オウエンのために祈りを 上巻 (新潮文庫 ア 12-10)

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  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102273104

感想・レビュー・書評

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  • ホテル・ニューハンプシャーを読んで以来、アーヴィングの本を全部読むつもりでいろいろ読んできたが、ホテル・ニューハンプシャーと並ぶくらいこちらの本が好きだ。きっと何年か後にまた読み直すだろうという予感がある。
    この本のことを忘れられない。

    以下引用

    事故のことをどんなにすまないと思っているか、そして彼自身どんなに傷ついているかをぼくに示すために、野球カードをくれたのだ——ぼくが母を愛してるのとほとんど同じくらい、オウエンもぼくの母を愛していたとぼくは信じている。ぼくに自分のカードを全部くれるということは、自分の有名なコレクションを託せるくらい、ぼくのことを愛していると伝えるための方法なのだ。でも当然、彼はカードを全部返してほしいと思っているのだ!
    (p.159)ここの感情の駆け引きが緻密でおもしろい

    それはぼくたちみんなが、きみと、ぼくと、そしてオウエンが感じていることなんだ。ぼくたちは自分の一部をなくしたんだ」
    (p.167)

    愛している誰かが死ぬとき、しかも予想していないときに死なれた場合、一度に突然その人を失うわけではない。長い時間をかけて、少しずつ少しずつ失っていくのだ。しだいに郵便物が来なくなり、枕やクローゼットの衣類からにおいが薄れていく。少しずつ、なくなった部分、欠けた部分を積み重ねていき、そしてその日がやってくる――
    (p.263)

    いま思えば、ぼくは、母がどれほど暗闇を嫌っていたかを知っていたから、夜に母のねむっている墓を見たかったにちがいない。夜でも墓地になにかしら明りが差し込んでいるところを見とどけて、安心したかったのだと思う。
    (p.268)こういうところがアーヴィングの本だなあと思う

  • どんどん魅力的で冴えた人間になっていくオーエン。主人公は親友として、かけがえのない存在。二人がどうなるのか興味は尽きない。

  • 社会人Y、「欧米では幽霊は冬が本番らしい。冬の幽霊なんて、さぞかし『ヒヤッと』することだろうが、ディケンズの『クリスマス・キャロル』には幽霊が、それもなんと四人も登場する。アーヴィングがこのディケンズの古典的な幽霊物語をもとにして小説にしたのがこの作品である」

  • 平均的五歳児の大きさで変わった声の持ち主のオウエン・ミーニーと「ぼく」であるジョニーの友情を描いた作品。信仰や欲情など人間の心の奥底にありそうな「何か」を象徴的な表現でかつ平易な文章で記していて、読んでいて気持ちが良くなってきた。オウエンみたいな聡明な小男がいたら楽しいだろうな。。。

  •  生まれつき極端に小さな体と奇妙な声の親友オウエン・ミーニー。彼が初めて試合で打ったボールが母の命を奪ってしまう。彼は自分には神が与えた意味があると信じるようになるのだが。。。
     ジョン・アーヴィング作。映画「サイモン・バーチ」の原作本(レビューは上下巻まとめたものになります)。

     映画が比較的短期間のストーリーなのに対し、原作では信仰の問題やベトナム戦争に揺れる当時の政治情勢などを絡めて、何十年に渡ってストーリーが展開されていく。
     オウエンは自分が信じる夢のお告げの通りに死ぬのか、なぜ知的で批判精神に富んだオウエンがそう信じる様になったのか、主人公ジョンの父親は誰なのか、なぜ現在のジョンはアメリカを捨てカナダに住んでいるのかといったストーリーの焦点が終盤に明らかになっていく過程が本当に見事。

     人には神に定められた運命などあるのだろうか。この本を読んだ感想を極端にいえば、人には運命も信仰も理想も大事なことではない。信じたものに殉じて生きることができるかどうかこそが大事であり、だからこそオウエンとジョンの人生に胸を熱くするのだと思う。

  • 感想は下巻に。

  • 小さくて宇宙人みたいな声をした、一見特殊なオウエンミーニー。だが、彼は決してその外見を恥じたりはしなかった。そして、彼は信じていた――自分には特別な役割があるのだと。
    宗教をベースにした作品なので、日本人にはなじみにくい部分も多々あるかもしれないが、それを差し引いても非常に素晴らしい作品。自分に与えられたと信じる使命だけを信じて生きるオウエンの信念には、祈りなどといったものを超えた一途な信仰が垣間見える。使命だけを見据えたオウエンには怖いものなど一つもなかった。
    オウエンの親友だったジョンの視点から描くことによって、オウエンが人間でありながらも人間ではなかったという比較がうまく用いられ、キリストの再来を思わせるようなそんなテイストに仕上がっている。クリスマスが来るたびに、この作品を読みたくなり、奇跡を信じたくなるのである。

  • 一番好きな作家です。
    混沌&無情なストーリーなのに
    なぜかあったまる。

  • 全てが終わった後に語られる物語。主人公の語りでオウエンとの少年期からのお話が綴られていく。信仰と生活と友情と。丁寧に細部まで語られていく登場人物たちや過去の出来事は、ラストに向かって静かだが確実に進んでいく。読み終わって、深く深く、染み入りました。長めのお話ですが是非。

  • ストーリーは主人公とその友人であるオウエンの幼少期の日常から始まる。淡々としているようで、実はいろいろなものがからみ合い、心に残るものがぎゅっと詰まっている。こんなストーリーの持っていき方で平和ということや、人に対する愛情を表せるなんて本当に素晴らしいと思う。

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