- Amazon.co.jp ・本 (597ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102273111
作品紹介・あらすじ
オウエンは学校新聞編集長として活躍しながら、ぼくの面倒を見続けた。泥沼の様相を呈し始めたヴェトナム戦争行きを熱望し、一方ぼくには大胆な方法で徴兵を免れさせた。予知力を持つオウエンがひどく怯える夢の正体は?すべては神の計画という彼の言葉は真実なのか?そして一切不明だったぼくの父の正体は?謎が一挙に解明される衝撃のラストシーンへと、物語はなだれ込む。
感想・レビュー・書評
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何もかもが完璧な「物語」
まさに教科書のように隅から隅までが出来上がった物語は、福音書と言って過言ではない。
オウエンの周りを囲む人々、起こり得るストーリーと人々。どれをとっても言うことはない。
若き頃のキリスト教演劇とクリスマスキャロルで示されたオウエンの選民意識。
素晴らしき生徒でありながら、校長に本気の対抗意識を持って総代を降ろされるオウエン。
大学に入ってからの彼の堕落っぷりとベトナムへの複雑な想い。
僕の人差し指を落とすシーンのアルコールの香りと指の痛みは、まさに現実に残るものがある。
そして偉大な文学への愛が遺憾無く発揮させられる。オウエンのハーディー分析や僕が教えるフィッツジェラルド。こうやって読者は一つの作品から偉大なる別の作品へと自分の文化圏を広げていく。
何度でも読み返すことのできる、最高レベルの傑作の一つ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代はベトナム戦争へ突入。1968年のカナダは9人に1人が移民でアメリカの「ベトナム戦争抗議者」が多かったこととか、多くの孤児を作り出しておきながら米軍の多くの部隊はベトナムの孤児院に金銭的援助をしたり孤児たちをアメリカに移住させて孤児院に送り込んだりしていたということを知った。アメリカのチャリティ意識って単純で複雑だ。
長かったお話しと多くのエピソードが一気に意味を持って来るラスト。ジョニーのほんとうの父親がわかり、他の人よりも身体が小さく甲高い声を持つオウエンが一貫して信じることで彼自身を強くしていた「神様がぼくを作ったのには何か意味があるはず」という思い。ちょっと気を持たせすぎで疲れちゃったけど、面白かった。父親捜しと女性経験を持たない男性というのはアーヴィング作品における共通の隠れテーマなのかな。 -
私にとって初のジョン・アーヴィング作品。上下巻を読み終えるのに時間とエネルギーをとても使ってしまった。非常に長い年月、誰かの(この場合、ジョンやオウエンやその他の登場人物達、実在しない彼ら)人生にずっと付き合うのはとてもエネルギーが要る。というのが上巻。
そしてそれまで冗長なほど事細かに描かれた彼らの色々な時代のエピソード。それらがこの下巻でどんどん編み上げられラストに向かっていく様は圧巻だった。
私は個人的に「全ての事には意味がある」という考え方はあまり好きではない。しかし、この作品はまさに私のような「信仰心」の無い者に、小説のカタチをとって「全ての事(エピソード)には意味がある」事を示そうとした。ただダラダラと書かれたように見える少年時代のシーンも、その全てがラストに繋がっている。見逃すような何気ない行動や台詞も。みなラストへの布石なのだ。例え私には感動や共感が無くても、それ故に評価するべき作品と言える。(星はいくつにしていいのかわからないからつけませんが……)ジョンはこの物語の後、彼自身の人生をちゃんと送ることが出来るようになるのだろうかというのが気掛かり。いつまでも傍観者であり続けるのだろうか。オウエンならどう思う?
とはいえ本当に長かった……。 -
すごくよかったー(ため息)。もしかしたらアーヴィングの作品のなかでいちばん好きかもしれない。これまで、キリスト教の知識がないと読みにくいのかなと思って敬遠していたのだけれど、確かに教会や聖書やキリスト教の話はたくさん出てくるけれど気にならず、むしろ興味深かった。まあ、信仰の話かもしれないけど、それもすべて人生の話、ということで。運命とか、人生の不思議さを考えさせられる。語られるのはおもに、主人公ジョンと、体が小さくてひどく変わってる親友オウエンの少年時代から高校大学時代。クリスマス劇や夏休み、いたずらの数々、学校のこと、ちょっと変わったエピソードはどれもおもしろおかしくて、せつなくて。アーヴィングは語るのが世界一うまい作家のひとりだと思う。変わっている人たちとかとっぴょうしもないこととか、不思議なできごととかが浮かずになじんでいて、すごくリアルに感じられる。「ほら変わってるでしょ?」っていうような自慢たらしさ?がないというか。説得力がある。そして、おもしろおかしかったり不思議だったりするたくさんのエピソードにすべて意味があることがあとでわかってくることがまた、すごい。茫然としてしまう。最初から結末というかジョンとオウエンの行く先はわかっていて、いつどうやってなぜそうなるのか?と、ぐいぐい引っ張られていくのがまた、すごい。最後まで読んで結末がはっきりわかったあと、また最初から読み返したくなる。そして、もっともっと続きを読みたいなあとも思った。語り手のジョンが自分のことを、自分の人生はただ玄関前に座って通りすぎるパレードをながめているようなもの、とかいうことをいっていて、そんなジョンの人生の続きをもっともっと読みたくて。ケネディ大統領やベトナム戦争など、アメリカの歴史みたいな部分もわたしにはすごく興味深かった。あと、学校のレポートを書くところや、ジョンが教師になって文学を教えるところで、ディケンズ、ハーディ、ブロンテ、ジェイン・オースティンなどなどについて語られるのもおもしろかった。出てくる作品をまた読みたくなったり。また読み返したい作品。あと、「サイダーハウス・ルール」「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」も、もう一度読みたくなった。
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その時がきた
オウエンは守護神のような存在
こんな展開とは
この時のために過去がある
後半は切なく
読み進めました -
言葉を失う物語だった。オウエンとジョンは離れ難く結びつき、人生を共にする。死ぬ瞬間まで。死んだ後も。全ての出来事はオウエンの殉教の象徴であった。殉教には社会と時代の理不尽さが背景にある。アメリカの政治と宗教を深くえぐった物語であった。
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上巻に記載。