紹介される。患者たちの判断はいっけん不合理に見える。しかし彼らがもし何らかの理由で「通常医療では助からない」と信じこんでいたならどうだろうか。あるいは本当に通常医療ではどうにもならない場合、代替医療に頼る判断は不合理と言えるのか。この問題に対して本書はどのような処方箋を示すのか、と期待を抱きながら読みすすめたけれど、ついに見解は示されなかった。「通常医療への失望」という問題は提起されているにもかかわらず、である。
    最初に述べたことのくり返しになるけれども、医療の有効性と安全性を科学的に検証するという点では本書の解説は申し分ない。しかし科学的に得られる結論と現実との間でどのように折り合いをつけるのかという論点の設定が不十分であったり、お粗末であるなど、期待外れの面も小さくなかった。以上をまとめると、代替医療を科学的に分析した本で、手軽に入手できるものとしては本書はかなりクオリティの高い本である。一方、入門用にはボリュームが明らかに多すぎるし、多様な論点をくわしく知りたい向きには食い足りないなど、対象としている読者がよくわからないのが難点である。サイモン・シンの著作をわたしはこれまでに何冊か読んでいるし、それらはたしかに満足できる品質だった。しかし率直に言ってこの本は、サイモン・シンのブランドの割には言うほど大したものでもないとわたしはおもう。代替医療の科学的な分析を軸に据えたいなら、その射程外にあることについては安易に判断を下さないか、さもなければ射程外の論点を慎重に拾っていくしかないだろう。その割り切りが十分にできていないという点で、わたしは世間で言われているほどに本書を高く評価できなかった。

  •  二千年以上前にヒポクラテスは警告した。
    「科学と意見という、二つのものがある。
     前者は知識を生み、後者は無知を生む」

     本書は一言で言うと、怪しい代替医療手段に手を出すのはやめましょう、という点に尽きる。
     なぜならば、通常医療はコストのかかる臨床試験を経て効用と安全性が実証されているのに対し、代替医療は無法地帯のように効能ばかりが強調されているが科学的に立証されていない。
     代替医療はプラセボ効果以上のものはないという結論である。

     「フェルマーの最終定理」などの著書で有名な科学ルポライター、サイモン・シンと、自らホメオパシーを施術する代替医療分野における世界初の大学教授絵エツァート・エルンストによる共著である。

     本書では鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法の成立から現在に至るまでを詳細に検証し、それら代替医療の効果について論じている。
     そして、付録には上記以外の三十以上にものぼる代替医療についても言及されている。

     代替医療が危険なのは、代替医療が有効だと信じ込み、通常医療に影響がある、もしくは通常医療を中止してしまうことで取り返しのつかないほど病状が進行してしまう可能性がある。

     本書が冒頭で「チャールズ皇太子に捧ぐ」と書かれているのは、最大の皮肉である。

  • 原題:Trick or Treatment?: Alternative Medicine on Trial – examines various types of alternative medicine, finds lack of evidence –
    著者:Simon Lehna Singh(1964-)
    著者:Edzard Ernst(1948-)
    シリーズ:〈新潮文庫 Science&History Collection〉


    【目次】
    目次   [005-007]
    はじめに [010-018]

    第 I 章 いかにして真実を突き止めるか 019
    壊血病、英国水兵、瀉血の臨床試験/科学的根拠にもとづく医療/天才の一打

    第II章 鍼の真実 075
    プラセボの威力/盲検法と二重盲検法/試験される鍼療法/コクラン共同計画/結論

    第III章 ホメオパシーの真実 155
    ホメオパシーの起源/ハーネマンによる福音/ホメオパシー――隆盛と衰退、そして復活/『ネイチャー』事件/臨床試験に付されるホメオパシー/結論

    第IV章 カイロプラクティックの真実 241
    科学的根拠にもとづくお茶/患者をマニピュレートする/骨接ぎ万能療法/注意してほしいこと/カイロプラクティックの危険性/代替医療の危険性

    第V章 ハーブ療法の真実 317
    ハーブの薬学/一番大切なのは、害をなさないこと/思慮ある人たちがなぜ?/実際に経験したのだから疑いようがないという心情

    第VI章 真実は重要か? 389
    プラセボ――罪のないささいな嘘なのか、医療として不正な嘘なのか/効果が証明されていない、または反証された医療を広めた責任者トップテン/代替医療の未来

    付録――代替医療便覧 [483-559]
    ◆代替医療の診断法 
    ◆代替医療の療法 
    ◆代替医療の運動療法〔エクササイズ〕
    ◆代替医療の装置類 
    ◆アレクサンダー法 
    ◆アロマセラピー 
    ◆イヤーキャンドル(耳燭療法) 
    ◆オステオパシー(整骨療法) 
    ◆キレーションセラピー 
    ◆クラニオサクラル・セラピー(頭蓋整骨療法) 
    ◆クリスタルセラピー 
    ◆結腸戦場 
    ◆催眠療法 
    ◆サプリメント 
    ◆酸素療法 
    ◆指圧 
    ◆人智学医療 
    ◆吸い玉療法(カッピング) 
    ◆スピリチュアル・ヒーリング(霊的療法) 
    ◆セルラーセラピー 
    ◆デトックス 
    ◆伝統中国医学 
    ◆ナチュロパシー(自然療法) 
    ◆ニューラルセラピー 
    ◆バッチ・フラワーレメディ 
    ◆ヒル療法 
    ◆風水 
    ◆フェルデンクライス法 
    ◆分子矯正医学 
    ◆マグネットセラピー(磁気療法) 
    ◆瞑想(メディテーション) 
    ◆リフレクソロジー(反射療法) 
    ◆リラクセーション 
    ◆レイキ(霊気) 

    より詳しく知りたい読者のために [560-566]
    謝辞 [567-568]
    訳者あとがき(2009年12月 青木薫) [569-575]
    文庫版訳者あとがき(2013年7月 青木薫) [576-584]

  • ホメオパシーやカイロプラクティックなどの代替医療について、施術者が謳う効果があるかどうかを科学的に分析する。
    第1章でレモン果汁をとることで壊血病の発生率が劇的に改善された例等をあげて、「機能のメカニズムは不明でも対照実験を行い、統計的に有意な結果が出ればその治療方法は効果がある」を明確にした上で、メジャーどころの代替医療を分析。
    結論としてはほとんどの代替医療はプラセボ効果以上のものはない。だが、それが今や大きなマーケットになってしまっている現状とそれを手助けした「犯人」についての言及はきびしい。

  • 鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法、等々の代替医療に本当に効果はあるのか?というテーマに科学的に向き合った本。
    「科学的に」と書くと、自然界には科学で解明できないようなものも多くあるから、科学で説明できないからといって、これらの代替医療をダメと決めつけるのはよろしくない、という意見が出てきそうだし、実際Amazonのレビューでも同様の意見を書き、本書を批判している人もいる。
    ただ、その批判はこの本をちゃんと読まないままに発せられている。
    本書ではその治療が効く、効かないを科学的に説明するものではない。「なぜその代替医療が病に効くのか?」という問いは全く発していない。逆に、効果があるのなら、その理由が解明されていなくても良いという立場だ。
    本書で「科学的」アプローチがとられるのは「それは本当に効いているのか?」という効果測定方法だ。
    人間には、思い込みで起きる「プラシボ効果」という現象がある。高価な薬や、体験したこともない治療法に出会うと、その心理的なものだけで、痛みが消えてしまったり、元気が出たりする。
    このプラシボ効果を可能な限り排除して、代替医療の真の効果を測定し、評価している。そこに、「なぜ効果があるのか?」というものに対する回答は必要ない。
    この評価方法で出された答えには、中々対抗しづらいものがあるのでは?という気がする。
    ここで鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法のどれが効果が認められる代替医療なのか?という結論は書かないでおく。評価方法を知らないままに結果だけ聞いたとしても説得力はあるまい。
    その結果を知りたい人は是非本書を手にとって欲しい。

  • ナイチンゲールも悪弊を駆逐した人の一人。

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