アトランティスのこころ 下巻 (新潮文庫 キ 3-26)

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  • Amazon.co.jp ・本 (597ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102193266

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  • 少し不思議な出会いと別れの少年時代が終わりを告げ、語り部を変えて舞台は狂騒と狂乱の大学生活へと舞台を変える。

    当初はその独特な構成に面食らったものの、遠き日に覗き込んだガラス玉のようなきらめきの少年時代とはうってかわって、キング節で語られるピートの愚かしく無軌道な大学生活はまさに青春という感じでとてもいい。特に作中で印象的なトランプゲーム「ハーツ」はパソコンのゲームの印象が強いものの、大学生御用達の麻雀のような中毒性があり、それにのめり込んで単位を取りこぼしていくのはひしひしと伝わるものがあった。

    超自然的なホラー要素は上巻と比較すると極めて薄く、現実のベトナム戦争に巻き込まれて否応なしに青春が消費され変わり果てていく様は、あらすじにある通りの残酷な時の呪いそのものであり、現実はそう簡単にハッピーエンドを迎えない。登場人物たち全員が望んだ未来になり、伴侶を得て、幸福に死ぬのは物語の世界の中だけで、キングの作品はわりと末路が悲惨な登場人物も多く、この作品も例外ではない。しかしながら歳を重ねた今読むとそれは切実なリアルであり、だからこそ「物語」があり「主人公」であった時代への郷愁に胸を焦がすのだ。

    そんな魔法が解けた後に訪れるささやかな結末は感涙必死であり、それぞれの時代とそれぞれの物語が細く一本の糸となってより合わさる様は、ウェルメイドでありながら用意された必然性をあまり感じず、むしろ偶然性の賜であるからこそ、良きにしろ悪しきにしろ己が人生を肯定できるのであろう。

  • 私が一番好きなキング作品。

著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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