雪のひとひら (新潮文庫)

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制作 : Paul Gallico  矢川 澄子 
  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102168059

雪のひとひら (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • すべてが美しい詩のような作品。

    平凡な女性の一生とは、ちっとも平凡じゃない。
    幸せの形はみんな違うけれど、
    目を凝らして、耳をすまし、心を動かすことは
    豊かな一生の過ごし方だろう。

  • 一人の女性の一生を雪に例えた童話。

    誰もが一度は思う『 自分の生まれた意味 』を
    探すお話。

    ひとつひとつのの言葉が綺麗で優しい。

  • 本書は、雪のひとひら(Snowflake)として生まれた女性の一生の物語である。

    彼女は、折に触れて自分の存在の意味について問うている。

    生まれた瞬間から思っていたのだ。

    「あたかも、ふかい眠りからさめたときの感じにそっくり」で、
    「ついいましがたまでどこにも存在しなかったこの身」のことを彼女は問う。

      わたしって、いまはここにいる。

      けれどいったい、もとはどこにいたのだろう。

      そして、どんなすがたをしていたのだろう。

      どこからきて、どこへ行くつもりなのだろう。

      このわたしと、あたりいちめんのおびただしい兄弟姉妹たちをつくったのは、
      はたして何者だろう。

      そしてまた、なぜそんなことをしたのだろう? (p.7)

    彼女は、同時にさびしさを感じてもいる。

      どちらをむいても、わたしとおなじ、
      生まれたばかりの雪の兄弟姉妹がこんなに大勢いるのに、
      それでいてこんなにさびしくてたまらないなんて。 (p.8)

    そして、そのさびしさをつつみこむ存在があった。

      雪のひとひらは、何かこうなつかしくもやさしい思いやりのようなものが、
      身のまわりをすっぽりつつんでくれていることに気がついたのです。

      だれかがこちらのことを気づかっていてくれるらしく、
      その感じがほのぼのと、こころよく、
      雪のひとひらの全身に、くまなくみちわたりました。 (p.9)

    大いなる問いとさびしさとつつみこむものが、この物語には常に存在するように思われる。

    彼女は、「おのれというものの秘密」を知りたいと思う。

      この身をつくりだしたのは、はたして何者なのか。

      どのような目的があってのことなのか。

      また、このしみじみとした、
      心なぐさまる思いはどこからもたらされるのか。 (p.9-10)

    この問いは、彼女の雪のひとひらとしての一生を貫くものである。

    「何をめあてで行なわれていることなのか」を苦しい時にもまた問うのである。

    どんなときにも何のために誰のためにを考え、
    役に立ちたいと願う彼女は、とても健気な存在でもある。

    深くうずもれ、見捨てられたように感じられるときも、
    今のところ忘れられているだけなのだと信じ、
    自分をいつくしんでくれているその人に訴えかけるのである。

    季節が変わると雪のひとひらは自分の姿が変容していることに気づく。

    彼女は「走りはじめた」ときはそれに気づかない。

    「走りつづけながら」それに気づくのである。

    結晶を持ち、個として存在していた彼女は、
    流動するものになってからも個を持ち続けている。

    周りと同じようでいて確かに違う存在である。

    そして、流れていきながら、またあの孤独感を感じる。

    仲間に取り囲まれているのにさびしいというあの孤独。

    誰も自分のことを気にかけてはくれないし、
    どうなろうときっとどうでもいいのだと思ってしまうとき。

    これは、私たちにも覚えのあるものなのではないか。

    そのとき彼女は出会う。

    自分を個として見つめ、認めてくれる存在に。

    生まれてすぐに孤独を感じたときにつつんでくれた存在とは異なり、
    ここで現れるのは、自分と同じく個を纏うものである。

    雪のひとひらは、この相手にも、根源的なことを問う。

    彼女は、あの問いを忘れていないのだ。

      ね、だれがわたしたちをつくったのかしら。

      わたしたち、なぜふってきたのかしら。

      どうしてここに送られてきたのかしら。

      あなたはどう、だれかが自分のことをいろいろと思いやり、
      見守ってくれているんだとはお思いにならない? (p.69-70)

    彼女の伴侶となる雨のしずくは、
    彼女の問いには現実的な答えを返したのだが、
    現実的ながらも命の不思議について言及している。

    自分が生まれてきたタイミングについて、
    雪がひらひら舞いおりてゆくのが見えたけれども、
    「それでもまだ、こちらの出番ではないから、上空にとどまっていた」
    と語ったのだ。

    「出番でない」のはなぜなのか答えられないし、
    「誰にも説明できない」と思っているけれども、
    自分は「温かい気流に出くわして」ふりはじめたのだと。

    すべてのことにはときがあるということを象徴しているようだ。

    雪のひとひらは彼女にとって最も幸せな時を彼と過ごし、そして彼とともに生きていく。

    雪として生まれ、水として流れて生きた一人の女性。

    伴侶と出会い、共に生き、子を為し、別れを経験し、やがて空へと帰っていく。

    多くの女性が、何代にもわたって生きてきた日々。

    一つ一つが異なり、同時に似てもいる命の営み。

    同じ生き方は選んでいなくても、どこか静かに共感を覚えるところがある。

    同じ生き方は選んでいなくても、女性だからわかるというところがある。

    大いなる問いとさびしさとつつみこむもので始まった物語は、
    また、問いへと帰ってくる。

    途中で大切な者を失ったときに彼女は、
    「いずれ取上げられるものならば、何ゆえに彼はわざわざ彼女に与えられたのか」
    と問うている。

    それは悲しみから来る問いであったが、
    そのとき「彼を呼び戻した者」を強く意識している。

    最後の問いは、死すべくして生まれること、
    無に還るべくして長らえることへの根本的な問いである

    「感覚とは、正義とは、美とは、はたして何ほどの意味をもつのか」という問いは、
    生きることの価値や意味についての問いなのだ。

    雪のひとひらは「終始役に立つものであり、
    その目的を果すために必要とされるところに、つねに居合わせていた」と思い出す。

    ほんのちょっと誰かの役に立っただけでも、
    「むなしくうまれてきたのではなかった」と思うのだ。

    最期の時、一体どんなものを見るのだろう。

    そのとき私は自分をどう思い起こすのだろう。

    私は、一般的な女性の生き方を外れてきた方なので、
    女性の生き様を思い起こさせる作品にはいろいろと思うところがある。

    私は違うという思いを持ってしまうことが多々あったのだ。

    だが、最近、違っても、わかると思えるようになってきた。

    今、これを書いていることは『ちいさなあなたへ』について書けたことと同じくらいに嬉しい。

  • 雪のひとひらの一生を、詩的に表現力豊かに描いている。雪のひとひらが空に生まれてから、また空に帰るまで、穏やかさの中に、大きな愛と深い哀しみが満ちあふれている。

  • 「猫語の教科書」が面白かったので2冊目のギャリコ。

    主人公は雪の結晶
    雪のひとひら

    雪のひとひらを通して女性の一生が描かれている

    何のために生まれたのだろう
    何のために生きているのだろう

    あたたかい 美しい おそろしい すてき 幸せ くるしい 悲しい 好き お日さま ありがとう 春 大冒険 おだやかな日 出逢い 寄り添い 喜び 慈しみ わかれ ほほえみ 旅立ち おびえ 甘やかな夢

    いろいろな感情を得て人は生きている

    雪のひとひらの綺麗な喋り言葉がすてき
    カバーの写真も装幀も挿画もすてき

    ゆっくりと読みたい一冊

  • 何のために生きているのだろう、を描いたお話。

    読んでいて、「どうして周りの人とは会話しないのだろう」と思ったのだけれど
    あとがき等を読んでいて、ひとひらは自分のことを自分だけのものとして考えているんだ、と
    すっかり周囲と比べることになれている自分に恥ずかしくなりました。

    とても綺麗な、世界を愛せるような言葉選びでした。

  • 男の人には共感してもらえない作品だろうなあ、と読み終えて思いました。
    この静かで、全体的に柔らかく、時折訪れる危険な障害など、特に結婚されている人には感じるものがあるんじゃないかなと思います。
    少女時代、好きな人ができて、子供が生まれる。夫の死、子供が旅立ち、静かな孤独の内の死。
    誰の為に、どうして、私がいても意味があるのか。
    社会的ではない自分の存在意義というものは、女の人は無意識に考えるものではないでしょうか。

  • 寓話性が強く、タイトル通り雪の結晶のひとかけらを擬人化して、彼女が最後に蒸発するまでの人生(?)が童話ちっくに描かれていて、それはそれで童話として面白かったんですけど、解説でこれを「女の一生」の寓話化だと断言してあって、それでいっきにシラケました(汗)。確かにそういう読み方もできるだろうけど、それだけみたいに言われるとちょっと微妙。もっとコスモロジカル(?)な視点で私は読んだので、いきなり地に引きずり下ろされた気がしてガッカリでした;

  • 好き。ドキドキする。挿絵も可愛い。いつかこれをあげても恥づかしくないと思える人と親しくなれたら贈りたい。

  • 何となく惹かれて手に取りました。
    雪のひとひらの一生が描かれた作品。

    人生のどこにいるかで受け取り方が変わってくる本なのだろうと思います。
    年を重ねてから、また、読みたいです。

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雪のひとひら (新潮文庫)の作品紹介

ある寒い日、雪のひとひらは生まれた。地上に舞いおりたときから、彼女の長い旅がはじまった。伴侶となる雨のしずくとの出会い、新たな命の誕生。幸福なときも試練のときも、彼女は愛する者のために生きた。やがて訪れた、夫との永遠の別れ、子どもたちの門出。雪のひとひらは、その最期の瞬間、自らの生の意味を深く悟る-。自然の姿に託して女性の人生を綴る、優しく美しい物語。

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