ケインとアベル 下 (新潮文庫 ア 5-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102161043

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです!

    最後のほうの本気のやり合いは、何と言うか、人間の醜さだなあ・・とちょっと引いて読んでいましたが、五番街ですべてが報われた感じ。
    すれちがって会釈するだけのふたり!
    そして最後に明かされる、すっかり忘れ去ってた伏線!

    あと、終盤で、それぞれの息子と娘が愛し合って結婚するっていうのもいいなぁと思いました。愛は、金にも復讐心にも負けないんだな!
    すばらしかったです。

  • 若い頃に得た才能を発揮し続け、実業界での大成功をおさめ、また、第二次世界大戦への参戦を通じて得た社会的な名声の陰で、政治・経済・法律を用いた二人の闘いが始まった。

    お互いに相手を倒すことを目標とする中で、次々と大切なものを失い、
    そして後悔をするが、引き返すことが出来ない。
    「プライドよりも大切なものがあることを教えてあげて欲しい。」というセリフがあったけど、二人には何も見えないかのように闘いが続く。

    闘いの後、得られたものがないことに気づく二人に訪れた最後のシーンは、なんとも言えない気持ちになった。

    二人の出生から最期までが20世紀の世界とアメリカの歴史と重なっていて、重厚で読み応えがあった。

  • ケインとアベルは最後の最後まで対立していた。
     
    お互いの大事な問題の時に一度ずつ歩み寄ろうと提案したのに、頑固なために結論一度も話し合うことはなかった。

    息子のリチャードも娘のフロレンティナも、お互いの親を責めることはなく、感謝の気持ちを持っていたが、互いの両親が一歩も引かずウィリアムは一度もフロレンティナと話すことはなかった。

    相手を恨み続けることは、自分を立ち止まらせてしまう。仕事ではうまく行くかもしれないが、自分のプライベートを、心を縛り付けてしまう。

    仮に誰かが苦しみ消えてしまうことがあっても、悔しくて殺したいと思うことがあっても、まずは対話をして、お互いのその時の状況を知ることは大事なことだと思った。
    対話はできないとしたら、想像してみること。

    あとになって、その人のせいではなかったことを知ることはとても悲しいことである。

    後悔は先に立たないもの。

    初めはケインとアベルがどのように交わって話が進んで行くかと思った。途中交わって、犬猿の仲になって、それでも和解して、共にハッピーエンドになるものだと思っていた。しかしその逆だった。もし2人が早めに和解し、力を合わせて仕事をしていたらどんなに繁栄して、幸せになっただろうかと思うと残念だった。

    和訳の永井淳のあとがきで、【小説、アメリカ現代史】と話している通り、ストーリーとアメリカやヨーロッパの歴史と共に話が進んで行くのはとても面白かった。



  • ページをめくる手が止まらなくなるような小説です。
    20世紀。ポーランドから放浪の旅を経てアメリカのホテル王になったアベルと、ボストンの名家に生まれ大銀行の頭取となったケイン。
    世界恐慌や第二次世界大戦といった、歴史的大事件に翻弄される二人の数奇な人生。生まれも考え方も対照的な二人が、互いをを蹴落とそうと繰り広げられる頭脳戦。そして迎える2人の最期と感動的な結末。
    聖書の「Cain」と「Abel」を彷彿とさせるタイトル。響きからして絶対面白い!と思ったらそれ以上の面白さでした。サスペンス、ロマンス、戦争、歴史小説と、いくつもの物語を詰め込んでいるのに全く陳腐にならず壮観です。
    時間を忘れ、物語の世界に没頭したくなった時に良い本だと思います。

  • 結末は若干拍子抜けの面もあったが、あっという間に時間が経つほど夢中になって読んだ。

  • 上巻に引き続きどんどん読み進め、ほぼ一気読みだった。上下巻通しての感想を一言で表すとすれば「どっちもどっち」という言葉が一番しっくりくる。お互いに対する憎悪もさることながら、めまぐるしく時代が変わっていく中で年老いていく二人はどちらも新しい時代に適応しきれなかった部分もあるように思う。戦争、ビジネス、復讐など様々な要素がこの小説にはあるが、アメリカや世界全体で価値観が大きく変わっていく過程と、自分の個人的な恨みに固執するあまりその流れに乗り切れなかった哀れな男の物語と言えるのではないだろうか。

  • ココロおどる"ちゃんぽんドラマ"

    経営者の覚悟、決断と孤独。そして交差する感情と憎しみ、家族愛。色々渋滞していてお腹いっぱいだが、すんなり読めてしまう所が秀逸

    □先に感想から
    前半に比べると心理描写多めでドラマチックになるものの、アベルとケインからそれぞれ学べることは多い。特にケインがレスター銀行の頭取になる際の取締役になる際のリスクの取り方、事前根回しは学びが多い

    ・人間ドラマも潮らしい
    ちょっとベタな展開ではあるが、親友の死や憎悪のある家系同士の結婚も単なるピースではなく、前後繋がるから面白い

    ・話さなきゃ伝わらないが、言わない正義もある
    マシューも病気を黙っていたし、ウィリアムもアベルを買っていたことを最後まで言わなかった。(途中から憎しみが上回り言えなかった)
    わだかまりは言葉にしないと溶けそうにない、プライドのある経営者が歩み寄るのは難しい

    ・アベルから何を学べるか
    サイコパスぽいアベルだが娘への想いとか、自身への理解もない太って見た目も悪くなった女房を捨てるとか、人間ぽいのもアベル。あれだけ壮絶な経験の後に這い上がってきた中での人間らしさ、凡庸さみたいなところが面白い

    ・アベルもケインも抜かりなし
    さすが名経営者と名頭取。抜かりなしは言い過ぎで、抜かりあると片方に確実に刺されている。両者の緊張関係がお互いの能力の高さを示している。
    ※ただし別の感想にあったが、ちょっと憎しみ合いが長く、凡人には共感が難しいかも

    ・脇役が良い味を出している
    副頭取のトニー・シモンズとか、悪役のオズボーンとか、お互いの親友であるジョージとマシュー、アランロイドとかリロイ娘とか

    ■概要(完全ネタバレ)
    それぞれ順調に成長するアベルのバロングループホテルとケインの銀行、しかも親友のレスター家が途絶え?レスター銀行の頭取になる。お互い世界恐慌や大戦を乗り越えながら順調に成長するも、恨みの種があって互いの足を引っ張る様になる。
    アベルは恩人で親友のリロイをケインに殺されたも同然と思い、ケインは母の死のきっかけとなった詐欺師オズボーンと組むアベルを憎む。アベルは本当はケインに助けられたのを知らないし、アベルも敵の敵は見方で仕方なくオズボーンと組んでいた。
    大戦にそれぞれ兵士として出願する中で、実はアベルが瀕死のケインを助けていたのも数奇な運命か?
    交差する人間模様と激動の20世紀のダイナミズムを文字面だけで体感できる超大作!

  • エンタメとしては面白いし、人生訓にもなる。

  • 娘には勝てない。
    育ての母親の場面が辛い

  • かっこいい人は、良いことをしても公にしないってのがよくわかる。それで、人の口から広まってその人の価値が高まる。

    リチャードはそんな人でした。しかも、自分の発言や行動が相手や社会にどんな影響を及ぼすか、そんな広い視野を持った素晴らしい人間でした。

    リチャードとアベル、色々なすれ違いや感情の入り乱れもあったが、最終的には心が温まる結末でした。


    欲望にまみれすぎても家族や周りの人との人間関係が崩れる。自分のためよりも、その人たち一人一人を思った行動が、良い人達に恵まれる方法なんだなと思いました。良い小説でした。

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著者プロフィール

ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Howard Archer)
1940年生まれのイギリスの政治家、小説家。一代貴族の貴族院議員。オックスフォード大学卒業後に政治家に。大ロンドン議会議員、庶民院議員(3期)、保守党副幹事長などを歴任したが、 1973年に投資で失敗して財産を全て失ったことを契機に、1974年10月の総選挙時に政界から退いた。
1976年に発表した『百万ドルをとり返せ!』が大ヒットして借金を完済、1985年に政界復帰し党副幹事長を務め貴族院議員に列されたが、偽証罪によって2001年に実刑を受け服役。2003年以降、作家活動を再開した。
代表作に『プリズン・ストーリーズ』、『クリフトン年代記』シリーズなど。

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