- Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102159767
感想・レビュー・書評
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本書は、代表的な代替医療である、「鍼療法」、「ホメオパシー」、「カイロプラクティック」、「ハーブ療法」について、本当に治療効果があるのか、安全性に問題ないのかを、様々な臨床研究データのうちの信頼性の高いデータに基づいて出来だけ客観的に判定しようとした書。
判定に当たり最も決定的な証拠を与えてくれるのは、大規模な「二重盲検化されたランダム化プラセボ対照化試験」であり、更に、様々な試験結果をメタ解析することによって、その精度を向上させる事ができるのだという。
そして現時点(2007年時点)で分かったことは、「四つの治療法のなかでは比較的成績の良かったハーブ療法は、いくつかのハーブで効果が示されているものの、ほとんどのハーブでは効果が誇張されていること」、「カイロプラクティックにはわずかな効き目がありそうだが、それも腰痛の治療だけに限られる――それ以外の主張には裏付けがない」こと、「鍼も同様で、ある種の痛みや吐き気に対してはわずかな効果があるかもしれないが、それも微々たるものでしかなく、鍼にはやるだけの価値がない可能性も高い」こと、「ホメオパシーはこれらの四つのなかでもっとも成績が悪い――誕生以来二世紀が経ち、二百以上の臨床研究が行われているにもかかわらず効果が証明できていないという、信頼するに値しない治療法である」ということだという。
その他にも、付録として幾つかの代替医療についての判定結果を掲載しているが、そののほとんどには、治療効果が見られないとのこと。一見効果があるように感じられるのは、プラセボ効果によるもののようだ。
なぜ効くのかといったメカニズムは問わず、実際に効果が出ているかだけを統計的に分析した結果なので、本書の判定結果はかなり信頼できると思う。中でも、ホメオパシーは原理的にも単なる水や砂糖を摂取するのと変わらないから、なぜ治療効果が未だに信じられているのか、その方が不思議なくらいだ。
ただ、個人的には、鍼(や指圧など)は、体の凝りをほぐし、バランスを整える上でかなり有効で、ひいては体の不調のうちの一部について改善させる効果がもっとあるんじゃないかと思っている。あの痺れるような鈍痛と気持ちのよさは、体に効いているとしか思えないし。東洋医学的な発想(患部に着目するのではなく、体全体のバランスを整えることで病の根本原因を解消させる)も正しい考え方だと思う。「瞑想やマッサージなどリラックスしてストレスを解消することにより、全体的な健康改善に役立つものもある」とのことなので、鍼や指圧の効果もこの辺と同じようなものなのかもしれないが…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法、等々の代替医療に本当に効果はあるのか?というテーマに科学的に向き合った本。
「科学的に」と書くと、自然界には科学で解明できないようなものも多くあるから、科学で説明できないからといって、これらの代替医療をダメと決めつけるのはよろしくない、という意見が出てきそうだし、実際Amazonのレビューでも同様の意見を書き、本書を批判している人もいる。
ただ、その批判はこの本をちゃんと読まないままに発せられている。
本書ではその治療が効く、効かないを科学的に説明するものではない。「なぜその代替医療が病に効くのか?」という問いは全く発していない。逆に、効果があるのなら、その理由が解明されていなくても良いという立場だ。
本書で「科学的」アプローチがとられるのは「それは本当に効いているのか?」という効果測定方法だ。
人間には、思い込みで起きる「プラシボ効果」という現象がある。高価な薬や、体験したこともない治療法に出会うと、その心理的なものだけで、痛みが消えてしまったり、元気が出たりする。
このプラシボ効果を可能な限り排除して、代替医療の真の効果を測定し、評価している。そこに、「なぜ効果があるのか?」というものに対する回答は必要ない。
この評価方法で出された答えには、中々対抗しづらいものがあるのでは?という気がする。
ここで鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法のどれが効果が認められる代替医療なのか?という結論は書かないでおく。評価方法を知らないままに結果だけ聞いたとしても説得力はあるまい。
その結果を知りたい人は是非本書を手にとって欲しい。 -
ホメオパシーを信頼する気になる人が少なくない事が不思議
googleって手遅れにならない程度に医者に行くべきか -
『代替医療解剖』
原題:Trick or Treatment?: Alternative Medicine on Trial – examines various types of alternative medicine, finds lack of evidence –
著者:Simon Lehna Singh(1964-)
著者:Edzard Ernst(1948-)
シリーズ:〈新潮文庫 Science&History Collection〉
単行本:『代替医療のトリック』(2010年)
【版元】
〈http://www.shinchosha.co.jp/book/215976/〉
【目次】
目次 [005-007]
はじめに [010-018]
第 I 章 いかにして真実を突き止めるか 019
壊血病、英国水兵、瀉血の臨床試験/科学的根拠にもとづく医療/天才の一打
第II章 鍼の真実 075
プラセボの威力/盲検法と二重盲検法/試験される鍼療法/コクラン共同計画/結論
第III章 ホメオパシーの真実 155
ホメオパシーの起源/ハーネマンによる福音/ホメオパシー ――隆盛と衰退、そして復活/『ネイチャー』事件/臨床試験に付されるホメオパシー/結論
第IV章 カイロプラクティックの真実 241
科学的根拠にもとづくお茶/患者をマニピュレートする/骨接ぎ万能療法/注意してほしいこと/カイロプラクティックの危険性/代替医療の危険性
第V章 ハーブ療法の真実 317
ハーブの薬学/一番大切なのは、害をなさないこと/思慮ある人たちがなぜ?/実際に経験したのだから疑いようがないという心情
第VI章 真実は重要か? 389
プラセボ――罪のないささいな嘘なのか、医療として不正な嘘なのか/効果が証明されていない、または反証された医療を広めた責任者トップテン/代替医療の未来
付録――代替医療便覧 [483-559]
◆代替医療の診断法
◆代替医療の療法
◆代替医療の運動療法〔エクササイズ〕
◆代替医療の装置類
◆アレクサンダー法
◆アロマセラピー
◆イヤーキャンドル(耳燭療法)
◆オステオパシー(整骨療法)
◆キレーションセラピー
◆クラニオサクラル・セラピー(頭蓋整骨療法)
◆クリスタルセラピー
◆結腸戦場
◆催眠療法
◆サプリメント
◆酸素療法
◆指圧
◆人智学医療
◆吸い玉療法(カッピング)
◆スピリチュアル・ヒーリング(霊的療法)
◆セルラーセラピー
◆デトックス
◆伝統中国医学
◆ナチュロパシー(自然療法)
◆ニューラルセラピー
◆バッチ・フラワーレメディ
◆ヒル療法
◆風水
◆フェルデンクライス法
◆分子矯正医学
◆マグネットセラピー(磁気療法)
◆瞑想(メディテーション)
◆リフレクソロジー(反射療法)
◆リラクセーション
◆レイキ(霊気)
より詳しく知りたい読者のために [560-566]
謝辞 [567-568]
訳者あとがき(2009年12月 青木薫) [569-575]
文庫版訳者あとがき(2013年7月 青木薫) [576-584] -
医療分野に格段興味があるわけではない私でも新しい知識、知らないことを知るのはいいものだと思わせてくれる本でした。
結構ボリュームはありますが、読みやすいと思います。
ライミーの話に始まり
臨床試験がどれだけ画期的か
「瀉血」とは何かすら知らない私からしたら
全ての知識が新しく感じました。
究極の問い、プラシーボ(プラセボ)効果を
発揮する(そして実際症状が良くなる)のであればその効果のみでも薦めていいのではないかというところまで突き詰めてある所がよかったです。 -
科学的思考の素朴な重要性を改めて突きつけてくる。自然科学の高等教育を受けて、分かっているつもりでも、ふとした瞬間に非科学的な思考に陥ってしまう。ことが健康に及ぶと尚更である。漠然と「そうかもしれない」と思っていた具体的言説についてもバッサリ目を覚まさせてくれる。
カール・ポパーの「客観的知識」にくどくどと分かりにくく書いてあった科学の在り方について、具体例を交えて非常に分かりやすく理解することができる書とも言えないだろうか -
鍼、カイロプラクティック、吸い玉療法、磁気療法…様々な代替医療に科学的な根拠がほぼ無いのには驚いた。聞いたこともない療法もあり動画で確認した。健康なときに読んでおいて良かった。
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サイエンスノンフィクションの大御所サイモン・シン氏が今回取り上げるテーマは「代替医療」。通常医療と比べて代替医療は効果があるのか、皆が抱く疑問を科学的アプローチで検証・解明する。鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法をメインとし付録として51の代替医療が取り上げられている。
代替医療に治癒効果があるか否かは本文を読んでいただくとして、通常医療(すなわち西洋医学)への不信感が代替医療(東洋医学もある)の活況を許している側面がある。近代まで行われていた瀉血は何故効果が有ると言えるのか何故効果が無いと言えるのかの代表例であろう。そうした点から一定勢力かつ既成権力にありつつある代替医療を検証・批評するには相当勇気ある行為である。ランダム化臨床試験を用いた効果測定、プラセボ効果と害の対比など極めて理路整然と客観的に分析されており著者らの問題意識の高さが窺える。
例えば444ページのDHMO(一酸化二水素)はなぜ依然として放置され全く問題視されないのか大きく疑問である(内容は読んでのお楽しみ)。医学が発達し我々の健康寿命が伸び続けるからこそ本書で語られるような内容の啓蒙活動は益々必要であろう。 -
18/12/25読了
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読んでよかったと言える本。皆にもお勧めしたい。
この著者のシリーズは興味深い話が多い。
現代医療の臨床検査による医療の効果の測定について、今では当たり前になっているけど、思ったよりも最近になってから定着したのだという印象を受けた。
自分が歳をとったので、100年前というのが、古いとは思うが、以前よりも近いと感じるためだと思う。
また、私も鍼には効果があるのでは?ってなんとなく考えていたけど。まったく効果がないとは、そこはちょっと意外だった。
海外の話だが、ホメオパシーのようないかにもいい加減に聞こえるものが大手を振って医療行為としてなされているかと思うと怖くなった。