レポメン (新潮文庫)

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制作 : Eric Garcia  土屋 晃 
  • 新潮社 (2009年9月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102173312

レポメン (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 近未来、人工臓器が当たり前となった世界。ただ人工臓器は安いものではなく、ほとんどの人間がローンを組んで購入している。そうするとローンが滞る人間が出てくるのも必然で、主人公はローン未払いの人間からの取り立て屋「バイオレポメン」。ただ彼らが取り立てるのはお金ではなく、そのローン対象となっている人工臓器そのものとなる。
    一流の「バイオレポメン」だった主人公は自身のローン未払いのために同僚に追われ、ビルの一室で自分の人生をタイプする日々を送ってる。そんな中、ほとんど全身を人工臓器化したポニーと出会い、共に逃亡生活を送ることとなる。やがて、共に愛情を抱くようになり、共に密かに下した決断がほぼ同じ思いだった。

  •  面白い本というものは確かにある。しかし、その面白い本にも、二種類のタイプがある。読んで何週間か経つとその内容があれほど面白く読んだにも関わらず思い出せない本。もう一方で、何ヶ月経とうと、そのインパクトがいつまでも記憶に残る本。

     エリック・ガルシアの作品は、間違いなく後者である。どの作品も、どの作品も。

     本書『レポメン』も例外ではない。そのインパクトの強烈さは並大抵の物じゃないのだ。

     人工臓器の需要が高まり、多くの人が人工臓器の世話になる近未来という設定。その人工臓器のローンが払えないと、取立人は金の回収を諦め、麻酔銃で眠らせ、腹をかっ捌いて人工臓器を回収するが、それは法律で認められていることであり、罪には問われない。レポメンとは職業としてそれを行う回収人のことである。

     こんな無謀な設定であるばかりか、回収人のおれは、今、命を狙われ、逃走する中で人生を回想している。その回想は、時間軸を無視した形で、まるで切り貼り細工のように描写される。戦車隊従軍から服役してレポメンとなり、五回の結婚と離婚を繰り返すなかで、現状に至るまでの波乱万丈の半生が語られる。

     著者があとがきの中で示すように、この作品は最初に短編小説として発表され、その後あまりの奇怪な設定ゆえに話題となり、テレビドラマ化、映画化などの話となってゆき、最後にはこのような長編小説の形となっ現在の完成形を見る。その歳月たるや12年に及ぶという、この作品の歴史が、作者の思い入れたっぷりに描かれているわけである。

     血まみれで、ほとんど悪趣味としか捉えられかねない残酷な近未来設定にせよ、話が、時系列を無視してあちこちに飛ぶことによる読みにくさにせよ、一筋縄ではゆかない作品なのだが、読んでいる間中愚痴りたくなっていたぼくであれ、読後、半年を経過した今ではなぜか忘れ難い作品となっているのだから、これは奇妙だ。ガルシア・マジックとでも呼びたくなる何らかの技術なのかもしれない。

     そんな不思議な世界、ガルシア流として確立された奇怪な体験に触れることのできる機会としてのこの作品。恐る恐るでいい、途中放り出したくなるほど無節操な構成に見えるかもしれない。でも強烈なインパクトは最後まで約束されているので、信じて読み抜いて頂きたいと思う。

     何せ、私立探偵が実は恐竜であるという設定ですら人に感動を与えられる作者なのだ。人工臓器回収人の話であれ、話が飛びまくり集中力が保てない文体であれ、最後には物語りの必然がしっかりと約束され、そこには感動が約束されていて、何もかもがしっかり奇麗に収まるのだ。その完成度は約束する。

     是非、この難物をご賞味あれ。

  • 何も考えずにストレートに読めました。映画化にはいい作品だと思う。

  • 人々が高価な人工臓器でその寿命を長らえる時代、ローンを返済出来なくなった臓器を"回収"する、レポマンと呼ばれる人物。
    それが、物語の主人公。
    本来なら取り立て屋の彼が、今は何故か取り立てから逃亡する立場にある。何故?その顛末が、彼のタイプライターを通して語られる。
    物凄く遠回しな比喩を除けば、コミカルな文体でかなり読みやすい。
    追う追われるというと息のつまるスリリングな描写を想像するかも知れないけど、この話に関してはそんなことはない。過去の回想がほとんどを占めるしたまにある緊張すべき展開も、なんだかさらりとしている。
    なのにやたら面白いのは、何故だろう。

  • 人工臓器が普及した近未来。でもとても高額なので分割ローン。支払いがちょっとでも遅れると、レポマン(取り立て屋)が抜き取りにやってくる……!
    と、筋だけ書くとホラーかサスペンスっぽいけどそんなことは全然なく、飄々とした語り口のアメリカ現代文学? 
    映画化されていて、今年(2010年)の夏に「レポゼッションメン」というタイトルで公開されるそうだが、トレーラーを見る限りだいぶノリが違うようだ。原作は「レポメンになるまでの青春時代の回想」とか「昔の嫁さん達と離婚するまでの顛末」など個人の話ばかりがだらだらと続く。でも、意外に面白かった。
    邦題がインパクト無くていまいちな気がする(ストレートに「臓器取り立て屋」とかでも良かったのに)。

  • 戦場の話が多くて。

  • 近未来。ローン不払いに対する人工臓器取立て屋から逃げる男の逃亡記。…ちょっと違うか。

    相変わらずこの作者の話は設定からしてぶっ飛んでいる。前に読んだものは人間の皮(文字通り!)を被った恐竜の話で、本作は人工臓器に対するローン取立て屋の話だし。
    ローンの対価として取立てるのはローンの対象となっている人工臓器で、それを生体から取り上げる。なんとも暴力的な話ではあるけれど、あまり陰惨な感じはしなかった。
    むしろこんな設定をすんなり読み手に受け入れさせる作者の力量に感じ入るばかり。
    様々な時間が入り混じる文章も読みにくさはまるでなく、スピーディーに進む話をさくさく読める。
    この特殊な世界である意味ハードボイルドに生きる”おれ”と、偶然一緒に逃亡することになった女。果たして二人は逃げ延びることができるのか?
    最後まで楽しませてもらった。
    そしてまさかラストがあんなに甘くなるとは思わなかった。
    そこまで含めて、面白かった。

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レポメン (新潮文庫)の作品紹介

誰もが人工臓器を求め、ローンの支払いが滞れば強制的に回収されてしまう近未来。かつては腕利きの取り立て屋だった"おれ"も、今や追われる身となり、廃墟となったホテルに潜伏している。古びたタイプライターで来し方を綴る毎日。だがある日、その愛機に一枚のメモが-「うるさい」。予期せぬ伴侶と"おれ"の運命とは?究極の格差社会を舞台に展開する、血と涙に彩られた追跡劇。

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