- Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102165089
感想・レビュー・書評
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フリーマントルがデイリー・メールの外報部長を辞して、作家専業に身を転じてからの第一作であり、"チャーリー・マフィンシリーズ"が始まる直前の1976年の作品でもある。四年に一度、11月に実施される米大統領選挙に絡んで、KGBが巡らす陰謀を背景に、大富豪ホラスを陥れるための作戦のカギを握る老スパイ・アルトマンの苦悩と闘いを描くスパイ物。念入りな人物造形とねちっこいまでの心理描写はフリーマントルらしさでもあるが、読者を選ぶ作風でもある。彼の初期作品は、人を道具扱いする諜報戦の持つ非人間性の告発、その世界に生きる者の苦悩を描く、丁度グレアム・グリーンやジョン・ル・カレなどに通底するものだ。チャーリー・マフィン以降は娯楽性も加味した作品も増えてくるが、本作品はうらぶれた老スパイが抱える過去と、現在も続く悲劇が印象的で、物語の色調は暗いし結末も救いがない。話の筋は想像力で補わなければならず、何が進行してるのか解説してくれるわけではないので、工作戦の把握に骨が折れる。当節風のテンポのよい娯楽小説を求める人は手に取らない方がいいだろう。
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フ−13−8
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http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/4102165088
── フリーマントル/大熊 栄・訳《十一月の男 19851025 新潮文庫》