シャンタラム(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102179437

作品紹介・あらすじ

リンは禁断症状を脱し、マフィアの首領の意を受けてソ連軍占領下のアフガニスタンに同道する。ムジャヒディン闘士たちとの交友。首領との確執。そして明かされる陰謀の真相。敵軍の猛攻で同志が次々と斃れるなか、リンは重傷を負いながらもボンベイに生還。個人としての復讐と、組織同士の最終抗争へと向かう-。"生きること"を問いつづけた現代の『千夜一夜物語』、感涙の完結。

感想・レビュー・書評

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  • リンババの長い小説は一応終わりを迎えた。
    ただし、リンの冒険はまだまだ続く。
    本当の友アブドラとナジールと向かう新たな人生。
    そして真に愛した女カーラとの別れ。
    インドの雑多な空気の中、すべての人物が生きるために必死でそれが生き生きとしていて良い小説だった。
    最後、スラムの暖かい笑顔に囲まれたシャンタラムのエンディングは嬉しくなって素晴らしかった。

  • 備忘録のためネタバレしていますのでご了承ください。

    ついに最終巻。
    主人公は波乱万丈で、過酷な目にも合いまくるのですが、それでも3巻通しての雰囲気は決して暗くもキツくもない。
    それは、主人公が過酷であってもインドの人々の心に触れたり、一度信頼すると決めた相手は信頼し続けたり、相手に裏切られどんなに憎んでも同時に愛することをやめられないなど、決して絶望しないこの心向きが小説の土台になっています。

    小説の終わり方としては、もう出てこないと思った人たちを出して問題を良い方向に解決したりと、その人なりに大団円を迎えさせます。
    それもあり、波乱万丈とはいえ案外明るい話だなあと言う印象。


    ===
    リンはカーデル達とアフガニスタンに渡り、ゲリラ活動に従軍することになった。
    アフガニスタンには、親しいものを殺されたことから戦闘じ加わるものもいれば、一攫千金を目論む戦争屋達もいた。

    そんな最中にリンは、ボンベイで自分を嵌めて投獄させた人物を知り、またいままでカーデルやカーラが自分に対してもっていた真意を知る。
    利用されていたのか、なぜ言ってくれなかったのか…。
    リンはボンベイでの人間関係、自分にとっての父と兄弟と恋人とを失ったと混乱する。
    しかし激しい憎しみを持つと同時に、彼らを愛することを辞めずにはいられない。

    激しい戦闘によりリンは負傷し、ボンベイに戻る。

    ボンベイではマフィアたちの新たな闘争が繰り広げられる。
    カーデルが仕切っていたマフィアは麻薬と売春を禁止していたが、これからはそれらに手を染めていくしかないのだろう、そしてリンはそんなマフィアのメンバーではないが親しい友としてさらに深く犯罪に関わってゆく。
    リンは自分がマフィア以外の友人とは感覚がずれてしまったことを感じる。

    リンは信頼する友人よりスリランカでの戦闘の参加を請われる。
    そして久しぶりのカーラとの再会。

    久しぶりにスラムに戻ったリンは、人々の変わらぬ生活、親しみに満ちた歓迎に身を浸すのであった…。

  • 終わっちゃったのが悲しくて1週間くらい新しい本読めなかった


    オーストラリア人の男の人がヘロイン中毒で武装強盗。服役、脱獄。インドのボンベイへ逃亡。これが、物語のスタート地点であり、作者本人の経歴でもある。超波乱万丈な作家さんの、実体験とフィクションの混じり混じった長編小説。ネタバレ厳禁。

    ストーリーが面白いのは当たり前だけど、さらにその描写力がすさまじい。翻訳力もすごいのだろうけど、、まず色の描写がすっごくロマンチック。この人にかかれば、「赤」だって1000通りに区別ができるんじゃないかな。市を描けば、チャイも白檀もたばこもチャラスも香るし、血や糞尿の匂いまでしてきた。嗅げる小説と呼ばせて。そして細やかな表情の捉え方。日ごろ私は人の表情に対して怠惰すぎるって反省した。かと思えば、タランティーノ監督も怖気づくレベルの残虐な暴力、、、強くて痛くて血でねとねと。

    登場人物もすごく多くてほぼみんなクセ。でも1800頁もあるながーいお話だから、それだけひとりひとりに入れ込んでしまうの。彼らの口からでる人生哲学の数々、、、これがかなり素敵!とくにヒロインが諧謔を弄しまくり。

    表紙のダサさに騙されたらいけない!ほんとうにおもしろい。
    ゴッドファーザーと、カラマーゾフの兄弟と、深夜特急と、きっとうまくいくととかを混ぜ混ぜにしたみたい。いい意味で。
    ちなみに作者は結局オーストラリアで残りの刑期を務めてからこの本を出すんだけど、草稿を獄中で2回なくしたらしい。この長いのに。しんどすぎ。不屈かよ。

  • 文庫本上・中・下巻、全部で1,870ページの疾走する大作を、疾走する勢いで読了。これはしびれた。
    家庭の破綻からラリって武装強盗をはたらき、オーストラリアの刑務所に投獄。そこから白昼堂々脱走してインドのボンベイ(当時、原文のまま)に逃亡。そのスラム街に住みついて無資格で無料の診療所を営業。その後、ボンベイのマフィアに入り、アフガニスタンに出陣。こう書くと、これがこの長編小説の主人公の略歴と思われるかもしれないが、実はこれは作者本人の略歴。そして、この大作はこの略歴を元にした一大スペクタクル小説なのだ。
    客観的な自伝として書いても十分面白い内容にちがいないが、自分を主人公にして、思い切り主観的に、うぬぼれて、自己愛にあふれた小説に仕立てたことで、この大作の面白さが格段に増している。これだけの長さなので冗長なところもなくはないが、それはうぬぼれ男のご愛嬌と受け止めて読み進める。表現は時に文学的であり、時に哲学的であり。悩める友に、愛する人にそのまま使えそうな心に刺さるフレーズが随所に。そして、特に印象的なのは、登場人物の瞳、顔、表情の表現。わずかな鼓動も見逃さない優れた観察力と繊細な表現力を持ち合わせた者ならでは、と思わせる表現がなんとも美しい。
    分厚い文庫が三冊並ぶと、読むのに勇気がいるかもしれないが、一旦始めてしまうともう止まらない。あふれる疾走感に、読んでいるこちらの疾走も止まらない。これはしびれた。

  •  評価がとても高い作品なので、きっとここから面白くなるはずだ、と念じながら読みました。そして、ついに最終巻。
     アフガニスタンでの、ゲリラ戦への参加も中途半端な感じがします。唯一、AK-47の機能解説だけが、参考になりました。
     帰国後、マフィア組織を掌握します。こういう小説にありがちな、
    「オレ達は悪党だが、麻薬と売春には、絶対に手を出さない」
    的なノリがどうしても納得できません。
     最後に、ラスト100ページを切ってから、既に2回ほど登場しているクマとクマ使いの話。動物保護局に、追われているクマを安全な州に逃がすミッションです。警察には、賄賂をたっぷり贈ってるようですが、動物保護局には通用しなかったのでしょうか。または、エリオット・ネスの様な正義感あふれる管理官がいたのかも知れませんね。
     クマの逃がし方が、素晴らしかったです。いつものスラムに、クマとクマ使いを匿っているが、トラックが近くまで来れないので、街なかを突破しなければならない、と何だかよく分からない設定です。
     そこで考えついたのが、たまたまお祭りで使っていた、ガネーシャの人形の中に、クマを入れ山車に乗せて、みんなで運ぶというものです。私は、水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ』を読んでいたので、ガネーシャをすぐにイメージすることが出来ました。
     ここまで読んで、すでにグロッキー状態だったのですが、残りあと少しなので、気力で読み切りました。結局、長大な時間をムダにしてしまいました。

  • 国を追われた犯罪者が、異国の地で血と汗にまみれながら、己のアイデンティティーを見出そうとする壮大なドラマ。三巻通して原色の世界が拡がっている。オブラートに包んだ装飾は一切なし。ストレートに直視して描かれるヴィヴィッドなドラマのなんと鮮やかなことか。

    インドという国の善し悪しを評価するのではなく、見たままを読み手に伝えようとする作者の粘りの筆致が印象的。ひとつの着眼点に対して複数の表現方法を積み重ね、物事の残酷さを、人の心の複雑さを読者に植え付けていくパターンにハマり、一気に奥へと引き込まれた。

    登場人物は、国籍・人種を問わずとにかく多い。造形はわかりやすく、好き嫌いに関わらずそれぞれ魅力的。また、カーデル・ハーンの“哲学”やカーラの“分析眼”など、目の覚めるような的確な描写で綴っていくシーンも読みドコロのひとつ。

    ただ、自伝的小説でなければ途中で退屈していただろう。小説としての起承転結が弱く、ボンベイで体験したエピソードの重ねづけに食傷することもしばしば。これが実際に起こったことなんだと思えば、オチのないエピソードも興味深く読めるというもの。

    上巻は“滞在記”、中間は“逃亡記”、そして下巻になって“小説”としての面白さを実感できたような気がする。 長い物語を通して浮かび上がってきたのは、宿命、絆──そして、前へ進むには信じること。シンプルで力強いメッセージが心に響く秀作。

  • リンがカーデルに
    「宇宙は約百五十億年前にこれ以上はないというほど単純な形で誕生し、それ以来、どんどん複雑になっている。単純なものから複雑なものへというこの動きは宇宙を織り成す糸に組み込まれていて、"複雑さへ向かう傾向"と呼ばれている。われわれはみなその複雑化の産物であり、鳥やミツバチや木や星や銀河でさえそうだ。小惑星が衝突するかどうかして、地球が爆発し、われわれはみんなが消滅することになっても、われわれと同じ程度に複雑なものが誕生する。それが宇宙というものだから。そうしたことが宇宙全体で起こっている。」

    「最後に到達する究極の複雑さー複雑化が進んだ果てにあるものーが神とも呼ばれる存在だ。この神へと向かう動きを促したり、推し進めたり、加速させたりするものが善。止めたり、遅くしたり、妨げたりするものが悪。あることーたとえば戦争や銃の密輸やムジャヒディンのゲリラ行為などーが善なのか悪なのか知りたければ、こう問いかけてみればいい。"誰もがそれをしたらどうなる?そのことは宇宙の片隅でわれわれが究極的に複雑な存在になることを促すだろうか?それとも妨げるだろうか?"と。そうすれば、善か悪かがはっきりとする。さらに重要なことにその理由もわかる。」p94-95

  • 長編やった。矛盾するような感情の移ろいとか、赤裸々に語られる。小説としてはもっと違った展開があったんやろけど、自伝的小説やもんなぁ。愛すべき登場人物が多いけど、やっぱギャングよりもスラムとかの住民が素敵やなぁ。

  • 何も言うことはない。

    出会えてよかった。

  • インドの今のムンバイを背景にした小説。リアルな描写と哲学的な表現が一気に読者を引きずり込む。
    特にスラム街での様子、住民たちの連帯感の良さは知らない世界だ。
    インドと中東との関係も微妙に影響をしてくる。
    大作だけど読み始めたら止まらないこと間違いなし。

  • 『シャンタラム』の最終巻。

    アフガニスタンでの戦争から始まり、リンを刑務所に送った黒幕との決着など上巻からの謎を全部回収してくれた気はした。また、死亡という事実だけで、確認ができていなかった人物がリンがピンチの時に駆けつけてきてくれ、読者としてほっとする展開もあり、良かった。

    全巻を通じて、この本で作者の世界観や宇宙観、人生観などが語られていて、そういうのが好きな人にはお勧めできる一冊だと思った。また、作者特有の善悪論も展開しており、倫理的に許されないから悪であるや法に反しているから悪といった単純(?)な理論に終わっていなく深い考察をしており興味深かった。

    あと、この本のテーマが、「生きること」の意味を問うというものらしいが、私は、仲間・信じられる人と共に生活していくということなのではないかと読み取った。リンが脱獄して目標もなくなったときや再びジャンキーに陥った時・陥りそうになったときやスラムではあった人の心が失われた時に助けてくれたのは「仲間」であったというような描写があったからかな、と。

  • 故国の刑務所を脱獄してボンベイにたどり着いたオーストラリア人の冒険譚。
    欧米諸国から流れ着いた生業不明な人物たち、そのなかでも特に心惹かれる謎の女性、師とも言うべき地元の大立者などと謎かけのような会話をし、何か大きな力に導かれるようにボンベイ社会に深入りして居場所を作り上げる。

    インドを舞台にした村上春樹みたいだな、と思った。もっとハードな「ハードボイルドワンダーランド」という感じ。
    ただし、独白部分が多くてストーリー展開が早くない。上中下巻に分かれているが、上巻の半分ぐらいまでは冒険という感じはなく、ここで脱落する読者も多そうだ(私も読み続けるか迷った)。
    それを乗り越えると、話が転がり始めるので面白くなる。さまざまな伏線の回収が始まるアフガニスタンの戦場は特にノリがよくなる。

    一応、作者の自伝的小説ということで「自伝・伝記」に分類しているが、まあ海外小説と思っておけばよいだろう。

  • 下巻はちょっと微妙。ただ全体通して言い回しというか、表現がすきな本だったな。



    そして、愛が失われたことは何も言わなくてもわかるように、あるいは友人だと思っていた相手にほんとうは好かれていなかったことが不意に強い確信とともにわかるように、悟った。

    彼は変わっていなかった。市も変わっていなかった。家に帰るというのはいいものだった。

    私の眉間の皺の意味が読み取れるほど私のことをよく知ってくれている友人のもとに戻ってこられたことを内心喜びながら。

    彼女の中に生まれた変化に気づかずにはいられなかった。身のこなしに表れる正直さのようなものに。目元をやさしくしているけだるそうな解放感に。それらは恋によって生まれた変化で、そのためにこそ美しかった。

    「…ひどいもんだよ。赦せない相手を愛してしまうなんて」
    「自分のものにならない人を愛してしまうよりはましよ」

    愛情あふれる真心のこもった瞬間が訪れたら、必ず捕まえなくてはいけない。声に出して言わなければいけない。なぜなら、そのような瞬間は二度と訪れないからだ。声に出さず、なんの行動も起こさず、ただ心と心で分かち合うだけでその瞬間をやり過ごしてしまったなら、嘘偽りのない本物の感情も、思い出にひたる手の中でいずれは萎れ、砕けてしまうものだ。そうなってからではもう二度とつかむことはできない。

    愛すべきではなかった相手とふたりきりになるなんて、大馬鹿者のすることだ。

  • 映画化の話はどうなったのか?
    気長に楽しみに待つ



  • シャンタラム

    自伝的小説として読むと、自分より生命力の強い人間(マダムチョウ、カーラ、カーデル、サプナ)に自分の運命が 導かれる中で 自分の意志を見つけた物語となり


    インドを捉えた時代小説として読むと、非合法な人物や社会が 力となり時代を動かしていることに対して、間違った行為であるが、正しい理由を見出しているように読める


    赦しと平和の象徴であるスラム と 暴力と死の象徴であるマフィアを舞台とした物語が行ったり来たりする面白さ


    善悪によらない人間の描き方に好感が持てる
    *人間は 正しい理由から 間違ったことをしなければならないことがある
    *人間が人間であるのは、赦すことができるからである
    *人間は 愛する人々によって〜自分自身を定義する
    *人間の意志には 運命を変える力がある





  • これは全てを失ったオーストラリアの脱獄囚リン・シャンタラムがボンベイでひとりのタフな男になる物語だ。

    タフといっても肉体的なものではない、精神的タフさだ。
    精神的タフさとは赦しであり、自由であること。

    想像を絶する不潔や暴力、裏切り…
    心が通じ合った友や父との死別、愛する人との別れを経て
    リンはボロボロになりながらタフな男になった。少なくとも自分はそう感じた。
    そしてとてもカッコいいと思った。

    リンはよくある物語の英雄ではないけど、その人生は生々しくてリアルで危険に満ちた冒険譚と言える。
    それも読み応え抜群、男心をくすぐる最高の物語だ。

    いいモノを読ませてもらった。

  • 最高に面白い。
    犯罪歴のある作者による作品

  • 非常に長い物語だった
    作者自身の体験がベースとのことだが、登場人物や事件など、どこまでリアルなのかが非常に気になる
    読んでいてまるごとノンフィクションのように感じた

  • ☆5では足りない。☆6

  • 中下巻一気に読みました。西欧でない舞台を新鮮と感じるのはここが西欧だからでしよう。牢獄や戦争の痛々しく臭ってくるシーンが続くもタフな主人公に引っ張られ読了。養老孟司先生があとがき書かれててそれで現実に戻ってなんかほっとしました。

  • 感想は(上)に。

  • 久しぶりに、ページをめくる手が止まらなかった本である。
    ただ、Amazonレビューでは賛否両論で、主人公を否定する意見が多かった。
    主人公の考えや行動については、私は全く共感できない。麻薬をやったり、マフィアに入ったりしているし。
    しかし、内容が本当に面白い。
    インド文化は無知であったから、インド文化を少しでも知ることができてよかった。
    登場人物では、プラバカルが大好きだった。彼が物語から退場したときは、久しぶりに本の登場人物に対して泣いた。
    自分の本棚に並べたい一冊である。

  • 2017.6読了

  • 時間掛かったけどぜんぶ読めて本当によかったな。インド、わたしはそんなに運命的なものを感じてないけど(たくましさが足りない)またきっと行きたくなるので、そのときはまたこの本を読んで、言葉を覚えて、心の国に行きたい。
    ばかみたいにまっすぐで情熱的な恋愛の話があったりで羨ましくなっちゃった。

  • これ以上の小説に出会えていない。この小説のインパクトが強すぎたせいで、何を読んでも満足できないでいる。

    物語はグイグイ読ませるし、哲学的思索に溢れている。

  • カーデルやカーラの裏切りと一方的愛、そして喪失した「暗殺者のような悲しみ」。本書は自伝的小説というよりむしろインドを舞台にした哲学書といえるかもしれない。いやはや凄い物語だ。

  • 面白い。
    何て形容したら良いのか分からない。著者の自伝的小説だけあって全てが濃厚。
    ハードボイルドであり、哲学書であり、愛の物語だ。
    ネットの書評などでも良く見た言葉が一番しっくりくる。
    (とにかく読め‼︎)だ。

  • すべてがわかってしまうと…深みを失うものなのだろうか。カーデルもカーラも、色褪せてしまった。それぞれが謎を胸の内に抱えている方が、人は美しい。

    この恐ろしく長い小説からは、それでも私は多くを手に入れた。

    一つには、愛の定義。
    愛は永遠であり、相手を憎むようになっても、愛は消えない。しかし、愛は常に一方通行である。

    一つには、宇宙の定義。宗教にも抽象概念にも依拠しない、物理的事実の積み重ねから構築された完璧な論理。人が何のために生きるのかを説明できることに感銘を受けた。そうして私は受け入れることにした。

    インドは…本当にこのような、幸せな国なのか。
    惹きつけられる一方で、この小説の淀みない描写…最高の人間たちの存在を疑わずにはいられなかったが、この小説の半分以上が、作者自身の実体験であることが、私の中のインドを確かなものにした。

    確かに、ここに描かれたインドは、その中で生きた第三者の目にしか映らないものだと思う。つまりは、本物だと信じてもよいのだと思うのだ。

    ストーリーはもはや色褪せたが、インドは私の目の前から消えず、いつも私をそこへ誘う。

    こんな大作を読んだのは何十年ぶりだろうか。読み応え十分だった。

  • 生きる意味を再確認させられる。

  • オーストラリアの刑務所から脱獄し、インドのボンベイへ逃亡した男の話。
    身元がバレないようにスラムで生活しながら診療所をひらいたり、マフィアのボスに気に入られて仲間の一人になり、裕福な生活をしたり、内紛の地へ行って死にそうになったり波瀾万丈な日々を送る。
    インドという国の人々の様子がとてもよくわかる作品である。
    しきたり、生活習慣、常識、思想、情熱などなど実際に生活しないと知れないことが描かれていておもしろい。
    作品全体としては、多くの人が死に悲しい話ではあるが、それよりもおもしろい部分や愛情あふれる部分が印象深い。
    上中下と長いが、読んでよかったと思える作品。

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