グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.68
  • (65)
  • (177)
  • (129)
  • (31)
  • (1)
本棚登録 : 940
感想 : 112
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102169346

作品紹介・あらすじ

レオに突きつけられた要求は苛酷をきわめた。愛する家族を救うべく、彼は極寒の収容所に潜入して、自ら投獄した元司祭を奪還する。だが、彼を待っていたのは裏切りでしかなかった。絶望の淵に立たされ、敵に翻弄されながらも、レオは愛妻ライーサを伴って、ハンガリー動乱の危機が迫るブタペストへ-。国家の威信と個人の尊厳が火花を散らした末にもたらされる復讐の真実とは-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • レオ・デミドフは赦されたのか?

    それは秘密を持つ者たちの打算に満ちた取り引きに過ぎなかったのではないか
    レオ・デミドフの償いの旅はまだまだ続く

    それにしても主人公のレオは苦難の連続だ
    そして苦難に陥るのも、その苦難からなんとか脱出できるのもレオに同じ資質にたんを発している

    それはもう圧倒的に甘ちゃんなのだ
    元秘密警察とは思えない
    盲目的に愛を信じている
    自分が愛しさえすれば、同じだけ返ってくると思っている
    愛さえあれば怨みは消えてなくなると思っている
    だから騙される
    だから愛する人たちを危険にさらす

    だけどその純真さゆえに諦めない
    愛ゆえに彼は帰ってくる

    愛は罪を赦すのか?!
    答えは三部作の完結編へ!(ババババーン!)

    • 1Q84O1さん
      舞台はソ連でなくドリフターズだったんですね!
      スターリンでなくいかりや長介?
      フルシチョフでなく志村けん?
      ストーリーを勘違いしてましたw
      舞台はソ連でなくドリフターズだったんですね!
      スターリンでなくいかりや長介?
      フルシチョフでなく志村けん?
      ストーリーを勘違いしてましたw
      2023/05/08
    • ひまわりめろんさん
      フルシチョフは荒井注です
      もちギャグが全く一緒なので分かりそうなものです
      なんだバカヤロウ
      フルシチョフは荒井注です
      もちギャグが全く一緒なので分かりそうなものです
      なんだバカヤロウ
      2023/05/08
    • 1Q84O1さん
      何見てんだよ!w
      何見てんだよ!w
      2023/05/08
  • 強制労働収容所での暴動、逃走と、前半は息もつけない。まあ主人公だし死にはしないだろうと楽観していた。それでも痛い話は苦手だ。
    後半、ハンガリー動乱に向けては憎しみから行動する場面が続き、ちょっと嫌になってきた。
    ソ連に対する怒りは本物だと思うけど、フラエラ達はよそ者じゃないか。街がめちゃくちゃになっても関係ないし、誰かを攻撃しても全員他人、終わればどこかに行けばいい。復讐の為にハンガリーを利用したように感じてしまった。蜂起することがハンガリー人の意志でもあるとしても。
    そしてレオは生きるも死ぬも国家から自由になることは出来ないのだろうか。ソ連の強大さを見せつけられた気分だ。この先彼らが家族になれたらいいのにと思った。

  • 極東コイルマでの強制収容所への侵入から暴動。そしてハンガリー動乱へと渡る壮大なソ連の闇と反動をこれでもかと描き出す。
    最後に主人公が幸せになるのが納得いかない。

  • 犯した罪は、改心では消えないのか。
    憎悪が力を孕み、まとまった方向を持つ。

    レオがゾーヤを追う先には、ロシアに対して反旗を翻すハンガリーの姿があった。
    ハンガリーが置かれた状況から、ゾーヤは「家」と見なし、ハンガリー動乱の先頭に立つのだが。

    レオとライーサの相変わらずの無敵具合に脱帽。
    ワシーリーと違って、フラエラが「何をかを為す」存在になって散る最期は、考えさせられる。
    単なる個人の復讐譚ではなくなり、まさに国が動いてゆく筋書き。
    一作目よりも、そこに変化が見られる。

    三作目も楽しみ。

  •  『チャイルド44』は版を重ねる売れ行きとなったが、一つには若い作家が最も思い歴史の一つと言えるスターリン体制化のソヴィエトを背景に、娯楽小説としてのミステリを構築するとともに、骨太の人間ドラマを軸に据えて見せたその荒業ゆえだろう。しっかりした歴史考証がなければ書く気にもなれないだろう暗黒の国、冬の時代にメスを入れ、その国情を取り入れたストーリーだからこそ、主人公にはどうしようもない大きな時のうねりの中で翻弄される人生こそが一つの読みどころでもあるわけだ。

     粛清の嵐の中で次々と消えてゆく人間を間近に感じながら、そうした事実に眼を瞑って自分たちだけは生き延びようと考える警察官に対し、裏切りの気配を示すその妻。抱え込まねばならない老父の安全や、守らねばならない生存そのもの。それらを負荷として負いながら捜査を行うという非常にタフでハードなミステリであった前作。

     それを上回る過激さを持って、続作はまたも時代の歯車が軋んでゆく音を確実に捉えたままソヴィエト連邦を広大に疾駆する。

    舞台はスターリンの死後。フルシチョフの台頭により、スターリン政権下では管理側であった者たち(もちろん主人公のような警官も含まれる)が、当時迫害された者たにの復讐の牙に曝されるという時代設定である。権力者が代われば、時代は180度、違う方向を向く。かつての正義は罪に代わり、生きる礎が音を立てて崩れてゆく。

     前作で協力者となった仲間の死。前作で部下が殺害した罪なき家族の一員である少女を育てる困難さ。復讐や怒りを、受ける側の論理で展開するレオ・デミトフの旅は、試練に満ち満ちており、物理的のみならず魂を揺さぶられるような種類の苦難である。

     前作がまだミステリの範疇で動いていたのに比して、第二作の本書は明らかに冒険小説の復権を思わせるような活劇にも満ちたスペクタクルである。あまり知られていないが徐々に剥き出しにされていった共産主義国家ソヴィエトの暗黒史から、ハンガリー動乱に至る黒い川の流れにもっそりと押しやられるように主人公レオの運命が、弄ばれてゆく。主人公はレオではなく、その国、その時代だとでも言わんばかりに。

     『チャイルド44』よりさらにページ・ターナーぶりを発揮してスピード感のある本書。この物語は三話完結であるらしく、どれも2008年と2009年の9月1日にきっちり翻訳が出ていることから、この2010年9月1日にこの恐るべき大作三部作は完結を告げるのではないか、と震撼する心で期待している。

     ちなみにグラーグ57とは主人公が閉じ込められる強制収容所のことで、この作品ではごく一部のエピソードとなるシーンであるが、タイトルを飾るには相応しない。無理矢理『チャイルド44』との語呂合わせで版元が売りを狙ったタイトルだということは一目瞭然であるが、このシリーズに限ってはタイトルなどどうという影響を及ぼさない気がする。

     まずはこの世界の入口である『チャイルド44』への扉をぎしりと開けてこの本まで辿り着いて頂きたいと思う。

  • グラーグ57から舞台はブタペストへ。
    私怨から始まったかのような物語は
    ハンガリーの騒乱へ繋がって行く…

    フラエラが抱く憎しみが途中から弱まるような…。
    それがマリシュやゾーヤの所為ならば、
    もう少し絡んだ描写が欲しかったかも?

    面白かったけれども、
    誰一人として感情移入出来る登場人物が
    居なかったのが残念。
    相変わらず丁寧な描写には脱帽です。
    殊、拷問シーンとか…
    読んでいるだけで膝が…(笑)

  • 親子喧嘩がついに場外乱闘(ハンガリー)へ

  • 前作「チャイルド44」は著者のデビュー作であり、本国でも日本でも高い評価を得ていた。(日本においては2009このミス海外1位)読了したのは3年ほど前、出版直後に読んでいる。

    実在した猟奇殺人鬼アンドレイ・チカチーロの事件をモデルとしているが、時代を1950年代初スターリンの末期におき、旧ソ連邦における体制と個人の凌ぎ合いを、主人公であり内務省捜査官レオ・デミドフの内面に投影し、密告と裏切りの緊張感を始終持続させつつも、主人公レオが、己の内面に正直に正しき道を再構築していく物語は読み応え抜群であった。さらに彼とその妻ライーサの関係において、打算と偽りであった「愛」が真実のものへと昇華していく様はロマンスとしても一級品であった。決死のモスクワへの潜入捜査を終えた二人が森の中で抱き合うヴィジュアルは、容易に脳内で構成され映像化への期待を増してくれたのである。

    そんな素晴らしい作品の第2作ということで注目はしていたのだが、素晴らしい作品の次作という先入観に捉われ手が出せずにいたのである。しかし全くの杞憂であった。

    簡単に言えば「怨恨と復讐」の物語と言えるだろう。スターリン体制が彼の死によって崩壊し、フルシチョフのスターリン批判によって物語は幕明ける。かつて内務省捜査官として数多くの人々を逮捕してきたレオが復讐の対象となる。決して清算できない過去の罪を前にレオは逃げず対面するが、前作で養女としたゾーヤとも同様の確執を持ち、かりそめであった家族の絆を守るため戦うこととなる。

    かくてモスクワからシベリアへ向う囚人輸送船、囚人収容所「グラーグ57」そしてハンガリー動乱に騒然とするブダペストと、物語は動く。このあたりは時代背景を上手く利用し物語のリアリティを高める手法は賞賛に値されよう。

    なによりも特筆すべきは「怨恨と復讐」の象徴である敵役フラエラの登場である。彼女はレオの潜入捜査の犠牲となり逮捕されたごく普通の女であった、しかし憎悪を糧に身体中にタトゥーを入れ犯罪者集団の女頭目となってレオを追い詰める。これほどまでに負の炎を纏い主人公を窮地に追い詰め、最後に至るまで己の心情に揺るがない様は過去に見た記憶がない。映像化されるのであれば彼女の配役は目玉となるだろう、そして作品の出来具合によっては大きな賞を期待できるキャラクターであると思う。もし自分が女優ならばやりがい(演じがい)を最も持つ人物造詣だった。

    個人的にはフラエラの登場で主人公レオの存在もやや霞んでしまったが、幼い恋も(14歳)描かれている。清々しく仄かで切ない恋だった。復讐の物語の合間に描かれた恋は切なさと共に、暗い物語の一抹の輝きであった。

  • 上巻から続く

    ■でも主題?は(前作同様に)主人公であるレオがこれまでに(前作で)積み上げたものが崩壊していくストーリ展開。どうしてここまで何もかも失うってしまうの?と不安になり、読み進めていてもゴールが全く見えずにこの作品は一体全体どこへ行くのかが読めないし、不安になるシーンも多くてドキドキしながらラストまで。上下巻構成でそれなりのページ数になるけどすぐに読みきっちゃうこと間違いなし。自分も体調不良だった大阪出張の往復とそのあとの週末で読了。

  • なるほどー。より冒険活劇的な感じになりましたね。
    ちょっと演出過多な感じもするけど、息をもつかせぬ展開というのはこういうことなのか。
    ただ前作のような一本通した柱みたいなものは無いような。
    一本道じゃない面白さもあると言えばあるか。
    前回は見えない敵を追う凄腕捜査官である主人公が孤軍奮闘するという感じだったけど、
    今回は敵は最初からはっきり見えていて、
    主人公はそこから家族を守るために転げ回る1人の男性として描かれる。
    かわりにそのヒロイズムは敵であるテロリストが引き受けてしまうって寸法で。
    なにしろこのテロリストというのが勇敢で強くて賢くて人望があるという非の打ち所のない人物。
    そんな人物に徹底的に過去の罪を清算させられ、復讐の餌食になって行く主人公。
    まー、ホント、とにかく手も足も出ない。ひたすらやられ続ける。
    それでも頑張る主人公一家と、信念に燃える孤高のテロリスト。正義はどっちだ。と。

    しかしやっぱり前作のワーシリーみたいな存在が欲しかったなあ。
    あいつなにげにいい仕事してた。あいつの名前が出てくるたびに背筋が凍ったもの。
    若干エピソードにブツ切れ感があるのもあいつがいないからじゃないか。

全112件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年、ロンドン生れ。2001年、ケンブリッジ大学英文学科を首席で卒業。在学当時から映画・TVドラマの脚本を手がける。処女小説『チャイルド44』は刊行1年前から世界的注目を浴びたのち、2008年度CWA賞最優秀スパイ・冒険・スリラー賞をはじめ数々の賞を受ける。

トム・ロブスミスの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
伊坂 幸太郎
トム・ロブ スミ...
恩田 陸
村上 春樹
キャロル・オコン...
村上 春樹
ドン・ウィンズロ...
三浦 しをん
スティーグ・ラー...
冲方 丁
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×