羊たちの沈黙(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102167090

作品紹介・あらすじ

新たに誘拐されたのは上院議員の娘だった。捜査当局をはさみ、犯人の特定をめぐって議員とレクターとの間で取引きが進行する。だが、その過程でレクターは秘かにある計画を練っていた。一方、クラリスはレクターとの会話を咀嚼し、犠牲者の身辺を洗うことで、しだいに"バッファロウ・ビル"に肉薄してゆく-。稀代の"悪"と対峙し、内なる暗黒とも戦う彼女が迎える壮絶な終幕。「このミステリーがすごい!」1989年版海外編、週刊文春20世紀傑作ミステリーベスト10海外部門、NPRスリラー小説史上ベスト100・1位。

感想・レビュー・書評

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  • 映画は断片的にしか見たことがないので、読んで初めて知ったのだが、クラリスがまず捜査官ではあるものの教育実習生だったこと。
    これが頭にあって最初
    「この主人公でやっていけるのか?」という印象を持ってしまった。

    読んでて緊張したのは、捜査に抜擢されて優秀なベテラン捜査官のクロフォードの下でこなす任務に求められているレベルが高い。(少なくとも単純な、任務ではなく駆け引きを委ねられてる)
    そして、肝心のレクター博士とのやり取り、言葉の使い分けにまで気をつけなくてはならない。結構、押しが強いクラリス。失敗はできない。

    殺人鬼の造詣はさておき、タイムリミットが迫るのも緊張感につながり
    引き込まれたまま読み終えた。
    でも、解説や他の人の感想を読む限り
    何故か前作も、続編も読む気が起きない…なんでだろう。

  • とても面白かった。
    上下巻を一気読み。
    サイコパスの代名詞、レクター博士はやっぱり凄かった。

    FBI捜査官訓練生のクラリスが、刑務所に収監中の狂人サイコパスのレクター博士との面会から連続猟奇的殺人の犯人像に迫っていく。

    とにかくレクターの狂人ぶりが、エグすぎる。
    精神科医でありながら、患者を何人も殺害し、独房に収監されている。隙を見せた看護師の顔を噛みちぎったり、置き忘れのボールペンを使い刑務官を襲ったりと、危険極まりない。
    脱獄のやり口には、驚くばかりだ。
    でも魅力的で憎めない。信用したくなる不思議なキャラだ。

    一方、クラリスは優秀な訓練生だが、派手さの無い田舎出の女性。何故かレクターはクラリスを受け入れ、面会を続けていく。レクターの言葉のひとつひとつが謎かけのようだ。
    訓練生という立場でままならない中、行方不明者を助けたい一心から、クラリスはレクターの言葉を基に単独で捜査を積み重ねていく。
    そして…

    ハラハラ、ドキドキの展開で、ページをめくる手が止まらなかった。
    殺人の動機、方法が猟奇的で残酷。気持ち悪い。
    海外では起こりそうな事件ではある。
    レクターが脱獄したままなので、これから何かが起こるにちがいない。それにクラリスを放っておくようには思えない。
    是非、続編をトマス・ハリスの作品の中から探して読みたいと思う。

  • FBI実習生クラリスは、悍ましき仕業を行った獄中のレクター博士との対話を通じ、連続猟奇殺人犯に迫る。
    クラリスと犯人との死闘に手に汗握る。

    映画のジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの印象が非常に強いが、背景が詳細に描かれた本原作には更に重苦しいほどの心理戦が潜む。息が詰まりそうな緊張感は必読。

    余談だが、映画でレクターを演じたアンソニー・ホプキンスの出演時間はわずか10分強だったとか。
    それなのにあの忘れられない衝撃はもの凄い演技力だとあらためて思う。

    マッツ・ミケルセンがレクターを演じるドラマ「ハンニバル」はこれまた美しい映像で、映画とはまた違った世界観だが、こちらも必見。

  • なんのきっかけだったか、少し骨太で、でも骨太すぎず、読むと背筋がのびるような気概のあるミステリーが読みたいなと思って、映画の印象で、この本を手に取りました。最初は旧訳を読み始めたんですが、セグエ云々の箇所で、なんかいいかげんな翻訳だなあと思って、急遽新訳に切り替えて読みました。おもしろいことはおもしろいのですが、思ったほどではありませんでした。期待しすぎたかな。レクターはもっと巧妙、というか、頭の切れる人物と思っていたし、クラリス・スターリングの印象も、映画の、あのイメージがよくできているだけで、この本の印象はそれほどでもないと思ってしまいました。映画がよくできているという結論かも。【2023年2月8日読了】

  • 映画(ハンニバルやレッドドラゴンは何回か観たけど、羊たち〜はいまだに観れていない……)もあってか、「ハンニバル・レクターの物語」という印象が強かったけど、あくまでほんの一部、「クラリス・スターリングの物語」なんだと実感した。

    上巻を読み、そして下巻を読んで、クラリスがさらに好きになった。

    読みながら、クレンドラー、チルトンには腑が煮え繰り返った……。

  • さすが有名小説。
    行方不明の連続殺人犯を天才連続殺人犯からヒントをもらうという設定がもう面白い。

    翻訳されたものだからか内容がわからないところがあった。

    わからない部分を知りたいので映画も観たい。
















    以下ネタバレ!!!





















    レクターが「私は悪なのか?」と言ってたけど、悪だろと思った。
    災害で人が死ぬのと殺人は違う。

    犯人を見つけた時や死ぬ時があっけない気がした。

    ジェイムガムは生まれた時にジェイムズのSを書き漏れされたりとか、人生単位で生きづらさを感じた。





    【登場人物メモ】
    クラリス スターリング
    FBIアカデミー訓練生。成績優秀。23歳。女性。
    父親が亡くなり、10歳のときに母親のいとこ夫婦へ預けられた。
    モンタナの牧場にいて7ヶ月後に孤児院に行く。


    ジャック クロフォード
    行動科学課課長。53歳。男性。
    お洒落で知的。


    ベッラ
    ジャックの妻。寝たきり。


    ジョン ブリガム
    FBIアカデミー射撃教官


    アーディリア マップ
    クラリスのルームメイト。優しい。


    フレドリック チルトン
    州立ボルティモア精神異常犯罪者用病院院長。
    ヤニカス。性悪。


    バーニー
    州立ボルティモア精神異常犯罪者用病院 用務員。


    ノーブル ピルチャー
    スミソニアン国立自然史博物館研究員


    アルバート ロドゥン
    スミソニアン国立自然史博物館研究員


    ルース マーティン
    上院議員。娘が誘拐される。


    キャサリン
    ルースの娘。誘拐される。


    バッファロウ ビル
    連続誘拐殺人犯の通称。
    186cm86kg 35歳くらい。
    茶髪で薄青い目。


    ハンニバル レクター
    医学博士。連続殺人犯。頭脳明晰。


    ラスペイル ベンジャミン ルネ
    白人男性。46歳。フルート奏者。
    レクターの患者であり、9人目の犠牲者。


    白人男性。27歳くらい。
    ラスペイルの愛人。


    クラウス (ビエットランド?)
    スカンディナヴィア人。船員。若い男性。
    ラスペイルの愛人。

  • ドラマ『クリミナル・マインド』でもそうなんだけど、残酷なことができる犯人には、もう生まれた時からの犯罪者と、成長していく過程での環境が影響しているタイプと、本当に精神的な病気を抱えている人などがいるけど、ガムはやっぱり過去に原因があったりして、こういう犯人は少しかわいそうだな、と思ってしまう。

    レクター博士はたぶん、生まれながらのタイプなんだろうけど、何というか、芸術的であって、知的だから、犯罪者なのに愛されるキャラになってしまう。魅力的すぎる!

    さて、続いて『ハンニバル』を読みます!

  • このミス海外編1989年版1位。超有名な小説で題名は誰でも知ってるみたい。自分も昔映画で観たと思うんだけど全然覚えてなかった。やっぱ世界で読まれてる本は面白いです。翻訳ものは名前覚えるのがしんどかったりするのですが、これはかなり一気読み系で苦にならなかった。サイコパスとの心理戦、頭脳戦のやつ楽しいです。

  • 2023/3/19読了(再読)
    『羊たちの沈黙』ファーストコンタクトは、原作小説ではなく、映画版の方。亡き淀川長治先生が司会していた『日曜洋画劇場』枠で、であった。故にレクター博士のイメージは完全にアンソニー・ホプキンスで固定。許せ、マッツ・ミケルセン……。
    赦しを乞うなら、住野よる『君の膵臓をたべたい』のタイトルを聞いた時、一瞬だけ〈レクター〉シリーズの最新作だと思ったのもそうかな……。

  • バッファロウ・ビルに誘拐された新たな被害者は上院議員の娘だった!犯人の手がかりを握るレクターへ交渉を持ちかける議員。一方、クラリスはレクターとの会話から犯人へと肉薄していく──。

    上巻が“静”なら、下巻は“動”の物語。クロフォードたちの手を離れ、チルトンの策謀とルース議員の介入によりメンフィスへと移送されるレクター。チルトンがセッティングした対面シーンの空気に笑ってしまう。チルトンー!信じた私が間違ってたー!って腹の底から叫び出したくなっただろうね。愚鈍を通り越して恐怖。ああー、レクターに殺されるわコイツってなる。

    監視下を潜り抜けてのクラリスとレクターの再面談も熱かった。クラリスがレクターを騙していたのは事実。しかし、それを踏まえて自分の意思でここまで来て、レクターの洞察力に敬意を表して訴える。さらに自らの過去を交換条件に差し出していく。この子羊たちの悲鳴がクラリスのトラウマであり、救えるか瀬戸際の被害者に重ね合わせているわけなんだよね。レクターが手紙に書いたメッセージも余韻深い一言だった。

    そこからレクター劇場!どれほどバーニーが有能だったか身に沁みる。狼を捕まえたとて、囚われの羊だと思ってはいけないのだ。今考えるとレクターの脱出方法は、ゴールデンカムイでオマージュされてるよね。もちろん、バッファロウ・ビルと江渡貝くんもね!こっちはエド・ゲインが元ネタだけども。

    レクターからもらったヒントによって、バッファロウ・ビルという皮を剥ぎ取って犯人を暴き出すクラリス。その息が詰まる攻防戦もすごかった。読む手に汗がにじんできそうな緊張感。見えるものがすべてではない。暗闇の中だからこそ“見える”ものもある。闇を切り裂くあの銃撃には痺れた。はたして彼女の羊は沈黙したのだろうか。

    最後に好きな文章を引用して終わります。

    p.16,17
    「きみにいま、凍らせてほしいものがある。チルトンとの一件を凍らせてくれ。レクターから得た情報はキープして、もろもろの感情は凍らせるんだ。目標から目をそらさないでくれ、スターリング。大事なのはその一点だ。きみはある情報を得るために努力し、そのために犠牲を払い、そしてその情報をつかんだ。こんどはそれを利用する番だ」

    p.229
    人は最初から目に見えない想像の産物を欲しがることはまずない。欲求とはおよそ想像力に欠ける罪なのだから──人は触知できるものから欲求しはじめる。毎日目にするものから欲求しはじめる。

    p.240
    問題を解決する努力とは、狩猟そのものだ。それは野蛮な喜びであり、われわれの性なのである。

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著者プロフィール

ウィリアム・トマス・ハリス三世(William Thomas Harris III)
1940年テネシー州ジャクソン生まれ、テキサス州ウェイコのベイラー大学(Baylor University)卒業。地方紙記者を経てAP通信社でレポーター兼編集者に。この期間中の知見が小説の機縁となる。
著作は現在5作。映画化もされた『ブラック・サンデー』をはじめ、「ハンニバル・レクター」シリーズの『レッド・ドラゴン』、ブラム・ストーカー賞を獲得した『羊たちの沈黙』に、『ハンニバル』、『ハンニバル・ライジング』。

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