卵を産めない郭公 (新潮文庫)

  • 95人登録
  • 3.36評価
    • (3)
    • (6)
    • (10)
    • (2)
    • (1)
  • 10レビュー
制作 : John Nichols  村上 春樹 
  • 新潮社 (2017年4月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102200919

卵を産めない郭公 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 1960年代前半のアメリカ。
    大学生の青春小説…なんだけど、実感として「青春だなぁ」とかそんなノスタルジーは感じず。

    もっと若い頃に読めばよかったのかも。

    架空の時代の、架空の人類の話って感じで、わたしとしてはSFを読んでいるようでもあった。

    青春小説にせよSFにせよ、読めてよかったし、出会えてよかった一冊。

    あとがきに書いてあるけれど、サリンジャーを彷彿とさせる場面もあって、会話とか場面とかの鮮やかさが読んでいて心地よかったです。

    プーキーのクレイジーさが、痛々しくも魅力的。

  • ジョン・ニコルズ『卵を産めない郭公』は、ひとまずは恋愛小説や青春小説と位置付けることができる。この物語を読みはじめると、わたしたちは主人公の青年ジェリー・ペインとともに強い嵐に巻き込まれてしまう。この物語を読んでいると終始、嵐による強い風に吹かれ、強い雨に打ち付けられているかのような感覚に陥る。

    この物語で強く印象に残るのが、物語の語り手ジェリーの恋の相手となるプーキー・アダムズの壊れっぷりである。プーキーは物語のはじめから破綻したもの、壊れているものを抱えている。その破綻したものや破壊的なものが、切実にプーキーを突き動かして、ジェリーを強い嵐に巻き込んでいく。

    『卵を産めない郭公』は、恋愛小説や青春小説とひとまず位置付けられるだろうと書いたが、未成熟な人間たちの抱える破綻したものや破壊的なものを描く物語でもある。特に、語り手のジェリーの恋の相手であるプーキーの抱える変てこさには、破綻したもの、破壊的なものが含まれている。その破綻したもの、破壊的なものが、未熟な人間であるプーキーやジェリーを、破綻の淵にまで追い詰めてゆく。

    その意味では、この物語は単なる恋愛小説や青春小説という枠内に止まらない、未成熟な人間を描いた、痛々しくて少し悲しい物語だと言えるだろう。自分が未成熟だった頃を思い出しながら物語を読み進めていたわたしたちは、物語が終わる頃にはもう、嵐が来る前にいたはずの場所には、もう二度と戻ることができないことを知るのだから。

  • 村上春樹訳。会話が村上作品のようだった。饒舌な女の子のマシンガンのように繰り出される喋りを、村上春樹の訳で流れるように読めるのは何とも贅沢。

  • 対談で柴田さんが「会話が、原文より村上訳のほうが生き生きしている」というが、あぁまさに村上春樹の青春小説だ。「君ってばっちりカウボーイっぽいよね」「ハリーくんの耳にしっかりキスしてやってもいいくらいだよ、まったくの話!」とか。「プーキー語」の翻訳っぷりはさらなり。
    恋愛が始まり花が咲きしおれていく…いい時代を振り返って「いったいどうやってお互いの神経をとくに苛立たせることなく、僕らは交際できたのだろう?」といぶかしむ。調子はずれの女の子が背負う不穏さがエスカレートしていくところなど、サリンジャーの影響は色濃い。
    村上さんは「大学生の時に読んだがアメリカの大学はずいぶん違うなと思った」そうだが、今となっては時代の違いも感じる。若いライザ・ミネリの映画は見てみたいが、上品な大学の男(童貞)と女(処女)で恋は盲目だった…というプロットでは、現代では映画化できないだろう(笑)タガがはずれ気味のプーキーもシェークスピアを延々引用したり「ブリューゲルのイカロスの墜落の絵の農夫みたいに」なんて言っているインテリ。酒ばかり飲んでいるが、これも対談いわく、羽目を外すのにドラッグにいく時代の前、だそうだ。
    村上柴田翻訳堂で、二人はアメリカ文学史の掘り起こしをしているのだろうな。

  • 60年代、アメリカの名門カレッジが舞台。とにかくしゃべりまくる女子学生プーキーと内気なジェリーの恋愛青春もの。結末がどうなるかは冒頭に出ている。

    作品に出てくる物事やセリフ、行為があとにもつながってくるのが面白い。
    「何か目に見えないものが、何か精神的なものが、そこからこぼれ出ていった」というようないろんな気分が醒めていくような記述が印象的。
    わりと自分の実生活にもあるような気がして…
    人生の重要な部分にいつも注意を払いそこなている、というプーキーの最後のほうの発言には心がちょっと痛い。
    また読み返したい小説。

  • 1960年代前半の東海岸の名門大学を舞台に、風変りの女子学生と彼女に振り回される男子学生の生活や恋愛模様を描いた青春小説。

    「女の子版のキャッチャー・イン・ザ・ライ」かのごとく、饒舌に語り続ける女子学生は本当にストレンジであるとしか言いようがないが、一方で饒舌さが何かを隠すための常套手段であることは、フロイディアンには有名なテーゼである。結末に表れるもの悲しさは、その饒舌さの背後にあるものが彼女の背負う固有の生きづらさであった、ということを示しており、それまでの冗長な語り口はそのコントラストをはっきりと示すためだけに表現されているように見える。

    それにしても、アメリカ青春小説を読むたびに出てくる「フラタニティ」のシステムは、何度読んでもよくわからないし、正直気持ち悪さだけが残る。まあ、日本の旧制高等学校の「ストーム」も似たようなものだと思うが、一方で「ストーム」は既に日本ではほぼ消え去っている文化なわけで、大学という閉鎖的な空間の中でのおままごと遊びという印象が拭えない。

  • これをテーマにしてどこかのバンドが曲作ってるよね?と考えてしまうくらい、音楽が似合う物語。
    ライザミネリが主演したという映画版が見てみたい。

  • 海外の青春小説はどうも苦手だ。日本のものは割と好きなのだけど。おそらく、どこまでが普通で、どこから破目の外し過ぎか理解できないからなのだろうと思う。

  • とんでもないどたばた。自閉症スペクトラムにADHDを併存した男女の会話と恋の顛末、と読めなくもない。

  • こんな大学生活を過ごしてみたかった。

全10件中 1 - 10件を表示

ジョン・ニコルズの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
村上 春樹
マキシーン・ホン...
カーソン マッカ...
アンナ カヴァン
ウィリアム サロ...
チャールズ ブコ...
有効な右矢印 無効な右矢印

卵を産めない郭公 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

卵を産めない郭公 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

卵を産めない郭公 (新潮文庫)の作品紹介

舞台は60年代の米国東部の名門カレッジ。真面目で内気な学生ジェリーは、入学後すぐにお喋りで風変わりな女子大生プーキーと知り合った。彼女にふり回されながらも、しだいに芽生えていく恋。街角でのくちづけ、吹雪の夜の抱擁……だが、愛はいつしかすれ違い、別れの時が来る。生き生きとした会話が魅力の青春小説を、村上春樹が瑞々しいタッチで新訳する。≪村上柴田翻訳堂≫シリーズ。

ツイートする