殺人者たちの午後 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102200315

感想・レビュー・書評

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  • 自分の罪について話すとき、もし私だったら、どうしたって見栄や、よく思われたい気持ちから主観と異なることを言ってしまうんじゃないだろうか、と思う。10人の殺人者の告白を読みながら、この中にはどれだけの嘘が含まれるだろうか、と考えていた。嘘というか、彼らが、そうは思ってないけどそう言ったことというか。あるんじゃないかなと思う。
    死刑のないイギリスで、終身刑になった殺人犯が10年、20年経って仮釈放され、社会で生きている。仕事をしたり、お酒を飲んだり、勉強したり結婚したりしている。日本には死刑がある。この本に出てくる殺人者たちが、もし日本人で日本で殺人を犯していたら、死刑になっていたかもしれない。そうしたら、ここに書かれている人生はなかったはずだ。当たり前のことなんだけど、なんだか不思議な気がした。刑罰が国によって違うこと、殺人者がふつうに生きていること、それを不思議だと思っている自分。もっと言うと、なんで生きてるんだよ、と思うこと。反面、こうやって物語で読んでしまうと、人殺したんだから死刑でいいじゃん、と一言では済ませられなくなること。
    重たいのに、読んでいる間は、何度か現実の話じゃないような気持ちにもなった。面白い短編を読んでるみたいな。フィクションを読んでるときのテンションになった。それから、あ、これ、本当にあった話なんだった、と我にかえった。今もイギリスのどこかにいる、10人の殺人者が、たったいま、何してるんだろう、と彼らの生に思いを馳せた。

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