飛ぶ教室 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102186411

感想・レビュー・書評

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  • ドイツの寄宿学校、ギムナジウム。
    一年生から九年生まで二百人あまりが共同生活をする学校が舞台。
    ここには少年たちの思いやり、勇気、それを見守る大人たちの温かい心が詰まっている。

    メインの五人のキャラクターがうまく書き分けされているので面白い。

    そして時代背景を知れる池内紀さんの訳者あとがきも良い。
    ナチス政権下のドイツで、執筆・出版が自由にできなかった時代。
    子供向けの絵本の中で
    「へこたれるな!不運を見据え、打たれ強くあれ!」と全ての世代を元気付けた、ケストナーのメッセージが心に沁みる。



    ◉私のような海外ものの登場人物覚えられないマンのために

    ・ジョニー
    物語を書くのが得意。優しく勘が鋭い。
    クリスマス劇「飛ぶ教室」の作者。
    4歳の時両親に捨てられ、寄宿学校に入る。

    ・マルティン
    頭が良く、怒りっぽい。曲がったことが嫌い。絵が上手く「飛ぶ教室」の美術担当。
    父が失業中で貧しい。

    ・マティアス
    ケンカが強く、いつも腹ペコにしている。
    将来ボクシングのチャンピオンになりたい。
    勉強は苦手だが、大の友達思い。

    ・ウーリ
    気が弱く、厄介ごとが苦手。
    そんな自分が嫌で、変えたいと思っている。
    背が小さく、女の子のような可愛い顔をしている。
    両親はお金持ち。

    ・ゼバスティアン
    理系の天才。口が立つ。授業中に遺伝子や化学の本を読んでいる。
    臆病な一面もあるが周りに悟られないようにしている。ツンデレ。


    ◉子供の頃を忘れるな
    この物語はクリスマス前後の出来事をテンポよくまとめた短い話だ。

    実業高校の生徒たちとの決闘
    ウーリの落下傘事件
    道理さんと禁煙さんの再会
    クリスマス帰省を前にした生徒たちのドタバタ
    クリスマス劇の上映
    そしてマルティンに起きた悲劇と奇跡。

    私たちにもあったはずなのに
    いつの間にか忘れてしまう
    そして子供の頃の喜びや悲しみより
    大人になってからの体験を重視してしまう。

    ケストナーはそうではないと言う。
    「神にかけて言うが、子供の涙が大人の涙より小さいなんてことはなく、しばしばずっと重いものだ」

    そして
    「すべて乱暴狼藉は、はたらいた者だけでなくとめなかった者にも責任がある」。
    当時はユダヤ人に対する乱暴狼藉で世の中は殺伐としていたことだろう。
    自身も2度軟禁状態に置かれ、海外に脱出する術もあったが断った。
    ドイツの行く末を見守るためだと言う。

    そんな彼自身のことを考えると
    この本を世に送り出した勇気と、不運に負けない強い意志が感じられる。

    原作の可愛らしい挿絵がそのまま使われていて、笑顔にさせてくれる。
    もう大人になってしまった大人に、ジーンと響く名作。

  • 前書きの部分から心を掴まれてしまった。
    ケストナーの童話は、童話と言うより大人へのメッセージだ。
    子供への深い愛情を感じる。

    寄宿舎の男の子たちの腕白ぶりが実に楽しい。純粋で子供らしくて、忘れていた大事なことを思い出させてくれる。
    大切なのは、知恵と勇気。へこたれるな!打たれ強くあれ!

    この本は、私にとってとびきり素敵なクリスマスプレゼントになったよ。

  • あああああーーー

    これもダメだったーーー

    クリスマスキャロルといい飛ぶ教室といい、外国文学×古典は私には少し難解過ぎた。

    小説が嫌いになりそうなほどつまらなく感じた。

    んんんんん

    つまらないと思う本でも最後まで読み通した方がいいのか。

    とにかく私にはそんな忍耐力と集中力を持ち合わせてないので投げ出します。

    さらばッッ‼︎‼︎


    【補足】

    もう一度初めから丁寧に読み直してみたところ、とても楽しく読むことができた。

    難解だとかつまらないとか言っていた自分が恥ずかしい…

    寄宿学校という設定もあって、魔法なしのハリーポッターのように感じられた。

    とにかく投げ出さずにクリスマスまでに読了できてよかった。

    これを読んでくれているみなさんも、素敵なクリスマスが過ごせるよう祈っていますm(_ _)m

    • 【T高校のとある図書委員】さん
      kuma0504さん、コメントありがとうございます。
      コメントを読んでもう一度初めから丁寧に読み直してみました。
      初めはドイツ人特有の覚えづ...
      kuma0504さん、コメントありがとうございます。
      コメントを読んでもう一度初めから丁寧に読み直してみました。
      初めはドイツ人特有の覚えづらい名前が多くて大変でしたが、ひとりひとりの名前をしっかり追っていくと、初めは難解だと思っていた本でも楽しく読むことができました。
      やはり古典は読むべきですね。
      現代の小説とはまた一味違った感動を味わえました。
      kuma0504さんのおかげで、今年は素敵なクリスマスを過ごせそうです。
      kuma0504さんにも、幸せなクリスマスが訪れるよう願っております…☆彡★彡
      2019/12/24
    • nejidonさん
      うわぁ、何だかすごく嬉しいです!
      ケストナーが大好きなので、最初のレビューを見た時は???となりましたよ。
      全く意味が分からなくて。。
      ...
      うわぁ、何だかすごく嬉しいです!
      ケストナーが大好きなので、最初のレビューを見た時は???となりましたよ。
      全く意味が分からなくて。。
      kuma0504さんの後でそんなコメントをしたら追い込んでしまうし・笑い
      良く言われますよね。古典を読んで分からなかったら、自分の頭が悪いと
      思えって。そして現代小説を読んで分からなかったらその作家の頭が悪い。
      気を悪くしたらごめんなさいね。
      名作を楽しまれたようで、本当に良かったです。
      2019/12/24
    • 【T高校のとある図書委員】さん
      nejidonさんコメントありがとうございます。
      自分の浅学をひけらかすようで本当にお恥ずかしい…
      この時代まで読み継がれてきた古典作品には...
      nejidonさんコメントありがとうございます。
      自分の浅学をひけらかすようで本当にお恥ずかしい…
      この時代まで読み継がれてきた古典作品にはやはり並々ならぬエネルギーを感じます。
      お気づきかもしれませんが私は以前まで、学校の古典の授業のせいか古典作品は大嫌いでした。
      しかしこの作品をしっかり読み切ることができて、自信を持つことにつながりました。
      読み終わったときの達成感はすごかったです。
      自分、成長したな!って笑

      以上、駄文で失礼しました…m(_ _)m
      末筆ではございますが、私のくだらない文章にいつもいいねありがとうございます。
      素敵なクリスマスを☆彡★彡
      2019/12/25
  • 名作とは何度読んでも面白い作品である。しかも新訳となると、同じなのだけど違う味わいを楽しむことができるという喜びがあります。もちろん前の方がよかったということもあるでしょう。新しい方が味わいやすいということもあるでしょう。どちらもそれぞれの味わいを楽しむことができる。そんなものもあるでしょう。
    数多くある『飛ぶ教室』の中でも、読みやすさと味わい深さは随一かも知れません。新しいのだけれどクラシカルでもある。それは少し古めかしい言葉遣いが為されているから感じるものなのかも知れません。それが作品世界に融け込み、世界の入口を広げてくれます。
    ケストナーの作品の中でも一番好きなものであり、子どもと接する大人の必読の書だという想いは、この何度目かの再読で益々大きく感じられました。(因みに『窓ぎわのトットちゃん』も必読の書だと思っています。)子どもを子ども扱いはせず、かと言って見離しもせず。きちんとした「大人の目」で書かれた子どもの物語なのでしょう。子どもたちが活き活きと描かれているからこそ、大人の役割を強く感じる。そこが素敵なのです。

  • とてもよかった。
    ドイツのギムナジウム(だいたい10歳から18歳くらいまで、ドイツの子供たちが通う学校らしい)で過ごす男の子たちの話。
    確かにいろんな事件が起こるけれど、
    子供にとってはいつものこと、平凡な日常のようでいて、
    すべてがきらきらしている。

    小学生の頃、本の名前は知っていたけれどもその時は退屈に感じてすぐに読むのをやめてしまった。
    考えてみれば、喧嘩ばかりしている男の子のはなしに興味を持つ年齢の女子でもなかったし。
    ところで同じ作者の「ふたりのロッテ」は持っていて、印象に残っていたのでそっちの方が当時の私には面白かったのだと思う。
    でも今男の子を育てていて、改めて読んでみると、非常に刺さる上に、涙が出てきてしまう。

    トーマの心臓を読んだことのある人はなんとなくイメージが被るかもしれない。

  • 泣いた。素敵な物語だ。
    ケストナーのまっすぐなメッセージが響いてくる。
    強くなれ、気を落とすなと肩を叩いてくれる。
    時々読み返したい。
    少年たちがどの子もかわいい。合言葉の、も・ち・ろ・ん!が良すぎる。池内さんの訳の素晴らしさだろうか。

    何気なく読み始めて、電車の中でじぃんと涙がこぼれました。

  • 泣きました
    児童文学最高

  • いつでも手元に置いて折に触れて読み返したい。

    名称などは馴染みなくて難しかったけど、
    もはや名前を1人1人覚えようというつもりはなく、キャラクターや文脈で、「あぁ、あの子の話だな」と理解しながら読んだ。

    登場人物がみんな善良な人々だったなぁ。

  • 子供時代は綺麗で楽しい思い出だけではない。傷ついたり、傷つけてしまったりしながら、小さな世界で大いに悩み、苦しみ、大人になっていく。
    忘れていたいくつもの思い出と一緒に、笑ったり涙を浮かべたりしながらページを繰っていきました。読んでよかった。

  • 冬休みを間近にひかえた、ドイツのとあるギムナジウムの寄宿舎で暮らす子どもたちの物語。
    前書き(ちなみにこのお話、前書きが二つあります)からココロをつかまれました。ケストナーが、彼が"ゴットフリート"と名づけたクジャクチョウに話しかけるシーンや、エドゥアルトという仔牛と触れ合うシーンがとても楽しいのです。
    お話の本編は寄宿舎に住まう少年たちの友情物語…というとそこらにありふれているお話のようですが、私はとても好きです。文章に飄々としたユーモアがあって、クスクス笑ったところもたくさん。"禁煙さん"、"道理さん"、"いろおとこテオドール"とか、あだ名のネーミングセンスが抜群。
    将来ボクシングでチャンピオンになる夢をもつ大食漢でケンカも強いマティアスと、臆病な自分がいやでマティアスの強さに憧れるウーリとの友情には、読んでいてこちらの心も優しくなる気がしました。
    訳者あとがきもとてもよかったです。
    うちの子どもにも読ませたくなりました。

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